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民主党は「野党予算案」を提出せよ - マニフェストに即した国会を
b0087409_1335151.jpg先週に続いてテレビ朝日の「TVタックル」を見ていたら、今週は中央と地方の格差の問題をテーマに取り上げて放送していた。扱い方はイージーで皮相的だが、冒頭に地方の医療の崩壊の問題が出てきて、北海道赤平市の市立病院が医師不足と財政難で病棟閉鎖に追い込まれている現実が映し出されていた。問題の本質や政策の議論を深めずに、自民党の政治家が適当に取り繕いの詭弁を言い、三宅久之が民主党議員の発言を恫喝で押さえ込み、阿川佐和子とビートたけしが茶化しと混ぜっ返しで話題を移す番組手法は相変わらずだが、それでも、地方の医療の窮状が切実さを増していることが多少とも訴えられている内容になっていた。市立赤平病院は、一年前、産婦人科の医師がいなくなったが、一年の間にさらに状況が悪化して、幾つかの診療科に常駐医がいなくなり、内科と外科の診療は午前中だけに制限されていた。



b0087409_134372.jpg暫定税率も重要だろうが、今の日本で最も切迫した問題はこの問題なのではないのか。国会が始まってからも、1/23に東京の清瀬市で95歳の高齢女性が11の病院から受け入れを断られ、搬送された12番目の病院で死亡した事例が報道された。国会でこの事件が取り上げられて論議されたという記憶はない。1/23前後は「ガソリン国会」で与野党が激突している真っ最中だった。毎日新聞の全国調査では、2次救急病院の2割が緊急医療を縮小させており、3次緊急病院の4割が重症患者の診療を拒否するケースが増えているという結果が出ている。原因は医師不足で、「タックル」の議論では、国の医療費を増やすしかないという結論だった。高齢化が進む中で医療費が伸びるのは当然だが、日本は逆に医療予算を削減する新自由主義の路線に舵を切っている。民主党の桜井充が、日本の国民一人当たりの医療費は先進国の中ではきわめて低く、それが安く抑えられているのは、患者が我慢しているせいと医療現場の努力によると説明していた。

b0087409_1341440.jpg何度も取り上げて関係者には恐縮だが、民主党の昨年夏の参院選時のマニフェストには「7つの提言」が掲げられていて、その第1項目が「雇用を守り、格差を正す」であり、第2項目が「医師不足を解消して、安心の医療をつくる」となっている。この第2項目の提言に着目して民主党に投票した地方の有権者も多かっただろう。「7つの提言」のどこを見回しても、「暫定税率を廃止してガソリン価格を安くする」とは書かれていない。当然の話だが、格差問題というのは、単に非正規雇用と賃金低下の貧困問題だけを指すのではない。そこには中央と地方の格差の問題があり、その地域間格差の典型的な問題が医療体制の問題(地方病院の財政難と医師不足)である。昨夏、民主党が地方の農村県で得票して自民党に勝ったのは、格差是正の政策の訴えが有権者の心に響いたからであり、その中身として、特に地域医療の問題は大きかっただろう。敢えて極論すれば、地方は民主党に地方の医療を崩壊から救うことを求めたのであり、そのために一票を入れたのだ。

b0087409_1342611.jpg「ガソリン国会」の政治は、その民意を無視するものではないのか。民主党が国会でやらなくてはならないことは、ガソリン価格を引き下げる前に「医師不足を解消して、安心の医療をつくる」ことである。そのために政府の政策と予算を変えることだ。その公約を実現するために参院の過半数を使い、国政調査権を使うことだ。暫定税率の廃止には道路財源の不安から地方の首長や地方議会の反対があった。だが、「医師不足を解消して、安心の医療をつくる」ために国の医療費予算の増額を求め、財源として特別会計(埋蔵金)を使うのであれば、仮にそれに与党が反対して国会が紛糾したとしても、国民は民主党を応援しただろうし、御用マスコミも民主党の国会戦術を非難することはできなかっただろう。それほど地方の医療の現状は深刻なはずだ。民主党の国会対策次第で、医療予算拡充論を多数派にすることはできたはずで、自民党や公明党の方針を転換させることも可能だっただろう。ガソリンよりも大事な問題があったのであり、それは政権公約に掲げられていた。

