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by thessalonike4
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チベット暴動の政治 - 五つの視点からチベット情勢を考察する
b0087409_132323.jpg第一に、チベットの暴動は暴動ではなく民衆の抵抗あるいは蜂起と呼ぶべきだという主張があるが、この議論は果たして認識として当を得ているだろうか。テレビのニュースの映像を見ていると、ラサ市内でチベット人が中国人の商店を集団で襲撃して、投石や放火の破壊行為を行っている。罪のない民間人の住宅店舗を襲撃する行為は、それが日頃の民族的抑圧に対する怨嗟と憤懣の爆発であるという事情があるにせよ、やはり抵抗や蜂起の言葉で事態を説得することを困難にする。同情はできても支持はできない。それを蜂起だとか抵抗の言葉で正当化するのなら、まずは政府や共産党や警察の庁舎を標的にするべきで、襲撃する対象は権力を持った自治区の要人でなければならない。さらに、今回は亡命自治政府のダライ・ラマ自身がチベット人に対して自制を求めている。抵抗運動を鼓舞する発言や声明を発していない。これだけの材料から考えても、暴動という言葉が事態の説明において適当と思われる。



b0087409_13231733.jpg第二に、この事件はどちらが仕掛けて発生したのかという問題がある。3/23朝のフジテレビの政治番組に出演したペマ・ギャルポは、3/10に静穏にデモ行進をしていたチベット僧の集団に対して中国側が武力挑発を仕掛けてきたのだと事件の発端を説明していた。3/14の大暴動に発展する最初の衝突が3/10に起きた事実は確実だが、果たして中国側が仕掛けた陰謀であるという主張は、状況の説明として説得力があるだろうか。現時点で真相は不明である。だが、政治的動機という観点から考えたとき、中国側が先に挑発を仕掛けたと考えるのは無理がある。3/14は台湾総統選の9日前であり、北京五輪の5ヶ月前である。中国政府にとってはこの種の騒動が最も起きて欲しくない時期であり、中国政府と北京五輪を撹乱させ、反中国の国際世論を高揚させ、共産党支配体制に動揺を与えようとする側にとっては最もベストな時機である。中国政府の側には動機は薄い。チベット人に挑発を仕掛けるメリットは何もない。

b0087409_13232827.jpg第三に、私は今回の暴動は自然発生的に起きたものではなく、計画的に惹き起こされたものではないかと疑っている。その政治の意図と目的は上に述べたとおりで、台湾総統選挙に影響を与えるためであり、国際世論を喚起して北京五輪開催をぐらつかせ、さらに、五輪開催までに中国国内の他地域の少数民族の反乱へと連鎖させようとしたものではないか。他地域の少数民族とは具体的には新疆ウィグル自治区のウィグル族イスラム教徒である。仮にそうした陰謀があったとして、その陰謀が悪いと私は言っているわけではない。陰謀のない政治はない。中華人民共和国から分離独立をめざすチベット人の立場において、この時機を狙って戦略化された作戦として有効な政治であると言えるだろう。だが、これが政治だとすれば、政治は結果が全てだが、今度の動きは結果的に成功を収めていない。まず、3/22の台湾総統選で民進党候補の謝長廷を当選させることができなかった。投票結果は予想外の大差で国民党候補の馬英九の勝利に出た。

b0087409_13234275.jpgチベット暴動とその犠牲者の報道は、台湾総統選挙には影響しなかった。台湾人の方が政治的に冷静で一枚上だったと言えるのではないか。台湾総統選挙の結果は、今度はこれが一つの政治的モメントとなって、チベット暴動を論じる国際世論に影響を与えるだろう。ハーフウェイで模様眺めをしている人間は何人もいる。例えば、米大統領選で候補者争いをしているオバマとクリントンもそうだろう。簡単な中国批判のコメントは発しているが、社交辞令程度で本格的なものではなく、情勢に注目しながら自分の大統領選に最良の結果を導く位置取りを踏んでいる。私は香港の動静に注目したが、大きな抗議行動が起きたり、市民が警官隊と衝突するなどという騒動は見られなかった。国連の動きもきわめて鈍い。安保理常任理事国である中国の立場が大きく、さらにロシアが中国を支持している現実があって、国連も身動きがとれないのは分かるが、それにしても国連が異常なほど静かで、米国と欧州諸国がこの問題に大きな関心を持ってない状況が反映している。

b0087409_13235363.jpg第四に、チベットの周辺の諸国が今度の暴動でチベット側を支持する姿勢を明らかにしていない。この点がパレスチナ問題とチベット問題を分けて考えるべき重要な契機ではないかと思われる。チベット周辺国、特に仏教徒が多く居住する諸国として、ネパール、ブータン、モンゴル、ビルマ、タイなどが挙げられるが、これらの諸国がチベット民衆とダライ・ラマを統一して支持する態度を国際社会に対して示していない。これら諸国は小国で、経済大国で軍事大国である中国との関係や脅威があるからと言えばそれで終わりだが、ダライ・ラマを保護しているインド政府も公式に中国批判をしていない。今後、チベットの独立派が国際社会の中で地位を築き発言力を強めようとするなら、英国や米国と繋がって西側に存在をアピールするのではなく、むしろ周辺地域の仏教諸国と連携を強める必要があるのではないか。これら諸国は小国で政情も不安定な国が多いが、非暴力主義を掲げてチベット問題で一つのブロックを形成し、国際社会の中で中国とチベットの間に入る構図ができることが望ましい。

