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謹賀新年 - 日本人と正月
b0087409_15501357.jpg正月。東京の空は真っ青に晴れ上がっている。昨夜の紅白歌合戦が面白くなくて、途中で何度も中座したりして、結局、全体の三分の二くらいを見なかった。年々、紅白の時間帯で紅白を見ない時間が増えて行っている。今年の紅白は例年にも増して面白くなかった。去年は今井美樹の出演が素敵で、センスのいい黒のダブルのボタンのドレスと、そこから上に伸ばした白く細い腕が印象的だった。今年は印象に残ったものがない。笑福亭鶴瓶の司会も最悪だった。あの不真面目で下品な司会に象徴されているように、最近の紅白には緊張感がない。出演者や制作者の真剣さが感じられない。四年か五年ほど前から、紅白の司会は台本を暗記しなくなった。下のカンペを読んでいる。カンペを見ながら、それでも進行や曲紹介を間違えている。黒柳徹子の頃は電話帳ほどの台本を全て暗記していた。紅白から緊張感が失われたら終わりだ。現在の紅白関係者は、先人たちが築き上げてきた伝統の形式を崩すことばかり考えている。



b0087409_1548683.jpgが、今の大衆の気分や世論は鶴瓶的な愚劣で粗暴な司会を支持するのである。「NHKは固すぎる」とか、「視聴率はもっと下がっていい」とか、「気楽にやれ」と言い、紅白の堕落を後押しするのだ。その大衆意識の根幹にある思想こそ脱構築主義であり、脱構築主義の国民主義否定の衝動と宿意に他ならない。形式こそが重要なのだ。生産力を支えるのは形式合理主義である。あの自堕落な紅白が、日本を代表する芸能音楽番組として世界各地に配信されていると思うと戦慄する思いだが、あんな低俗で低水準なエンタテイメントショーを見て、感動してくれる人間が外国にいるだろうか。本当に一人よがりだ。もっと感動的な歌や、歌の上手な歌手を揃えないといけない。戦後日本の大衆文化の象徴である紅白歌合戦、その伝統を守り、もう一度立て直すこと。それは政治の革新や民主主義の再建とも繋がる。今の紅白はだめだ。和田アキ子とか五木ひろしとか、バブルとバブル以降に肥え太って芸能界でボス化している連中を出し続けてはいけない。

b0087409_15481620.jpg11時45分から30分間の「ゆく年くる年」はよかった。今回は全国10か所で中継があり、各地の放送局が入念に準備して、各1分ほどの珠玉の生中継のコンテンツを見せてくれた。長崎市のカトリック中町教会での厳かな新年ミサ、尾道西國寺での地元の人々の「子授け地蔵」の祈り、東北平泉の雪の中の中尊寺の初詣風景、どれも素晴らしい映像だった。「ゆく年くる年」について、あれはやらせで云々という知ったかぶった愚かな批判がある。繰り返すが人生は形式だ。わずか1分間の生中継の映像のために、NHKのスタッフは準備をして準備をして、1秒1秒の画面と言葉の構成を練り、出演者と打ち合わせし、撮影に合わせて(俳優のように)演じてもらい、そうやって静寂の中の感動のドラマを作るのだ。何度も何度もリハをやって本番の一発勝負に備えるのだ。ああいう感動的な映像が、ぶっつけ本番の出たとこ勝負で撮れるわけがないではないか。それは8月6日の広島の朝の中継と同じなのだ。企画と構成を練り、構図と台本を準備し、出演者とリハを繰り返して、神聖な本番に臨むのである。

b0087409_15483529.jpgそうして感動的なNHKの生放送ができるのだ。映像は作品であり、そこには企画と構成と準備がある。長崎の中町教会のミサは生中継と同時に神父の説教が始まった。あそこで映っていた二人の子供は、一人は瞑想し、一人は眼を見開いていたが、無論、それはNHKの演出であり、リハを何度もやっていて、二人の子供は自分がどの角度から撮られて、どういう表情で全国に放送されているかをわかっている。意識してカメラの前で演じている。中町教会の人々にとっては、昨夜のミサは映画のエキストラに出演した気分だっただろう。尾道の西國寺の「子授け地蔵」では、仏像としていちばん出来のいい、芸術的価値の高い、顔のきれいな地蔵をスタッフが選んでいて、それを最後にアップで出していた。全ては計算して映像を作っているのであり、視聴者が感動するように演出しているのだ。感動的なものを作るためには手間がかかる。熟考と労力が要る。嘘だと思うならブログを作ってみればよい。企画と構成のないものは作品にならない。逆に言えば、何か人を感動させるものを作ろうと試せば、NHKの努力がよくわかる。

