本と映画と政治の批評
by thessalonike4
カテゴリ
チベット暴動と北京五輪
ガソリン国会と後期高齢者医療
新自由主義と福祉国家
ワーキングプアと社会保障
山口県光市母子殺害事件
福田政権・2008年総選挙
米国大統領選挙
田中宇と世界金融経済
イージス艦衝突事故
イスラエルのガザ侵攻
岩国市長選挙
防衛省疑獄事件
大連立協議と小沢辞任
民主党 ・ 2007年参院選
安倍政権
憲法 ・ 皇室
戦争 ・ 昭和天皇 ・ 靖国問題
韓国 ・ 北朝鮮 ・ 拉致
共謀罪 ・ 教育基本法改正
村上世彰インサイダー事件
オー・マイ・カッシーニ
ネット市民社会
丸山真男
辺見庸
奈良紀行
その他

access countベキコ
since 2004.9.1


















天皇陛下の平和主義 - 教育基本法と愛国心に関する記者会見
b0087409_1217823.jpgこれからの日本の教育の在り方についても、関係者が十分に議論を尽くして、日本の人々が自分の国と自分の国の人々を大切にしながら世界の国の人々の幸せについても心を寄せていくように育っていくことを願っています。なお、戦前のような状況になるのではないかということですが、戦前と今日の状況では大きく異なっている面があります。その原因については歴史家に委ねられるべきことで、私が言うことは控えますが、事実としては、昭和5年から11年、1930年から36年の6年間に要人に対する襲撃が相次ぎ、そのために内閣総理大臣、あるいはその経験者4人が亡くなり、さらに内閣総理大臣1人がかろうじて襲撃から助かるという、異常な事態が起こりました。帝国議会はその後も続きましたが、政党内閣はこの時期に終わりを告げました。そのような状況下では議員や国民が自由に発言することは、非常に難しかったと思います。先の大戦に先立ち、このような時代のあったことを多くの日本人が心にとどめ、そのようなことが二度と起こらないよう日本の今後の道を進めていくことを信じています。




b0087409_12171897.jpg昨夜の「報道ステーション」の中で天皇皇后両陛下の東南アジアご訪問についての報道があり、出発前の記者会見が詳しく放送されていた。明日からシンガポール、マレーシア、タイの三カ国をご訪問される。昨年の同じ時期、両陛下はサイパンを訪問され、公式日程にはない電撃訪問で韓国人慰霊塔に立ち寄り、黙祷を捧げた。その衝撃のニュースは我々と韓国の両国民を大いに驚かせた。私は感激し、ブログで初めて天皇陛下について書いた。私は昨年の記事を気に入っている。訪問日程の最後の朝だったと思うが、宿舎の近くの砂浜で、車椅子姿の元日本兵からサイパン戦の話を聞き、お二人で言葉をかけられる映像もあった。あれから一年が経った。昔、丸山真男が「超国家主義の論理と心理」を書いたとき、これは「世界」の1946年5月号に発表されたが、終戦から僅かの時間しか経っておらず、文中で天皇を天皇と呼び捨てにしていいのかどうか、いや、これからはもう構わないのだと、何度も自分に言い聞かせながら書いたと回顧していたことがあった。

b0087409_12172782.jpg私の場合は、丸山真男とちょうど逆で、天皇を天皇陛下と呼ぶ文章を内心苦労しながらトライした。今では何の抵抗感もない。日本国憲法では、象徴たる天皇の地位は国民の総意に基づくとある。天皇を国民が尊敬できなければ、国民は日本国を愛することはできない。また、全ての国民から尊敬される天皇でなければ、この国は国として一つに纏まることができない。上の発言は、昨日の会見の席で外国人記者からの質問に答えたものである。質問は、「天皇陛下にお伺い致します。愛国心を促す方向で日本の教育基本法の改正が進められています。しかし、陛下が訪問されます国も含めました近隣諸国では、そういった動きが戦前の国家主義的な教育への転換になるのではと恐れられています。陛下もそうした見解に共感されますか」。重い質問だ。質問した外国人記者がどこの国籍かはニュースでは明らかにされなかった。が、この記者会見の政治の意味は本当に重要で、安易に見過ごしてはいけないものだろう。天皇陛下が孤軍奮闘でこの国を軍国主義から守ろうとしている。

