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by thessalonike4
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「不要な道路」論の陥穽 - 四全総における国土均等発展の思想
b0087409_200618.jpg田中美佐子はいい女で、ふるいつきたくなるほどいい女で、48歳の今でもいい女をしていると思うけれど、その魅力の一つに、どことなく内面に影を感じさせるところがあった。その内面の影は、特に、彼女が自分の故郷について語るときに、表情の中に深さと濃さを漂わせていたように私には思えた。最近のNHKのニュースの中で、彼女の故郷から産科医がいなくなり、妊娠した女性は家族と遠く離れて、船で海を渡った病棟に入院してお産をしなければならなくなった事情が報道されていた。故郷を語るとき、微かに影が深くなったように見えたのは、それは私だけの思い込みの錯覚かも知れない。しかし、きっと本当はこうなのだ。影の深さを感じた者と感じなかった者がいるのだ。東京のような大都会で生まれ育って、何もかも日本で最高の社会環境が便利に与えられていた者ならば、田中美佐子の表情に過ぎった一瞬の影の深さに気づくことはないのだ。



b0087409_16341964.jpg子供のころ、家で新聞のテレビ欄を見ていて、そこにはなぜか近隣他県のテレビ局の番組案内が載っていた。それは地方紙読者である一般県民に必要な情報とは思えなかったが、テレビの好きな子供の私はその文字情報を食い入るように追いかけ、何曜日の何時に誰が出るどんな番組があるかまで頭に入ってしまい、見たこともないドラマやクイズ番組や歌謡曲番組に想像を逞しく膨らませていた。隣の県は3局も4局も民放のテレビ局があって、そこに住んでいる人はそれを毎日見て楽しめるのに、どうしてうちの県は2局だけしか民放がないのだろう。それが「採算の合わない貧乏県」というものだろうかと、子供心にやるせなく悲しい思いをしたものだった。先週のフジテレビ「報道2001」に東国原英夫が宮崎から生出演で出て、スタジオの猪瀬直樹と道路整備について議論していた。猪瀬直樹は道路公団民営化推進委員だったから、全国の道路について全て頭の中に情報が入っている。

b0087409_16342836.jpg猪瀬直樹が言うには、大分県と宮崎県を結ぶ高速道路は作る必要があるが、熊本県と宮崎県を結ぶ道路は要らないというものだった。東国原英夫は、「九州は広いから周囲を回る道路だけでなく真ん中を横に結ぶ道路が必要なんですよ」と言っていた。現在の状況と常識で考えれば、猪瀬直樹の主張の方が正しいと思うのは当然だろう。だが、田舎で生まれ育った私の感覚で言えば、延岡と熊本を結ぶ道路が不採算で作れないと言われるくらいなら、四国で安芸まで伸びる道路とか、中村と宇和島を繋ぐ道路などというのは、絶対に永久に作ってもらえないだろうと思うし、その思いは、子供の頃に新聞のテレビ欄を見つめながら感じた悲しい不条理の気分へ私を連れ運ぶもので、したがって、決して簡単には猪瀬直樹や古舘伊知郎や岡田克也の正論や常識を自分の正論や常識としては受け入れられないのである。道路の採算性って、国道は通行車両から料金など取ってないし、どこが赤字だの黒字だの言ってないではないか。

b0087409_16344683.jpg米国のハイウェーはそうだ。日本の国道と同じだ。国が建設する道路や橋で採算云々を言うのは本当はおかしな話なのではないのか。大学受験のとき、海を越えて本州へ渡ったが、帰りに瀬戸内海で霧が出て、宇野港で2時間ほど足止めを食らったことがあった。当時はまだ瀬戸大橋がなく、計画段階で、3本にするか1本にするか揉めている頃で、宇野と高松を連絡船が結んでいた。航路の途中に目印になる三角形の形をした大槌島があり、それを眺めながら船内で売っている讃岐うどんを食べるのが乗客の楽しみだった。天気が好ければ快適な瀬戸内の船旅に違いなかったが、足止めのときは、宇野港の埠頭のコンクリートの上に国鉄がゴザを敷いて、そこに宇野線の電車を降りた大量の乗客が座らされていた。四国四県に帰る人たちである。受験の時期だから、ほぼ真冬の寒い季節のことだった。船が高松港に着くと、そこではいつも桟橋からの通路を乗客たちが走った。桟橋の先の高松駅のホームに停車している特急や急行の自由席を確保するためだった。

