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by thessalonike4
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敵基地攻撃論の報道と世論 - 田岡俊次と小川和久の安心理論
b0087409_14342247.jpg私の予想どおりの結果となって制裁決議案は取り下げられた。安倍晋三と麻生太郎の無能な強硬外交の失敗である。安倍晋三はずるくて、制裁決議案の撤回と非難決議案への譲歩を13日夜に外務省幹部の発言としてマスコミに流させた。失敗の責任は安倍晋三にあるのだから、安倍晋三が前に出て不始末を国民に報告しなければいけないのではないのか。外務省に責任を押しつけて、自分は後ろへ隠れて、やっている事は金正日と同じだ。姑息。右翼匿名掲示板では、早速、安倍親衛隊の右翼が外務省攻撃の気炎を上げている。日本外交に恥をかかせたのは安倍晋三だろう。右翼は安倍晋三を批判せよ。日本が早めに妥協に動いたのは、外交敗北の傷口をこれ以上広げなくするためだ。決議案の討議と採択の日程をサミット後まで延ばせば、中国と韓国に巻き返されて安保理内の票を切り崩され、非難決議案の採決さえおぼつかなくなったからである。サミットを越せば制裁決議案は店晒しになっただろう。



b0087409_15125332.jpg問題の敵基地攻撃論についてだが、まず日本の新聞の論調は次のとおりである。読売新聞は「脅威を直視した論議が必要だ」と題した7/11の社説で、額賀福志郎と安倍晋三の問題提起を全面的に支持、「能力がなければ、座して自滅を待つことになる。いつまでも権利はあるが能力は未整備のままでいいのか。安全保障環境の変化に対応した議論を深めるべきだ」と主張、ミサイル基地攻撃用の必要装備の検討を促している。7/11の産経新聞も「攻撃力の是非の論議を」と題した社説で、「日本の平和と安全を守るために(中略)攻撃力保持の問題について、国民が自分たちの問題として論議するときである」と強調、額賀福志郎の発言を全面支持している。一方、朝日新聞は7/12の社説で、「北朝鮮の挑発に過剰反応し、短兵急に方針転換へ突き進むようなことがあってはならない」「あくまで外交的な決着をはかるのが日本の戦略であるべきだ」と敵地攻撃論議を進めようとする政府の動きを牽制している。

b0087409_14343929.jpg軍事評論家の田岡俊次は、7/13朝のTBSの番組で、「敵基地攻撃論には軍事的な実効性がない」と解説していた。「北朝鮮が一斉に撃ってくる核弾頭付きのミサイル200発に対して、それを一回で発射前にパッに押さえられるのならいいけれど、それはトマホークでもMDでも不可能で、必ず何発かは漏れて日本の攻撃目標に着弾する」として、その前提に立てば外交交渉で問題解決する以外にないと結論づけた。また7/12にテレビ朝日の番組に出演した小川和久は、「そもそも根本的に考えなければならないのは、先制攻撃でミサイル基地を潰した場合には、そこから北朝鮮と全面戦争になるということで、戦争をするということは、戦争をどう終わらせるという最後のシナリオまでできていなければならない」と指摘、「自衛隊には北朝鮮と戦争して最後まで遂行する能力や装備の前提はない」「攻撃して戦争を終わらす能力を持っているのは米軍であって、日本が勝手に先制攻撃なんかやったら米軍は困るはずだ」と喝破した。

b0087409_14345378.jpgこの小川和久の議論は当を得ていて拝聴するに値する。まさにそのとおりだろう。いかに自衛目的の敵基地攻撃だと言い訳しても、その武力行使が先制攻撃である事実は否めず、北朝鮮と日本はその時点で戦争状態に入る。北朝鮮はあらゆる軍事的手段を行使動員して(停戦講和までの)状況有利を作ろうとするし、それを可能にさせる国際法上の正当性(正当防衛権)を主張できる。例えば、特殊部隊を日本海から潜入させて原子力発電所を爆破する破壊工作活動も正当化できる。韓国国内でビジネスする日本人を狙ったテロも、自衛隊の密命を帯びたスパイだったからと捏造・合理化して、作戦の一部として正当化するかも知れない。小川和久の言いたいところは、先制攻撃で一度戦争を始めてしまったら、北朝鮮全土を軍事占領するところまでやらないと戦争を終結させることができないではないかという問題で、そこまでの軍事的な装備と国民の覚悟と政府の決断がなければ先制攻撃論など意味がないという批判である。

