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by thessalonike4
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憲法改正の国民投票 - 新自由主義と社会民主主義の体制選択
b0087409_12553295.jpg今から一年半後か二年後に国民投票があって、そこで憲法改正が果たされるだろうというのが今の私の予想だが、そうなると護憲派というのはどうなるのだろうか。現在の私は護憲派だが、一年半後には護憲派ではなくなっている。なぜなら、そのときの憲法は自衛軍を認めた改正後の新憲法であり、国の交戦権を認めた「普通の国」の憲法だからである。国民投票と憲法改正を機に護憲派と改憲派は立場を入れ替えて、現在の改憲派が護憲派となる。実際には、一年半後に改正されるのは第9条と第96条で、現在の改憲派はそれにとどまらず着々と他の条文改正へ突き進もうとするから、現在の改憲派は将来も改憲派であり続けるだろう。そうなると現在の護憲派はどういう名前で呼ばれることになるのだろうか。復憲派だろうか、旧憲派だろうか。この問題は考えると案外重要で、一つの予想としては、一度護憲派のブロックが突き崩されたら、二度と政権側の再改憲を止めることはできないだろうということである。



b0087409_12554667.jpg現在の護憲派は一つの塊ではなくなり、民主党的な改憲(環境権とか)を目指す方向に流れる者が多く出るだろうし、別の奇矯なポストモダン的主張を言い散らして論壇で注目を集める者も出るだろう。当然、現在の日本国憲法そのものに戻そうという原状回復の議論も一定の支持を得て、早い話が四分五裂の状態となり、政治的に立場を一本化して政権側の改憲に次ぐ改憲の前に立ちはだかる勢力にはなり得ないように思われる。憲法論議は現在のような真剣なものにはならず、自民党の漸次的な条文改正をズルズルと認めて徐々に憲法全体が変容する形となり、国民の憲法に対するコミットも(他の諸国並みに)弱いものになるだろう。日本国憲法に誇りを持つ国民はいなくなるだろうけれど、別に憲法に国民が誇りを持っている国なんて世界に他にないよという論理の前に、簡単に納得してしまうだろう。確実に言えることは、改憲が果たされると、国民は憲法に関心を失う。もう口角泡を飛ばして憲法論議することはなくなる。

b0087409_12555819.jpg私が五月に「九条の会」に一連の戦略提案を試みていたとき、STOP THE KOIZUMI のあるメンバーから、護憲や九条や新党も重要だが、われわれの前には年金や財政や格差やもっと大事な問題が多くあって、「世に倦む日日」はアクセスの多い人気ブログなのだから、そっちの切実な問題の方をもっと論議すべきだという批判のメールを頂戴した。この機会に返事を出したいが、実はこの質問はいわゆるグッドクエスチョンである。というのは、実は誰も気づいてないが、憲法改正の国民投票のときにこそ、こうした社会保障や財政や格差の問題が有権者に問われて政治的選択が迫られるからだ。結論から先に言えば、憲法改正の国民投票で結果が出た後、憲法とは直接関係のない消費税が上げられ、医療や介護や年金の国民負担も一気に引き上げられる。国民負担を減らそうという社会民主主義的な政策路線が否定されて、新自由主義の路線が改めて勝利し、混じりっ気のない、情容赦のない新自由主義の経済政策が国策定置される。

b0087409_1256970.jpgそれが政治というものだ。年金や医療や増税については参院選では争点にはしないのである。参院選での争点は憲法と国防にする。憲法改正の是非を問う選挙にする。なぜなら、そうすれば安倍自民党が勝てるから。小沢民主党が負けるから。政権側が負けるような政策争点は選挙争点にはしない。争点を公式設定するのはマスコミで、国民ではない。マスコミが決めた争点が争点になる。争点をどうセットするかで選挙の行方は決まる。そして国民にとって切実な社会保障と国民負担の問題は、国政選挙ではなく憲法改正の国民投票で決着がつくのだ。要するに何があるかと言うと、消費税増税に反対し、医療費負担増額に反対し、正規雇用の回復を訴え、格差社会に反対する側は、憲法改正に反対する護憲勢力の経済政策主張として一括りにされる。逆に、憲法改正に賛成する側は、防衛費負担増に賛成し、消費税値上げに賛成し、社会保障の国民負担増を許容する新自由主義の側として集約される。改憲の是非に新自由主義か社会民主主義かの選択がクロスオーバーされる。

b0087409_12562398.jpg現実に、九条改正に賛成しているのは自民党と民主党の新自由主義政党であり、九条改正に反対しているのは社民党と共産党の社会民主主義政党である。大雑把にそういう図式になっている。民主党の中には新自由主義と九条改正に躊躇している部分もあるが、党内では少数派にとどまっていて、路線対立が露になれば党内は二つに分裂する。自民党の中は割れない。一本に纏まる。国民投票で九条が否定されるということは、九条を担いでいる社会民主主義勢力が政策もろとも原理的に否定されるということである。改憲する側は国民投票の政治をそのような選択にセットする。テレビの論議はその方向に向かうだろう。国民投票を体制選択の投票に演出する。そしてテレビの出演者には、九条改正反対の人間は少なく、多数は九条改正賛成で占められるだろう。もし仮に国民投票で護憲派が勝てば、経済政策も社会民主主義的な政策が選択されたことになり、恐らく民主党の政策はガラッと変わって、前原誠司的な新自由主義の路線は駆逐される。が、逆の場合は党内から社会民主主義系が一掃される。

来るべき憲法改正の国民投票は、単に九条が問われるだけの政治にはならない。トータルに経済財政の基本政策を含めたイデオロギーの選択になる。関が原の戦。来年の参院選と国民投票の二つがあった後、私の予想では、日本国民は憲法だけでなく政治の全般に関心を失うことになるだろう。自己の生活の防衛で政治どころではなくなる。そして政治ではなくて戦争の方に関心が向かう。

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by thessalonike4 | 2006-07-20 23:30 | 安倍政権
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