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本と映画と政治の批評
by thessalonike4

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共謀罪法案の政治 - 民主党の自己欺瞞と反対派のパラドックス
共謀罪法案の政治 - 民主党の自己欺瞞と反対派のパラドックス_b0087409_15461727.jpgブログで話題沸騰の共謀罪についてだが、もし仮に与党が委員会で強行採決に出たならば、そこで大問題になり、国会空転を惹き起こし、マスコミも電波と活字で本格的に問題を取り上げざるを得なくなる。鳥越俊太郎や加藤千洋や嶌信彦の出番となり、すなわち共謀罪反対の世論が一気に高まる情勢になる。潜在世論は共謀罪反対が多数であり、それはYAHOOの調査ですでに明らかになっている。電通と安倍晋三も押さえられなくなり、YAHOOの賛否比率がテレビでもそのまま反復されて、与党は法案を参院に送れなくなるだろう。だが、それは政権側は十分承知の想定であり、民主党の反対を押し切って与党案を強行採決する愚を選ぶはずがない。したがって青木幹雄の脅しはブラフであり、老獪な国対の駆け引きだ。自民党の本意は民主党との妥協であり、修正案での国会通過である。私は前に指摘したが、本気で成案するつもりなら、民主党案の丸のみで全く問題ない。



共謀罪法案の政治 - 民主党の自己欺瞞と反対派のパラドックス_b0087409_15463687.jpg共謀罪については創設することが大事なのだ。行為ではなく合意を犯罪要件とする刑法の原理転換を果たすことが重大事なのであって、対象犯罪を懲役五年超(民主案)とするか懲役四年以上(政府案)とするかの切れ目が決定的な問題なのではない。最新の報道では、共謀罪の適用団体について、原案の「重大な犯罪を実行する団体」の表現を修正、テロ集団や暴力団などの「組織的な犯罪集団」に限定すると修正に応じている。これは民主党の要求の丸のみだ。報道では、さらに、「犯罪実行に資する行為」を「犯罪実行に必要な準備、その他の行為」に変更、ついでに「憲法の保障する国民の自由と権利を不当に制限してはならない」、「労働組合その他の団体の正当な活動を制限するようなことがあってはならない」との文言も新たに加えたとある(5/12読売、5/12共同)。この再修正案だと、残る対立点は対象犯罪の禁固懲役年限の問題でしかないことになる。

共謀罪法案の政治 - 民主党の自己欺瞞と反対派のパラドックス_b0087409_18241828.jpg共同通信の記事では、民主党は「主な内容は変わっていない」と反発、対決姿勢を強めているとあるが、客観的に見れば民主党案と政府案との主要な対立点は殆ど埋まっているように見える。禁固逮捕年数で妥協すれば、完全に民主党案の丸のみになる。与党がそこを残したのは単に政治的体面だけが理由で、その気になればすぐに妥協できるだろう。そうなれば法案は簡単に成立する。5/11の朝日新聞に興味深い関連記事が載っていて、そこには、「『共謀罪で民主党の修正案を丸のみされると、かえって困る』という声もある。重要法案で『巨大与党』の横暴ぶりを示すことが、終盤国会での民主党の焦点となっている」(4面)とある。これが民主党の本音なのだろう。委員会で強行採決の図に持ち込みたいのだ。だが、与党側が民主党案で丸のみすればどうなる。よく分からないのは、本当のところで民主党がどう出るかであり、民主党の国会戦略で廃案を実現できるかどうかだ。

共謀罪法案の政治 - 民主党の自己欺瞞と反対派のパラドックス_b0087409_1547748.jpg察するに、例えば平岡秀夫や江田五月の本意は廃案だろう。だが、与党が民主党案を丸のみすると言ったとき、それを拒絶できる理由は民主党にはない。民主党の奮戦によって市民の権利を守る民主党案が実現できましたと宣伝するだけだ。自民党は少し格好は悪いが、政治的目的は達成できる。法案が成立して施行される。国際組織犯罪防止条約の実行については、現行の国内法の運用で対応できるのであり、新しい法律制定の必要はない。例えば、中国の蛇頭とか韓国のスリ団などの組織犯罪を摘発し取締するのに、何も今回のような新しい共謀罪を創設する必要はないはずだ。YAHOOの世論調査では、共謀罪創設に賛成が20%で反対が60%だった。さて、この数字は、仮に民主党案が丸のみされて衆院を通過した後でも、そのまま変化せずに反対の圧倒的多数で推移するだろうか。逆に考えると、民主党案丸のみなら、電通はその時点で共謀罪をテレビに解禁できる。

共謀罪法案の政治 - 民主党の自己欺瞞と反対派のパラドックス_b0087409_1547187.jpg自公と民主が共同修正して成立させた法案ならば、テレビの「世論調査」で賛成多数にして報道することは可能だろう。その数字で国民は納得するだろう。国際テロ組織のテロ犯罪を防ぐための法律であり、反対しているのは社民と共産の二党だけだと言えば、果たして、YAHOOのネット世論調査でも現状の賛否比率を維持できるだろうか。そうなったとき、廃案を楽観予測していた左翼ブロガーはどうするのだろう。民主党に裏切られたと嘆くのだろうか。小沢民主党への熱烈支持を表明した良識派市民や平岡秀夫のサイトを紹介して共謀罪反対を訴えた市民はどうするのだろう。民主党の自己欺瞞は明らかだが、共謀罪反対派のブロガーたちも民主党に付き合って自己欺瞞を共有しているところはないだろうか。共謀罪創設に賛成した時点で根本的に間違っているのではないか。民主党案で市民の権利を守れるという錯覚が蔓延している気がしてならない。法案成立のためには民主党案丸のみでいい。

共謀罪の政治目的にとって民主党案は十分であり、立法として何も問題はない。追い詰められているのは政府ではなく民主党ではないのか。そして、共謀罪に反対した者たちは、民主党案の法律でいずれ処罰されることになるだろう。
共謀罪法案の政治 - 民主党の自己欺瞞と反対派のパラドックス_b0087409_1619338.jpg

by thessalonike4 | 2006-05-12 23:30 | 共謀罪 ・ 教育基本法改正
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