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「ガソリン国会」の破綻と挫折 - 二人の政治学者の民主党批判
b0087409_137497.jpg政局に目を移すと、どうやら民主党の「ガソリン国会」戦略が完全に破綻し、リセットされつつあるように見える。昨日(2/3)のNHKの7時のニュースでは、小沢一郎が「政治塾」で講演している模様が放送され、小沢一郎が解散の時期を当初の「4月」から「年内」に引き伸ばしたという情勢観測が伝えられた。この観測は、例の「つなぎ法案」が、衆参両院議長による斡旋案への与野党合意によって却下された翌日、1/31の朝日新聞の記事に出され、また、1/30と1/31の両日夜にテレビ朝日の「報道ステーション」に生出演した朝日新聞編集委員の星浩によっても解説が与えられていたものである。星浩は2/3の「サンデープロジェクト」にも出演して、幾つかの「永田町情報」を小出しにしながら、だめを押すようにこの情勢認識を固めていた。私は、1/31の朝日の記事を見ながら、これは小沢一郎本人が記者を通じて書かせているのではないかとさえ疑った。



b0087409_1385141.jpgそれにしても民主党の「ガソリン値下げ」作戦はずいぶん早い幕引きだった。呆気にとられて鼻白むばかりだ。この話が最初に出てきたのは、どうやら新年1/4の小沢一郎の年頭記者会見での発言で、この日、伊勢神宮で初詣をすませた小沢一郎は党本部に戻って「暫定税率」を通常国会で福田政権を攻撃する標的に据える旨の発言をしている。ここから「ガソリン税」戦略が始動した。これには前段があって、ブログでも記事にして取り上げたが、昨年末に小沢一郎側近の藤井裕久が発表した民主党の「税制改革大綱」がある。このとき、われわれは民主党の消費税増税政策に注目したが、藤井裕久が発表の席で要点として訴えていたのは「道路特定財源の一般財源化」だった。この頃世間は、越年国会となった臨時国会で新テロ特措法の攻防が最終的にどのような決着になるのかに関心が集まっていて、民主党が支持率を上げる中で大阪府知事選も民主党の有利が確実視されていた。

b0087409_1381411.jpg1/4の年頭記者会見の後、例の1/11の小沢一郎の採決ボイコットの珍事を含む新テロ特措法の意外な幕切れがあり、民主党の対決姿勢に期待していた国民は大いに落胆させられたが、小沢民主党の方は何も気にした様子もなく、通常国会を「ガソリン国会」と銘打って、参院の多数を武器に暫定税率を年度末で期限切れに追い込み、ガソリン税引き下げで世論の支持を得て、それに抵抗する福田政権を解散総選挙に追い込む戦略を着々と準備していた。新テロ特措法で果たせなかった「1月解散」の約束は、暫定税率を争点にした「4月解散」として繰り延べ公約になった。そして1/16に横浜で定期党大会があり、1/15に結成したガソリン値下げ隊を桜木町駅前に繰り出して、菅直人と鳩山由紀夫が街頭演説の一声を上げている。翌日の1/17、この日は阪神大震災から13年目の日だったが、安住淳を筆頭とするガソリン値下げ隊が大阪に入り、マスコミを前に府知事選の応援もかねて派手な街頭プロモーションを展開した。

b0087409_1382586.jpg一方、民主党の暫定税率作戦に対する自民党側の対応と反撃は非常に素早く、1/23には「道路特定財源堅持を求める都道府県議会議員総決起大会」を開いて全国から地方議員500名を集め、その会合には民主党からの造反議員3名の出席も用意していた。1/24には全国市長会が都内で会合を開き、揮発油税など道路特定財源の暫定税率維持を求める緊急決議を採択した。また、都道府県知事を含む全国の首長から暫定税率延長に賛成する署名が国交省に提出され、与党側の主張を補強する材料としてマスコミで宣伝された。この間、議論はすぐに整理され、民主党の暫定税率廃止に伴って欠損が生じる地方税収分(9千億円)の財源確保が真の争点として確定されて行く。4月からの予算を危惧する地方の首長や議会の「支持」を得た自民党は勢いづき、民主党から「代替財源」の提案や削減する「国の直轄事業」の明示がない情勢を踏まえて、伊吹文明が議員立法による「つなぎ法案」の強行策に出る。この構想が出たのが1/24、与党内には奇策批判の慎重論もあったが、1/28夜に国会提出、1/30の両議長斡旋と合意の経緯に至る。