b0087409_16343748.jpg四国には新幹線がなく(今でもないが)、高松から先へ特急や急行で行くのに、当時は3時間から4時間かかり、その間を車内で立ったままというのは大変なことだった。だから乗客たちは桟橋からホームまで一目散で駆けっこしていたのである。本州四国連絡橋公団の負債がどうのこうのと言うけれど、そう言う前に、田舎のことを知らない都会の人間は、屋根もない埠頭のコンクリートのゴザの上に何時間も座らされたり、桟橋からホームまで全力疾走させられていた四国の乗客たちの苦労のことを一度は想像してみるべきだ。今は道路が問題になっている。不採算の道路は作る必要はないと言われている。「要らない道路」だと言われている。あと5年経ったらどうなっているだろう。国の財政がさらに厳しくなり、中央と地方の格差が開いた5年後に、テレビに出てくるキャスターや評論家や政治家は何と言っているだろう。田舎で生まれて育った私には薄々わかる。採算の取れない病院は要らないと当然のように言い、「要らない病院」を放置するなとか、「要らない学校」を整理しろの大合唱になっているだろう。

b0087409_16345467.jpg人が住んで生活しているところで「要らない病院」なんてあるのか。「要らない学校」なんてあるのか。同じだろう。「要らない道路」なんてあるのか。私は暫定税率の撤廃には賛成である。道路特定財源の廃止と一般財源化にも賛成である。国交省の10年間59兆円の道路中期整備計画の撤回にも賛成である。だが、全国に1万4千キロ高速道路を敷設すると計画した20年前1987年の四全総の考え方には基本的に賛成である。なぜ賛成かと言うと、ここには今の新自由主義に毒された日本人一般が忘れた福祉国家の思想があるからであり、それはすなわち不均等のない全国均等の国土発展という考え方である。市場原理主義で国家を運営すれば、そこには必ず不均等発展が生じ、資本が集中的に投下されるところと投下されないところの格差が生じる。地域間の社会資本整備に格差が生じ、その結果、発展するところはますます発展し、人口が集中し、影になったところはさらには寂れて人口が減って行く。四全総には日本の国土の均等発展の思想がある。これは「効率と採算」を言い「選択と集中」を言う新自由主義とは根本から対立する政策原理だ。

b0087409_1635214.jpg四全総が目指したのは、まず日本の地方の隅々まで高速道路のネットワークを敷き、インフラの整備条件で大都市や先行開発地域との格差を埋め、経済活動の基盤を全国均一にすることだった。私はこの考え方が間違っているとは思わない。「いくら地方自治体が企業を誘致しようと努力しても、高速道路もない僻地に企業は進出してくれませんよ」。この冬柴鉄三の2/7の国会答弁は正論だ。これは、例の地デジ放送の基地局整備の話と同じだろう。離島をサービスエリアとして組み込んだ場合の採算性という問題が議論され、折からの新自由主義の席巻の空気の中で、日本の地デジ放送のハプンとラウンチは大幅に遅滞して不恰好なものになった。公共放送であるNHKの電波は、日本のどの地域どの離島にも届いている。利尻島や礼文島に住む人間が特別に割増の料金を払っているということはないはずだ。新聞だって同じだろう。波照間島だから沖縄タイムスの料金が他の倍ということはないだろう。奥尻島だとコストがかさむから北海道新聞の料金も倍ということはあるまい。コストは儲かるところで吸収して全体を経営しているはずだ。公共サービスとはそういうものである。