b0087409_1324438.jpg第五に、日本国内においてチベット問題を論じる言論環境の困難さという問題がある。日本の世論は、特にネットの中のチベット問題に関する世論は、ほとんど反中反共の極端なイデオロギーに塗り潰されたものであり、ファナティックな右翼の宣伝扇動の言説ばかりで充満している。彼らの動機と意図は徹底的な中国攻撃であり、チベット問題はギョーザ問題と同じく単なるイデオロギー攻撃の材料に過ぎない。中国の体制崩壊と共産主義の撲滅が右翼の思想信条であり、チベットの人権問題などは口実に過ぎず、お誂え向きの手段として利用しているだけだ。もし仮に、中国が共産党ではなく国民党が支配する自由主義の国家であれば、日本の右翼はチベット独立など口端にもしないだろうし、国民党の中国政府がチベット独立運動を弾圧しても、それに対して無関心と不干渉を貫徹することだろう。小泉純一郎の靖国参拝以降、日本の右翼は増長して勢いづき、福田政権の対中友好政策が我慢ならないのであり、小泉政権時代の反中反共ファナティシズムの思想環境に日本を引き戻したいのだ。

b0087409_13241475.jpg日本のネット世論は反中反共のバイアスが強烈で、右翼の攻勢に押されて、右翼だけでなく左翼までもが、中国攻撃の戦列にBLOG一般の論調をアラインさせようと必死だが、例えば、日本にはチベットを支援する本格的な市民組織や人道団体がない。パレスチナについてはある。中国政府のチベットに対する弾圧と虐殺は事実であり、長期にわたる人権蹂躙に対して日本の政府や国民も何らかの対応をすべきだが、国内のネット世論が反共反中の右翼ファナティシズム一辺倒に染め上げられ、国内のあらゆる言説が右翼のプロパガンダにとって都合のよいものかどうかの立場で分けられ、右翼に利用されたり、右翼に攻撃される言論環境の下では、ネットの中でチベット問題を冷静に議論するのは難しい。恐らく、ネットの中でこれほど熱っぽくチベット問題を激論している国は日本以外にはないのだ。韓国のネット社会ではもっと静かな反応だろう。客観的に世界を見たとき、ここまで甚だしい反中反共イデオロギーが思想空間に横溢している国は日本だけだ。米国のネオコンと日本の右翼だけだろう。米国のネオコンは影を潜めつつある。

b0087409_14173972.jpg日本は依然として右翼の勢力が強くなる一方で、右翼の反中反共イデオロギーへの大衆の支持が、この国の新自由主義の政治を変革する上での障害になっている。その日本を中国は見限った感がある。3/22(土)のNHKで「坂の上の雲」の前宣伝番組を見ていたら、司馬遼太郎が昭和の日本について「国家も国民も気が狂った」と言っていたが、平成の日本も全く同じだ。『ゴーマニズム宣言』が平成日本の教育勅語。若い日本人は全巻暗記しているのではないか。最後に、第三の視点の問題に補足をする。私は今回の暴動が自然発生的に生じたものではなく、意図的に仕掛けられた政治だと見る立場であり、その政治の意志主体は中国政府ではなくチベット側ではないかと考えているが、しかし、その首謀者がダライ・ラマ14世であるとは思わない。真相は不明だが、チベット国内の司令塔か、亡命自治政府内の別派の動きではないかと推測している。だからこそ、ダライ・ラマ14世の口から例の「退位」の発言が出たのではないか。あれを政治的ポーズだとは思えない。

中国政府が、暴動をダライ・ラマの策謀だと決めつけて、国務院総理の要職にある温家宝にそれを発表させたのは、それらのチベット側の内部情報を完全に収集分析して、亡命自治政府の強硬派と穏健派の対立に狙いを据え、そこにさらに亀裂を入れるために政治的に効果のある一撃を放ったのではないか。
b0087409_13242760.jpg

【掟破りの平日の1曲】

そろそろ春本番、カーラジオをつけたら流れていた。
無性にもう一度聞きたくなって、ここぞとブログでご紹介。
この曲が流行ったのは1983年。とても懐かしい。
自分も、周囲も、世の中も、この曲のように、飛び跳ねるように、みんな若くて元気だったね。



Girls Just Wanna' Have Fun ...   Yes Me Too !

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by thessalonike4 | 2008-03-24 23:30 | チベット暴動と北京五輪
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