b0087409_1384016.jpg先週末(2/2、2/3)の政治番組では、民主党は4月からのガソリン値下げと4月解散の展望は失ったが、引き続き道路特定財源の一般財源化を国家論戦の中心に据え、国民の前で「政官業の癒着」の実態を批判して行くという話に纏まっていた。小沢一郎が新年の年頭会見で「暫定税率争点」を打ち出して僅か一か月、党大会で「ガソリン国会」の闘争勝利を宣言して僅か二週間しか経っていない。民主党が「ガソリン国会」の国対方針を打ち出したとき、朝日新聞は1/18の朝刊で「通常国会―『ガソリン』だけじゃない」の社説を上げ、民主党の短兵急な国会手法を批判している。曰く、「この党にとっての大事とは何なのか、対決と言うばかりで本当にやる気があるのか。そんな疑念を持たれるようなご都合主義を、この国会で繰り返してはならない」。結局、民主党の「ガソリン国会」戦略は国会の開幕から二週間で破綻した。解散に追い込む「約束」もあっけなく反故にされた。小言を言って嗜めた朝日新聞は、「だからオレが言ったじゃないか」と、まさにオーナー気分満喫といったところだろう。

b0087409_13834.jpg何で格差や年金や医療の問題を争点に据えなかったのか。暫定税率に争点を絞ったのか。腑に落ちないと思うところは、例の暫定税率問題での造反議員だが、これは週刊新潮の記事にも書かれていたが、「堅持を求める総決起集会」に出席した造反議員3名を含めて、民主党内で暫定税率廃止に反対する議員が10名ほどいて、これが全て小沢一郎側近の旧自由党の議員たちだという問題である。出来レースではないのか。自作自演ではないのか。そこで行われていることが、参院選で民意が求めた論議や政治ではなく、「対決」が演出された見せかけの芝居であるように私には見え、「ガソリン国会」の不毛無意味について声を上げた。必要なのは、格差と医療と年金の問題についての国会論戦であり、国民の生命と生活を守る社会保障の充実に向けた来年度予算の組み替えである。ところが、そのような民主党批判の声はネットの中では皆無に近く、まるで小泉内閣時代の猪瀬直樹の応援団が復活したかのように、民主党の「ガソリン国会」路線を応援する声ばかりが目立っていた。それは改革派の復活を後押しする効果にも繋がった。

b0087409_1395396.jpgネットの中の異常で奇妙な民主党応援団の大合唱とは別に、政治学者たちは「ガソリン国会」に冷ややかな視線を送っている。北海道大学教授の山口二郎は、2/2号の「週刊東洋経済」記事の中で次のように批判している。「今の民主党を見ていて感じる最大の不満は、国会対策ばかりが目立ち、政策論議の過程がさっぱり見えてこない点である。確かに、政治には権力闘争という側面もあり、国会を主戦場に与党と対決することも必要である。しかし、国民に対しては常に、民主党が政権を取った時に日本社会はどうなるかという具体的なメッセージを伝え続けなければならない。そのメッセージがガソリン値下げだけでは、情けない」。同感だ。私はずっとそう言い続けてきた。「民主党の生活第一路線は民主党支持者の現状認識とぴったり呼応した。その点こそ、民主党支持が底堅いことの理由であろう。これからさらに、そのような支持者の思いに応え、新たな政権構想を打ち出す際には、年金と医療を軸とした社会保障政策を提示し、人々の生活不安を解消することこそ喫緊の急務である」。これも何度もブログで強調しているところと同じである。この指摘において私と山口二郎は全く一致している。