b0087409_1343617.jpg民主党は二言目には「マニフェスト、マニフェスト」と言うマニフェスト党である。選挙になれば「マニフェスト」を連呼し、選挙をマニフェスト選挙に染め上げて、政権公約を掲げられない弱小野党から票を奪い取る戦術を展開する。然るに、参院選で政権公約に掲げて支持を受けた「格差拡大の是正」と「年金問題の解決」と「地域医療の再建」の目標はどうなったのだ。選挙が終わって二つの国会があった。昨年の臨時国会と新年の通常国会。臨時国会で民主党が設定した争点と目標は「新テロ特措法の廃案」であり、通常国会の争点と目標は「暫定税率廃止とガソリン値下げ」だった。どちらも参院選で有権者が求めた政治目標ではない。国会で議論を要求した政治課題ではない。小沢一郎が勝手に掲げたものである。小沢一郎は、新テロ特措法で解散に追い込むと言い、ガソリン値下げで解散に追い込むと言い、結局、二つとも失敗して解散は口先だけの空手形になった。参院で過半数を取っているのに、無策なまま、年内解散なしで政治の主導権を自公に握られ、何の政策変更も実現できずに立ち往生している。

b0087409_1345089.jpg民主党は参議院を握っているのである。国権の半分を押さえているのだ。このまま解散もなく、格差是正もできず、地域医療にも手を打てないまま無駄に時間を潰したら、国民が選挙で民主党に投票した意味は全くなくなる。民主党にはネクストキャビネットという制度もある。そして税制改正大綱まで発表しているのだから、民主党の独自の「平成20年度予算案」を作成して国民の前に提出してみればいい。昨年の秋頃はそれを出すという話も囁かれていた。政府予算案とどこがどう違うのか、一望で比較できるようにして国民の前に提示すればいい。政府予算案と優劣を競い合い、その上で、政府予算案の個別施策を委員会で取り上げて、問題を指摘して修正を迫ればよいのである。政権担当能力とは、まさに予算立案能力のことを言うのだろう。民主党が政権担当能力の絶倫を証明したいのなら、まずは来年度予算の野党案を作成することである。予算の立案も満足にできない不能者が、どれほど口先で政権担当能力のサイズや固さを誇示しても仕方あるまい。

b0087409_135448.jpg政府予算案に対抗する野党予算案を出せ。民主党案を軸に他野党と協議して合意すればいい。その予算案の中に、マニフェストで公約した「格差是正」と「地域医療の再建」と「年金問題の解決」の中身を織り込めばいい。具体的な行政施策と予算金額を入れて、政府案とはこれほど違うのだと訴えて、国民に評価を受ければいい。セックスアピールすればいい。民主党は参議院では与党なのだから、そして常に行政権力の奪取と行政能力の顕示を欲望してエレクトしている責任政党なのだから、それくらいはできて当然なのだ。それからまた、民主党は二言目には「官僚が資料を隠して見せないから」と言って言い訳するが、参院選後に公言していた「国政調査権」の発動はどうなったのだ。憲法62条の条文をそのまま読めば、民主党が国政において官僚から入手できない行政資料などあり得ない。情報を秘匿している局長や課長がいれば、委員会の証人喚問の席に召喚すればよいだけではないか。予算立案に必要な行政データは全て国政調査権の発動で入手せよ。国民はそれを妨害しない。

