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by thessalonike4
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クロ-ズアップ現代『欧州からの新しい風』 - トレンドとしての欧州
b0087409_1525383.jpg「クローズアップ現代」が今週一週間かけて4回特集で放送した『ヨーロッパからの新しい風』は非常に面白かった。これは、新年に発売されて話題を呼んだ「週刊東洋経済」1/12号の『北欧はここまでやる』の問題意識をそのまま引き継ぐジャーナリズムと言える。今、まさにトレンドは欧州。前の記事で少し感想を述べたが、番組のインタビューで出てきた欧州の幹部たちの言葉が新鮮で、テレビを見ながら本当に驚かされた。新自由主義の時代を終わりをまざまざと感じさせられた気がする。①スウェーデン電力会社バッテンフォールCEOのラース・ジョセフソン、②オランダ輸送会社TNT・CEOのピーター・バッカー、③ロンドン気候変動局代表のアラン・ジョーンズ、④OECD教育局指標分析課長のアンドレア・シュライヒャー。4人のキーパーソンが国谷さんと対談したが、話す言葉が、日本であれば内橋克人のそれと全く同じ印象のものだった。



b0087409_1592767.jpg日本で言えば「左派の論客」の言葉なのである。民主党よりもずっと左、神野直彦よりも左、寺島実郎よりも左。彼らは大企業と大都市と政府組織の幹部の立場なのに、話している言葉はまさに左派の福祉国家の人間の言葉そのものなのであり、しかもそれを、環境や教育の課題を、自己の挑戦として、目を輝かせて生き生きと語っていた。「その時代の支配的思想は常に支配階級の思想である」とはマルクスの言葉だが、私はそのマルクスの言葉に付け加えて、「同時にその時代の支配的思想は常に自分自身の思想でもある」と十年前に言った。欧州の幹部の言葉が新鮮に聞こえるのは、この日本がいかに新自由主義の思想に毒されていて、その毒が自分自身の体内にも隅々まで行き渡っているかの証左に他ならない。彼らは毒されてないのだ。新自由主義から自由なのである。新自由主義から自由な社会でアドミニの立場に就いている。

b0087409_1531673.jpg4人のどの人間の言葉も不思議だった。話を聴きながら、私は、彼らはどこで勉強したのだろう、どこの大学で何を学んだエリートなのだろうと、そのことがとても気になった。言葉の端々に新自由主義の影響が全く感じられない。新自由主義以前の健全な時代の社会のエリートの知性と理性。それに久々に触れた気がして私は感動させられた。彼らだってこの十年の世界の中に生きてきた人たちだ。いくら欧州といえども、日本ほど極端でなくても、企業の中にいれば、組織の上の立場に身を置いていれば、新自由主義の洗礼は否と言うほど浴びてきたはずであり、新自由主義の市場原理の中で生き抜いてきた人たちのはずだ。しかし、それを微塵も感じさせないほど、彼らの中に新自由主義的な感性と論理はなく、それは過去のものとして克服されていた。内橋克人が言った「もうひとつの日本は可能だ」の「もうひとつの」世界が、まさにインタビューする映像の中にあった。

b0087409_1575965.jpg思ったことは、きっとこれから、欧州の「カーボン・マネジメント」の概念や方法がトレンドになって、日本の企業で実践されるだろうということだ。昔のISOのような流行のイニシアティブとなって企業の日常に入り込み、企業のマネジャーや従業員の必須科目になるだろう。セミナーに受講者が集まり、先にノウハウを持ったエバンジェリストが引っ張りだこになるだろう。欧州から人を呼んで講演させるコンファレンスも日本で盛況になるだろう。日本の組織のエリートの新しい能力の要件として、カーボン関連の世界に熟知熟達していること、カーボンの問題を英語でディスカッションできることが求められ、その能力を持った人間が組織で出世するようになるだろう。カーボン・エミッションの技術、行政、産業、市場の動向に精通して、情報を持ち、欧州と人脈を持った人間が脚光を浴びるようになるだろう。それは企業と役所に限らず、政治やマスコミでも同じ傾向になるだろう。

b0087409_1533475.jpgこれまでは、米国一辺倒だった。米国の大学を出て、米国の金融やITのビジネスと関係を持ち、米国流のディベート術を身に着け、米国政府による「年次改革要望書」のアジェンダとイニシアティブに沿って日本の産業や市場を改造しようとする人間が日本のエリートになっていた。その筆頭が竹中平蔵だった。産業界が主催するイベントの会議でも、キーノートは常に米国の企業の人間を招いて喋らせていた。米国での最新の技術と方法を紹介することに徹していた。それがこれから変わる。大きなコンファレンスのキーノートで人気が集まるのは、欧州から招く企業や団体のトップとなり、そこには必ず「環境」がキーワードとして入るだろう。「環境」や「カーボン」で取組みを先行させ、実績を上げて、成功している企業の幹部が日本に呼ばれてエバンジェリズムをする。それが日本のトレンドになる。日本の大企業や官庁における注目と関心が、米国から欧州へと大きくシフトする。欧州の方法の導入へと走る。