b0087409_139323.jpgもう一人、左派の政治学者の重鎮である一橋大学教授の加藤哲郎は、2/1のHP記事の中で次のように語っている。「私たちも、目先のガソリン料金リッター25円の行方は確かに気になりますが、やはり、年金問題や格差構造の問題で、政治の基本方向をどうすべきかを考えるべきでしょう」(ネチズン・カレッジ)。ブログが繰り返し主張したところと同じである。民主党は二人の政治学者の直言を真摯に受け入れるべきだが、それにしても、山口二郎や加藤哲郎でさえ、このように民主党の「ガソリン国会」戦略を厳しく批判しているのに、本来ならもっと左寄りの立場が明確で、新自由主義に反対する議論を声高に上げているはずのネット左翼たちが、小沢一郎の「ガソリン国会」に引き摺られ、唯々諾々と追従しているのはどういうことだろう。不毛なのは、単に民主党の国会戦略だけでなく、参院選の民意を無視しているネットの言論状況そのものである。人々が政治不信を起こすのは、政党が選挙での公約を忘れて、党利党略のご都合主義で政局を引き回すからではないのか。本来、言論者はそれを監視しなければならないのに、安易に政党の代理人になって「ガソリン国会」を擁護するとはどういうことか。

小沢一郎の意のままに「ガソリン国会」を煽った者たちに猛省を促したい。

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【補遺 - 半年後の政界】

4月解散がなくなったことで、政局の関心はサミット後の「政界再編」の方に移りつつある。福田首相の7月サミット花道説、9月の民主党代表選前の小沢一郎退任説。両方とも政界予想としてリアルな中身を持っている。たしかに、小選挙区制の下では簡単に現在の自民・民主の二大政党制を壊すことはできず、現職議員は党内にとどまって様子見を決め込む傾向になるだろうが、例えば民主党の代表選で本当に小沢一郎は再選されるのか。あるいは、小沢一郎は代表として再登板する意思があるのかどうか、その辺りを考えると、きわめて状況は微妙ではないかという感じがしてならない。

2/3の「サンデープロジェクト」の星浩の解説では、二人とも、党内での求心力が落ちてきて、党内を纏める力が弱まり、互いに「大連立」をカードにして、大連立カードの主導権で党内を牽制することによって、何とか求心力を維持しているという見方が披露された。「床屋政談」のネタとしては一級のものであると言える。今が2月だが、あと半年後の日本の政界はどうなっているだろう。私の予測も、キーワードは「大連立」と「改革新党」で、そして、半年後には政界再編が現実的になっている可能性がきわめて高いように思われる。多くの議員にとってすぐの解散総選挙はなくなったわけで、後は政界再編があるかないかだ。

民主党を見ていると、参院選挙があった昨年の夏から、党の方針や国対がどんどん民意から逸れて行っている。それを軌道修正をしようとせず、小沢一郎が取り仕切るままに、逸れるままに任している。小沢一郎は「生活第一」政策の路線から逸脱を続けている。本当なら、菅直人は小沢一郎の逸脱を批判しなければならないが、執行部の一員として小沢体制を支える側に回っていて、逸脱を逸脱として正しく認めず、それを逸脱でないように無理に粉飾する役割を受け持っている。その矛盾が徐々に露わになっているように見える。次の選挙が始まるとき、あるいは終わったとき、果たして菅直人と小沢一郎は同じ政党にいるだろうか。

8月から9月にかけて政変が起きてもおかしくない。最悪の場合、次のようになる。①麻生太郎の自民党、②東国原英夫の改革新党、③菅直人の旧民主左派新党、④小沢一郎の小沢新党。衆院勢力として、①自民240議席、②改革が110議席、③菅新党が50議席、④小沢党が20議席、④公明が31議席、⑤共産・社民が16議席。民主党から45人が、自民党から65人が改革新党へ合流する。民主からの合流組は前原Gと野田G、自民からは小泉チルドレンと改革派が出て合流。解散後の総選挙では主に自民党と改革新党の二大政党の戦いになり、農村/高齢層に支持基盤を置く自民党と、都市/若年層に支持基盤を置く改革新党の対立構図になる。

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by thessalonike4 | 2008-02-04 23:30 | ガソリン国会と後期高齢者医療
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