b0087409_1351643.jpg国政調査権の発動こそ、まさに民主党が「政官業の癒着のトライアングル」と格闘するときの切り札であり、その見せ場を国民の前に作ることこそ、菅直人やウォルフレンが昔から言ってきた民主党の真骨頂というものだろう。なぜやらないのか。昨年の防衛疑惑の追及でさえ、民主党が参議院で伝家の宝刀の国政調査権を発動したと思われる場面は一度もなかった。日本の国会を見ていると、予算委員会の質疑がテレビで映されて、そこが国会の中で最もハイライトなスポットだということは子供の頃から理解できたが、昔から素朴に疑問だったのは、予算委員会で議論している内容が予算とは関係のない問題が多いことである。その時々の最もホットな政治の争点が予算委員会で議論になる。それはそれで国会の伝統として悪くないだろうが、そうなると、国会の予算委員会は名ばかりで、年末に官僚が編成した予算案が無傷無条件で通過するだけの飾りの会議になってしまう。なぜ野党は対案としての「野党予算案」を国会に提出して議論しないのかと、子供の頃からそう思ってきた。野党が参院を制している現状であればなおさらだ。

「つなぎ法案」は奇策だと言われたが、「ガソリン国会」も国民の目線から見れば奇策である。民主党は奇策を弄せず、堂々と対案としての野党予算案を出して、その中で格差是正と医療再建の中身を国会で打ち出すべきだ。
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【悪魔のシナリオ - 2008年夏の政界再編劇】

フェーズ1
小沢一郎と福田首相が水面下で大連立の政局を画策。その噂がじわじわと永田町に漏れて染み出す。サミットが終わり、民主党の代表選直前の夏に小沢一郎が動く。民主党内は大連立に反発しながら幾つかのグループに分かれる。小沢一郎が旧自由党議員を引き連れて民主党を出る。小沢新党と福田自民党との連立が発表される。自民党の中も、この機に大連立に賛成組(農村系)と反対組(改革派)で割れる。

フェーズ2
先に改革新党が立ち上がる。党首は宮崎県知事の東国原英夫。そこへ民主の前原Gと自民の改革派が合流する。民主党は3つに分かれて分解する。①改革新党に合流する新自由主義者の前原G、②自民党と連立を組む小沢一郎の新党グループ、③残された党内左派の菅グループ。衆院議席数は、①が45、②が20、③が50。朝日新聞は③を見限って①につく。連合は③につく。民主党を支えた朝日と連合の二大基盤が袂を分かつ。

フェーズ3
小沢一郎は自民党と合同を模索するが、自民党内部の激震が激しく、福田首相は事態を収拾できずに政権から身を引く。自民党で真夏の総裁選が始まり、麻生太郎が三度目の正直で総裁の座を手中にする。対立候補は、谷垣禎一、中川昭一、石原伸晃の3人。改革新党に合流するのは小泉チルドレンと「プロジェクト日本復活」のメンバーで、若手中心に65人。党分裂の波及を最小限に止める候補として成長政策(=新自由主義)の麻生太郎が人気を博し票を取る。

フェーズ4
改革新党が衆院解散を要求。東国原英夫と総選挙後の憲法改正発議を密約した自民党新総裁の麻生太郎は衆議院を解散、総選挙へ。自民党と改革新党の二党で小選挙区の票を奪い合う激戦に。改革新党の幹事長は松沢成文、政調会長は竹中平蔵、副代表は江田憲司と北川正恭、参院幹事長は山本一太。小沢党の選挙区議員は自民党に合流。選挙の結果、東国原英夫の改革党が第一党で政権を獲得。東国原英夫が首相、前原誠司が外相、小池百合子が官房長官、大田弘子が蔵相。

フェーズ5
解散前の密約に従って、改革党と自民党が両院で憲法改正発議。尚、この衆院総選挙で鳩山由紀夫は落選して政界を引退、小沢一郎、羽田孜、渡部恒三も選挙後に相次いで政界引退を表明。
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by thessalonike4 | 2008-02-05 23:30 | ガソリン国会と後期高齢者医療
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