b0087409_1581313.jpgその欧州の方法、つまり思想の問題だが、これは決して特に目新しさを感じるものではないのだ。米国の新自由主義の方法のような、人目を惹く斬新さはない。そのスタイルにも、米国のような、ハリウッドライクな映像と音楽を使うとか、ITを必ず使うといったテクノロジの派手さはない。地味だ。当たり前のことを当たり前に言っている。身の丈の話をしている。特に、例えば、1/29の回で紹介されたロンドン市の「緑のコンシェルジェ制度」とか、1/28に放送されたTNTの社員の私生活に踏み込んだ二酸化炭素排出規制の取組みなど、日本で言えば、大昔の省エネ生活の問題であり、省エネという言葉も無かった頃からの節約倹約のライフスタイルであり、当たり前すぎて何がトレンドだろうと思ってしまうような地味な話である。だが、それが新しい「トレンド」や「ノウハウ」として意識されるほど、世界と日本は新自由主義の思想の中に漬かっていて、生活は米国流の無駄で過剰な大量浪費型が当然になっていたのである。

b0087409_1594817.jpgそういう問題系と関係するかどうか、例えば、いま日本で問題になっているメタボリックシンドロームだが、私の視線で日本人の男性の肥満が目につき始めたのは、バブルの頃の80年代後半からだった。それからどんどん傾向が顕著になり、現在に至っているけれど、米国へ行くと、本当に男も女も肥満が多い。砂糖と動物性の脂肪分を過剰に摂取して体内に蓄積している。ミーティングをすると、テーブルの中央にスタバのクッキーを山盛りに積んだ皿が置かれ、部屋の隅のポットに入れたコーヒーを何度もマグカップに注ぎながら、出席者は左手で菓子を摘み、右手で資料のページをめくっている。楽しいミーティングだが、あれをやったら絶対に肥満になる。スウェーデン人とかフィンランド人とか、滅多に見る機会もないが、これまで見た中で肥満した人間は一人もいなかった。米国人は肥満する食生活の環境を前提にして、その中で運動と薬品とダイエットで健康を守っている。ニューヨークは別だろうが、人が歩道を歩くという習慣がない。

b0087409_1582444.jpgどこへでも車で移動する。歩いて5分先の隣のオフィスへ行くにも、車を使って3分かけてパーキングからパーキングへ移動してしまう。国谷さんの4回シリーズの欧州報告は面白かったが、気になったのは、いわゆる格差の問題で、例えば欧州の企業では、日本で問題になっている正規労働と派遣労働の問題とかはないのか、雇用形態が非正規化されて賃金が切り下げられているという問題はないのか、賃金水準を切り下げなくてもグローバル時代の買収競争に耐えられる企業利益と自己資本(内部留保)を維持できるのか、それからまた、各国の企業の従業員の所得と生活の水準は毎年少しずつでも上がっているのか、生活保護の問題はどうなのか、日本と経済規模の似た英国やドイツではどうなのか、そのあたりのところを取材して実情を報告して欲しかった。20年ほど前、日本のバブル経済の頃、たしか欧州は経済が不振で失業がひどかった。スイスで若者の麻薬中毒が増えて問題になっている映像がニュースで紹介されていた。

失業率が高く、企業に開発競争力がなく、日本の製品に市場を奪われて、それで各国がストレスになり、あれはフランス共産党の書記長だったか、例の「ウサギ小屋」発言の罵倒で憂さ晴らしをしている体たらくだった。欧州は元気がなく、日本の経済政策のお手本になるような美質は何もないように見えた。フランスの人口減と少子化が大きな問題になっていた。歴史は変わる。時代は確実に変化する。

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冬のニューヨークとS&G

冬のNYのイメージは、これまで見た何本かの映画の記憶とも繋がっているけれど、映画以上に私の中にあるのは、どうやら、サイモンとガーファンクルの曲のイメージのように思われる。ということで、今週ブログがご紹介する一曲はS&Gの「ボクサー」。歌詞が素晴らしい。米国人はこの歌が好きだ。冬のNYの街とセントラルパークを思い浮かべながら、寒い週末のひととき、名曲に耳を傾けよう。



Asking only workman's wages
I come looking for a job,
But I get no offers,
Just a come-on from the whores on Seventh Avenue
I do declare,
There were times when I was lonesome
I took some comfort there.
Lie-la-lie...

Then I'm laying out my winter clothes
And wishing I was gone,
Going home
Where the New York City winters
Aren't bleeding me,
Leading me,
Going home.

In the clearing stands a boxer,
And a fighter by his trade
And he carries the reminders
Of ev'ry glove that laid him down
And cut him till he cried out
In his anger and his shame,
"I am leaving. I am lraving."
But the fighter still remains
Lie-la-lie...

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by thessalonike4 | 2008-02-02 23:30 | 新自由主義と福祉国家
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