b0087409_16351187.jpgコストは不均等でもサービスは均等にする。それが公共サービスの考え方だ。全国全土が均衡のとれた発展をするように行政する。資本や人口の一極集中を防ぐ。社会環境の過密化と過疎化を未然に防止する。そのことによって人と自然にやさしい国と社会を作る。それが福祉国家の基本思想である。今の日本人はその理念を忘れて道路論議をしている。国が整備する事業に私企業の採算の論理を持ち込んで当然のように議論している。民主党と朝日新聞と古舘伊知郎の道路不要論に声援を送っているネット左翼は、あまりに新自由主義の毒に脳幹を犯されてやしないか。利尻島の住民でも札幌市の住民でも北海道電力の料金は同じはずだ。供給にかかっているコストは全然違う。高速道路も同じではないのか。同じではないと言うのなら、一般国道だって整備にコストがかかっているのは同じなのだから、通行車両から料金を取り、国道1号線や16号線や246号線は安く、国道238号線や242号線はその百倍徴収するべきだろう。今日の朝日新聞で、自民党の二階俊博が「地方は道路をずっと我慢してきた」と言っているが、実際にそのとおりだ。新幹線も高速道路も後回しにされてきたのだ。

b0087409_16352041.jpg後回しにされ、時間だけが経ち、気がついたら日本が借金大国になり、地方に道路を整備する金はないと言われ、それに対して反論を返すこともできなくなっていたのである。権利に格差がつけられている。私は、今の高速道路の問題は、過去の国鉄の不採算路線の廃止の問題と本質的に同じなのではないかと見ている。そしてこの問題は、将来の国立大学や国立病院や公立病院の運命を先取りするものに違いない。地方の事業は採算に合わないから切り捨てろという新自由主義の論理であり、地方が赤字になるのは自己責任であり、地方に生まれた人間は運が悪いのであり、さっさと田舎を捨てて東京へ出て来るか、ウルトラCの新事業でも開発して成功してみろという冷酷な言い分に他ならない。今から考えれば、本当は、国鉄の赤字線も廃止せずに営業を続けるべきではなかったのか。鉄道路線を廃止すると沿線住民は学校や病院に通えなくなる。最初はバスに代替して市町村が面倒を見たが、それも赤字だということで廃止に追い込まれた。そうなると住民は土地を捨てて都市へ移り住まざるを得なくなる。国鉄の赤字問題も、ひょっとしたら、国が負担を負うべき問題だったかも知れない。電気やガスと同じ問題だったかも知れない。

b0087409_16353066.jpg民主党は高速道路の無料化を言っている。高速道路を無料化するという発想が出るのなら、公共交通機関である電車の運賃を無料にするという考え方もあったのかも知れない。現実に、東京都では高齢者のバス料金が無料になってもいた。さて、批判ばかりでなく提案を言おう。ブログ左翼には鼻で笑ってもらって結構だが、私が総理大臣になったら、東シナ海ガス田開発と米国債売却で800兆円の資産を作り、現在の国の借金を一瞬でゼロにする。そして特別会計(埋蔵金)の中から20兆円を道路整備予算に当て、四全総が計画した1万4千キロの残りを5年間で完成させる。土地も安くなっているし、過疎地で障害物もないから、用地取得も道路工事もあっと言う間だろう。自公政権の計画の三分の一の費用と半分の工期で作ってみせる。日本の道路の問題は、誰かが言っているように無駄に時間とコストをかけることだ。日本の道路土木にイノベーションの要素が皆無なのは何故なのか。私の内閣では国交相は田中康夫を任命している。大臣に道路の費用と工期の革命をやってもらう。日本の全国の国立大学には工学部があり、そこには土木工学科がある。土木工学の研究者たちの尻を叩き、技術競争させ、原価低減と工期短縮の目標を必達させる。

私が総理大臣になったら、隠岐島の島前にも島後にも立派な総合病院を建てて、産婦人科と小児科を置いて、住民が安心して子供を産めるようにする。島前三島は橋を架けて繋ぐ。ブログで何度も言っていることだが、英国がサッチャーの新自由主義で立ち直ったというのは嘘だ。新自由主義者の宣伝用の神話である。本当は北海油田の採掘に成功して産油国になったことが決定的な英国復活の要因だった。騙されるんじゃない。

b0087409_16354458.jpg


【今週の1曲】

五輪真弓の「」を探したのだけれど、YouTubeはおろかMIDIもなかった。
で、かわりにこのインストロメンタルの名曲を。
本人のライブはなかったが、コピーのこの人、ギター抜群に上手いね。
何者?



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by thessalonike4 | 2008-02-09 23:30 | ガソリン国会と後期高齢者医療
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