b0087409_15484611.jpgお正月にはタコあげてコマをまわして遊びましょう。そういう伝統的な日本人のお正月を送ろうと思って、子供が小学校2年生くらいのとき、居間のコタツの天板でコマを回して見せ、近くの小学校の校庭でゲリラカイトを上げて走ったことがあった。コマを回すのは難しく、最近ではできない子供が多いという話が当時あり、そうかも知れないと思って「教育」の機会を作ったが、やはり「教育」を受ける方は初めての経験で、なかなかすぐには要領を覚えることができなかった。コマは紐を山に巻きつける技術が難しい。そこで多少の時間がかかる。次に投げるのが難しい。テレビのブラウン管があり、ガラスの食器棚があり、居間をコマ回しの遊び場にするのはリスクがあった。放擲の位置と角度を調節しなければならず、そのことがトライアンドエラーの自由を奪って、繰り返し練習での上達には結びつかなかった。すぐに上達しないと、結果が早く出ないと、子供はその遊びが嫌になってしまう。タコあげとコマまわしは、父親の教育ではなく子供同士の遊びに委ねるしかないと結論して、古きよき日本のお正月の伝統を家族のライフスタイルに取り入れる構想は断念した。

b0087409_15485712.jpgそう言えば、米国では大晦日も仕事をしていて、NYの株式市場が動いている。元日は休日のようだが、1月2日は通常の出勤日である。日本のように正月を祝って三が日に休暇を取る習慣がない。米国ではクリスマスを祝って休み、クリスマスが終わるとビジネスデイに戻る。年の切れ目に日本ほど切れ目がない。キリスト教文化圏の国々はほぼ同じ習慣だろう。実は中国も年の時間の切れ目が休暇の切れ目になってなくて、約一か月後の旧正月を大々的に祝う。旧正月に実家に帰省して、家族全員が揃って祝いの食卓を囲む。欧米はクリスマス、中国は旧正月。韓国も旧正月だろうか。そうなると、日本だけがきちんと時間の区切りを生活の区分りにリンクさせていることになる。その方が合理的で、日本と同じ習慣ではない方が非合理的で異常に感じるが、世界を見渡せば、日本の合理的生活習慣の方が少数派になる。実はこのことはとても大事で、日本人がどうして(旧正月ではなく)正月を生活時間の節目とするようになったのか、意味を積極的に考えるべきだ。そして、日本人がこの時間の節目を生活の節目にしている伝統文化のあり方を、もっとメディアで周知するべきだと思う。

b0087409_15491064.jpg例えば、高野山奥の院や比叡山延暦寺や東大寺の修正会とか、伊勢神宮や日光東照宮の歳旦祭の模様とか、そういう儀式に関心が向けられて、NHKの生中継で詳しく紹介されてもよいのではないか。もっと言えば、皇室の正月行事。全部を生中継で見せろと言うわけではないが、皇居の中で年頭にどういう行事や儀式をやっているのか、一部でも国民の前に公開して、その意味を国民が考える機会を持ってもよいのではないかと思う。日本人が日本の正月の起源を考え、諸外国と異なるオリジナルな民族文化を育み継承してきた歴史を考える機会を作るべきだ。仮に飛鳥朝から奈良朝にかけての頃に大陸から正月の概念と習慣を導入したとして、旧正月との二重性の問題はどうだったのか。それ以前の日本の思想の中には「正月」は存在しなかったのか。一年の初日が冬至から約十日後の日に設定されたのは、それが全世界で共通のプロトコルになったのはどういう経緯と事情によるのか。日本ではその暦(時間カウント法の標準プロトコル)の導入に際して何の軋轢もなかったのか。キリスト教圏では聖降誕祭を一年の初日にする思想は発生しなかったのか。などなど、素朴に疑問に思うことは多い。

が、ひとまず、無事に年を越せたことを寿ぎつつ、穏やかな晴天の空の下から年賀状がわりに、謹賀新年。

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by thessalonike4 | 2008-01-01 23:30 | その他
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