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イージス艦はなぜ人命救助行動しなかったのか - 船員法13条
b0087409_11201331.jpg今回の房総半島沖でのイージス艦の事故について気になることがあり、マスコミでもネットでもあまり触れられていないが、事故を起こしたイージス艦の艦長と乗組員は、なぜすぐに漁船の乗組員の救助活動をしなかったのだろう。新聞記事を読むと、事故が起きたのは19日の午前4時5分頃で、約20分後の午前4時23分にイージス艦「あたご」から海上保安本部に連絡が入っている。具体的に海上保安本部にどのような情報を入れたのかは不明だが、事故を察知した後で、現場の海上を目視して、漁船「清徳丸」の被害状況は一目瞭然だったはずだし、即座に人命救助に動いて当然だったのではないか。イージス艦が人命救助に動いた形跡は見られない。マスコミは、事故原因やその後の防衛省の報告と対応の遅れを問題にして批判しているが、私にはこの問題が最も大きく引っかかる。



b0087409_11202443.jpg衝突された漁船の船員が海上に投げ出されたことは、イージス艦の当事者でなくても誰が考えても明らかであり、それを救助する義務があるのは当然のことである。何より先に、緊急に、人命救助の手を尽くすべきではなかったのか。その義務を定めた法律はないか調べてみた。すると、海上交通する船舶の船員の行動を網羅的に規定した基本法として船員法があり、その船員法の第13条に次のような規定があった。「船長は、船舶が衝突したときは、互に人命及び船舶の救助に必要な手段を尽し、且つ船舶の名称、所有者、船籍港、発航港及び到達港を告げなければならない」。第14条にも次のような規定がある。「船長は、他の船舶又は航空機の遭難を知つたときは、人命の救助に必要な手段を尽さなければならない」。このイージス艦の艦長は人命の救助に必要な手段を尽くしたのだろうか。

b0087409_11203360.jpg船員法が拘束する「船員」の範囲は、第1条の規定に「日本船舶又は日本船舶以外の国土交通省令の定める船舶に乗り組む船長及び海員並びに予備船員をいう」とあり、当然、海上自衛隊の艦船の艦長と乗組員も含まれる。例外ではない。新聞報道では、イージス艦の過失について、衝突回避義務違反が問題視されていて、これは海上衝突予防法の第7条、第8条、及び第15条に関わるものだが、この法律には罰則規定の明記がない。関連すると思われる海上交通安全法を見たが、道路交通法のような厳しい罰則を規定した条規がない。今後、海上保安庁が事故を捜査して原因を調べ、海難審判庁で審理と審決があるのだろうが、上の船員法の場合は、第124条で「船長が第13条の規定に違反して人命及び船舶の救助に必要な手段を尽くさなかつたときは、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する」とある。

b0087409_11204144.jpgマスコミの報道が「船員法」を無視しているのは、艦長の不作為の責任と重罰の情報を国民に知らせないように操作しているためではないだろうか。事故の原因についても、今回の場合はイージス艦の側に過失責任があるのは明らかで、ついでに法律の条文を紹介すると、海上衝突予防法の第15条に「二隻の動力船が互いに進路を横切る場合において衝突するおそれがあるときは、他の動力船を右げん側に見る動力船は、当該他の動力船の進路を避けなければならない」とある。イージス艦「あたご」と小型漁船「清徳丸」の位置関係は、「あたご」から見て「清徳丸」が右舷の方向にあった。「清徳丸」から見て「あたご」は左舷になる。回避行動の義務があるのはイージス艦「あたご」の方であり、「清徳丸」にはその義務はない。

b0087409_11205017.jpg信号機のない海上交通で船舶同士がクロスする場合の基本が第15条に定められているのであり、道路交通法に置き換えて単純化すれば、房総沖の海の交差点において、イージス艦「あたご」の前の信号機は赤の表示であり、漁船「清徳丸」の信号機は青の表示だったということになる。昨夜のNHKの7時のニュースでは、正体不明な「海難事故の専門家」なる者が登場し、意味不明な事故解説をしていたが、その「専門家」の(詭)弁では、イージス艦と漁船が正面から衝突したように言い、双方に責任があるという言い方をしていた。正面衝突の場合は、海上衝突予防法第14条の規定で、両方の船が右に舵を切って衝突を避けなければならない。「清徳丸は右に舵を切っていたが、イージス艦は舵を切らずに直進している」として、その違法性を指摘していた。この解説は、「専門家」の所見としてはかなり大きな勘違いではないか。全く納得できない。

b0087409_11205927.jpg海上衝突予防法でこの事故の問題点を指摘するなら、適用されるのは、第14条(行会い船)ではなく第15条(横切り船)である。「清徳丸」が右に舵を切ったのは、まさかと思っていた衝突が不可避のものになり、最後の最後にイージス艦の舳先から逃れようとしたものだ。海上交通的には明らかな「あたご」側の違法行為であり、大型トラックが赤信号を無視して交差点に突っ込んできて、交差点中央で小型車に激突したのと等しい。だが、それも重大な過失であり犯罪だが、それ以上に許せないのは、血だらけになっている小型車の乗員の人命救助をしようとせず、そのまま放ったらかしにしたことだ。こちらの責任は単なる過失では済まない。しかも事故を起こした大型トラックの運転手は国民を守るべき自衛隊員なのである。国民の生命を守るのが任務の自衛隊員が、目の前の海に落ちた被害漁船乗組員の救助もしようとせず、こんなことが許されるのか。

b0087409_1121820.jpg防衛省やマスコミが、この事故について、情報伝達の遅れだとか自衛隊員の気の緩みの方にばかり話題を向けるのは、最も触れられたくない「人命救助の遺棄と不作為」の問題に国民の目が向かうのを逸らすのが目的なのではないのかと私は疑っている。真相究明はこれからだが、イージス艦の連中は、状況を察知しながら救助をせず、海上保安本部への連絡も遅らせ、わざと漁船の二人を見殺しにしたのではないか。二人は行方不明で、まだ死亡は確定されてないが、敢えて言えば、単なる業務上過失致死ではなく、未必の故意による不作為の殺人罪が適用されるような、そういう種類の重大な犯罪事件ではないのか。冬の海に投げ出されば人は死ぬ。自衛隊の艦船と隊員には海難救助の装備もあり、日頃から実戦に備えて味方の海難救助の訓練を受けているはずだ。海に落ちた人間を救う技能と装備を持っているはずだ。なぜ助けなかったのか。なぜ見殺しにしたのか。

考えられる答えは一つ。事故の過失を被害者に証言されたくなかったからだ。生きて証言されれば、イージス艦が航行において左右前方を全く注意していなかった事実が明らかになる。だから二人をわざと海の中に放置して死なせたのだ。野党は国会で、イージス艦の安全航行義務違反だけでなく、人命救助責任の遺棄について、艦長と乗組員を国会に証人喚問して厳しく追及して欲しい。海難審判庁は、この事件の審決で、海上事故における業務上過失致死の最高刑を「あたご」の艦長に下して欲しい。
b0087409_11351878.jpg

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by thessalonike4 | 2008-02-20 23:30 | イージス艦衝突事故
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