b0087409_1435567.jpgが、護憲派や左翼は、田岡俊次や小川和久が言う不可能論や無意味論の「安心理論」を聞いてホッと胸を撫で下ろしているに違いないが、「安心理論」の効能が今だけの一瞬のものである真実を考えておいた方がいい。田岡俊次が出演した「朝ズバッ」の司会者であるみのもんたは、額賀福志郎と安倍晋三の敵基地攻撃論を「僕はこれは当然だと思いますけどね」と賛同し、それを「日本の侵略主義的傾向の表明」として非難した韓国大統領府声明が書かれたクリップボードを叩きながら「ふざけんじゃねえ」と声を荒げていた。TBSが視聴者に示している「正論」は司会者であるみのみんたの発言であり、同席している報道局の柴田秀一も基本的にこの立場にある。みのもんたや古館伊知郎が、安倍晋三や麻生太郎の過激で極右の政策や政論をテレビで「中立の正論」に化学変化させるときは、必ず触媒として中国や韓国を使うのであり、要するに「中国や韓国の反日政府が反発しているから、この政策や政論は正しいのだ」という錬金術で正当化する。

b0087409_14353022.jpg反日が反発しているからこれは日本の正論という論理導出。マイナスとマイナスの積算はプラスという公理演出である。恐らく、敵基地攻撃論は「サンデープロジェクト」と「報道2001」と「テレビタックル」で議論されて、さらに国民的正論化が一歩進められるだろう。例えば、福島瑞穂あたりを呼び出して、「先制攻撃は憲法違反だからできないんですう」などと弱々しく言わせ、田原総一朗が「そんなこと言ってたらミサイルがボーンと飛んできて、人が十万人死んだらどうするんだ」と手を振り上げて恫喝する場面を演出するのではないか。すかさず高野孟と草野厚が、「もう憲法なんか変えちゃえよ」と田原総一朗を援護する台本に続くだろう。恫喝屋は三宅久之もいる。私の予想としては、まさに右翼側は、田岡俊次や小川和久の議論を逆包摂する形で、だから200発のノドンを一瞬で無力化する兵器と作戦を考えなければならないとか、全面戦争になった場合に北朝鮮全土を制圧する軍事力を保持しなければならないという方向で踏み出して行くだろう。

b0087409_15402320.jpg踏み出して、さらに踏み出して、それを常識的国論に固めて行くだろう。何と言っても次の首相は国民に人気のある安倍晋三であり、そして憲法改正は安倍晋三の総裁選の政権公約であり、一期目で改憲は決まったも同然だ。そして日米同盟は変質し、一体化の中で自衛隊の役割は変わり、これまでの盾と矛の関係は一変する。東アジア地域の軍事作戦では日本軍が米軍よりも中心的な役割を担う分担に変わる。戦争するのは米軍ではなくて日本軍(自衛軍)になる。田岡俊次と小川和久の「安心理論」はこうして破られる。安倍晋三や麻生太郎の先制攻撃論は、まず安倍晋三が首相になり、そして金正日が二度目のミサイル実験か核実験をやったとき、「右翼的」でも「タカ派的」でも何でもなくなり、朝日新聞も社説でオーソライズする国民的正論になる。誰もそれを止めることはできない。日本の左翼と護憲派にはそれを阻止する力はない。議席一桁の野党党首が弱々しく反論の声を上げても、それは国民的常識にはならず、単なる「負け組」の異端論でしかないのだ。

b0087409_23382119.jpg

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by thessalonike4 | 2006-07-14 23:30 | 韓国 ・ 北朝鮮 ・ 拉致
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