b0087409_12223844.jpg皇室の記者会見は宮内庁の所管だろうが、当然ながら、政権(官邸)がこれを仕切る。質問も回答も予め事前に用意されたものであって、その場でアドリブでは出ない。質問者と質問内容を調整するのは政府である。誰の質問を取り上げ、どんな質問と回答の会見に演出するかは、基本的に官房長官の胸三寸である。そこに、この外国人記者の質問が入ったということは、天皇陛下が裏でギリギリのせめぎ合いを安倍晋三とやっているという政治の反映以外の何ものでもない。両陛下の強い希望でこの外国人記者の質問が挿入されたのだ。安倍晋三は、無論、天皇の政治行為の禁止原則を口実にこの要望を拒絶することはできたはずだが、両陛下の要望と折衝があって実現したのだろう。昨年のサイパンでの韓国人慰霊碑訪問と同じだ。質問は愛国心と教育基本法改正問題であり、我々はただちに二年前の秋の園遊会での米長邦雄に対する発言(国旗国歌の強制禁止)を想起する。天皇陛下が現政権による右傾化政策を批判するメッセージを発信しているのである。

b0087409_12174522.jpgコメントの中で天皇陛下は興味深い発言をされていて、1930年代前半の日本の歴史について具体的に持ち出している。直接の意味は現在の日本は戦前とは違うという趣旨の中での挿話だが、当然、聞く者にとっては暗喩された意味がある。読解はきわめてたやすい。すなわち、眼前の日本が1930年代と同じだと言っているのだ。満州事変が起き、統制立法が強化され、国民の思想信条の自由が奪われた時代と現在とを重ね合わせているのである。二年前の園遊会での「強制禁止」発言の主張をあらためて念押ししているのだ。天皇陛下だけが指導者として平和のために闘っておられる。右傾化と戦時体制化への歯止めを誰もかけられない中で、天皇陛下だけが国民に平和への希望を与えている。政権の圧力に抗して。本当に立派だ。今度の東南アジア三カ国ご訪問のハイライトはシンガポールということになるだろう。日本軍は戦争の初期にシンガポールとマレーシアで大量の華僑住民を虐殺していて、シンガポールの公園には有名な「日本占領時期死難人民記念碑」がある。恐らくここを訪れて黙祷を捧げる絵が報道されるだろう。

天皇陛下と皇后陛下だけが日本の平和のために尽力されている。お力になれないことが口惜しい。心だけは「大君の御盾と出で立ち」たいのだけれど。残念ながら私には力がない。黙って見守ることしかできない。くれぐれもお体に気をつけて。

b0087409_12175838.jpg

[PR]
by thessalonike4 | 2006-06-07 23:30 | 憲法 ・ 皇室
<< 村上世彰と新自由主義の思想 (... 昔のIndexに戻る 村上世彰のインサイダー取引容疑... >>


世に倦む日日
Google検索ランキング


下記のキーワード検索で
ブログの記事が上位に 出ます

衛藤征士郎
八重洲書房
加藤智大
八王子通り魔事件
吉川洋
神野直彦
サーカシビリ
敗北を抱きしめて
苅田港毒ガス弾
道義的責任
可能性の芸術
青山繁晴
張景子
朱建栄
田中優子
小泉崇
アテネ民主政治
二段階革命論
影の銀行システム
特別な一日
ボナパルティズム
鎮護国家
三田村雅子
小熊英二
小尻記者
古館伊知郎
本村洋
安田好弘
足立修一
人権派弁護士
反貧困フェスタ2008
舩渡健
エバンジェリズム
ワーキングプアⅢ
新自由主義
国谷裕子
大田弘子
カーボンチャンス
秋山直紀
宮崎元伸
守屋武昌
浜四津代表代行
江田五月
馬渕澄夫
末松義規
平沢勝栄
宮内義彦
田勢康弘
佐古忠彦
田岡俊次
末延吉正
横田滋
横田早紀江
蓮池薫
金子勝
関岡英之
山口二郎
村田昭治
梅原猛
秦郁彦
水野祐
渓内譲
ジョン・ダワー
ハーバート・ノーマン
B層
安晋会
護憲派
創共協定
全野党共闘
二大政党制
大連立協議
民主党の憲法提言
小泉靖国参拝
敵基地攻撃論
六カ国協議
日米構造協議
国際司法裁判所
ユネスコ憲章
平和に対する罪
昭和天皇の戦争責任
広田弘毅
日中共同声明
中曽根書簡
国民の歴史
網野史学
女系天皇
呪術の園
執拗低音
政事の構造
政治思想史
日本政治思想史研究
ダニエル・デフォー
ケネー経済表
マルクス再生産表式
価値形態
ヴェラ・ザスーリッチ
故宮
李朝文化
阿修羅像
松林図屏風
菜の花忌
アフターダーク
イエリネク
グッバイ、レーニン
ブラザーフッド
岡崎栄
悲しみのアンジー
トルシエ
仰木彬
滝鼻卓雄
山口母子殺害事件
偽メール事件
民主主義の永久革命
ネット市民社会