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by thessalonike4
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欧州における北京五輪妨害活動 - 人権の論理の濫用と逸脱
b0087409_1247454.jpg昨夜(4/7)のテレビの報道番組では、ロンドンとパリで聖火リレーが妨害されるニュースがトップで放送されていた。沿道から市民が飛び出して聖火ランナーに襲いかかり、聖火を奪おうとして伴走する警備の警官に取り押さえられる場面が何度も放映された。チベットを支援して中国政府を非難する市民の過激な抗議行動と思われるが、真相や背景はよくわからない。日本で同じ事件が起きた場合には、テレビカメラが公務執行妨害の現行犯にわざわざ動機となる政治的メッセージを発信させるようなサービスはしないと思うが、英国のカメラはそれをやっていた。マラソンのラドクリフが出てきて、妨害行為を非難するコメントを発していたのが救いだった。五輪の聖火リレーが奇妙な政治イベントになり、世界が注目するトップニュースとして報道されている。



b0087409_12471466.jpg人権の名の下に五輪が政治に利用されている。当事者のダライ・ラマ14世でさえ、北京五輪に対する一切の妨害行為をやめるように訴えているのに、欧州でこのような愚行を見るのは残念でならない。政治とスポーツを峻別する倫理の手本を世界に示すことはできないのだろうか。近代五輪はクーベルタンの提唱で始まり、歴代のIOC会長も欧州出身者が並んでいる。五輪に占める欧州の存在は大きく、欧州は五輪の成功に大きな責任を負う立場にあるはずだ。現状を見るかぎり、欧州が北京五輪に正しく責任を負っているとは思えない。無責任な態度に見える。日本の右翼の世論で、「だから2001年に中国を開催地に選ぶべきではなかった」という声が上がっているが、これを逆にして言えば、長い熟慮と選考の上で北京を開催地として正式決定したのだから、世界は責任を持って北京五輪を成功させなければならないという論理になる。無責任は許されない。

b0087409_12472459.jpg中国に民族問題があり、また人権問題があるのは周知の事実であり、それは2001年も同じだった。欧州の首脳や欧州の人権団体は、ダライラマ14世の真摯なメッセージに応じて、政治と五輪を峻別し、チベット問題はチベット問題として中国を批判し、五輪は五輪として独立させて開催の成功を支援する姿勢を明らかにすべきだった。民族問題はどこにもある。スペインはバスク問題を抱えているからコソボ独立を承認しなかった。英国には北アイルランド問題がある。英国で中国の人権問題を非難する市民は、自身が北アイルランドのカトリック教徒に行ってきた人権侵害はどのように免責されるのか。それをロンドン五輪の開催を妨害する政治的理由に使われたらどう思うか。二重基準ではないのか。ロンドン五輪の8年後には経済成長が続くロシアでの五輪開催が有望視されているが、北京五輪に対する欧州の反応を見ていると、ロシアでの開催など論外という感がする。

b0087409_12473357.jpg特に問題と思われるのは、3/24のギリシャのオリンピア遺跡で行われた聖火採火式典を妨害した「国境なき記者団」の活動で、明らかに公正公平のジャーナリズムの基本精神を逸脱した傲慢な政治行動である。彼らがあの式典会場に入れたのは何故なのか。記者のパスを持っていたからだろう。一般の市民は立入禁止で入れない。北京五輪に反対する市民も、北京五輪を支持する市民も、普通の人間はあのような場所には侵入できない。北京五輪を妨害する「国境なき記者団」のメンバーが、式典の最中に中継放送のカメラの前に躍り出て妨害行動を全世界に示威することができたのは、彼らがプレスとしての特権身分を持っていたからである。特権身分の政治的悪用ではないのか。チベットを支援する人権活動を行うのなら、ジャーナリストとしてペンを使うことをなぜしないのか。危険を賭して中国に入って自らのカメラで自治区や四川省の真実を撮影しようとしないのか。卑怯だろう。

b0087409_12474356.jpg「国境なき記者団」のやり方を見ていると、例の日本の捕鯨船に嫌がらせをしている「鯨権」保護団体の不法行為への開き直りにも通じるものを感じるが、恰も人権一般の論理と法理を自分たちが独占して、その運用と解釈は欧米人の思いどおりになるものだと言わんばかりの傲慢さが覗われる。中国人や日本人は欧米人が解釈し適用する人権の論理に素直に従えと見下しているように見える。この先、8月までの日程で何が起きるか分からないが、このまま無事に開催されたとしても、今度は中国国内での中国人のナショナリズムの圧力が増し、会期中の競技が異様な雰囲気の中で行われる可能性がある。思い出すのは1996年のアトランタ五輪で、これまで見た中で最も不愉快な五輪だったが、テレビの画面は「USA、USA」と騒ぐ米国人の熱狂と星条旗ばかりで、五輪は米国人に金メダルを取らせて国歌を演奏させるエンタテインメントとセレモニーのようになっていた。新自由主義が世界を支配した祝賀会のように感じられた。

b0087409_12504253.jpgチベット問題に関して小さな疑問がある。3/20頃、暴動が四川省や甘粛省に拡大して、それを中国側が武力鎮圧して犠牲者の数が増えていたとき、ダラムサラの自治政府のスポークスマンが、これから亡命チベット人を一日50人から100人国境に出発させると言っていた。実際に隊列を組んで雪道を行進するチベット僧の映像がテレビで放送されていた。地図で見ると、ダラムサラは自治区との国境のすぐ近くにある。彼ら抗議部隊はどうなったのだろう。続報が出ない。もし国境で中国軍の警備兵に捕縛されたり銃撃されたりした場合は、直ちに自治政府が発表するか、例の米国系放送局の「ラジオ自由アジア」が大々的に報道したはずだ。抗議団は中国との衝突を前提として、その報道の効果と訴求のために、義勇兵のように国境をめざして歩いていた。続報がないということは、考えられるシナリオは、その「抗議行進」が偽りだったということである。瞬間報道用のネタ映像だったということだ。私がチベット側の「政治」を訝る理由の一つはここにある。

ダライ・ラマ14世は毎日のように五輪を妨害するなとチベット人に呼びかけているが、国外のチベット人たちはダライ・ラマ14世の言葉に耳を貸さない。政治的には少し奇妙な状況に見える。
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【今日の一曲】

掘り出しものの山口百恵の『愛染橋』を。
1979年12月の夜ヒットの映像。大島紬を着て嬉しそうに歌っている。
女王は着物が似合うね。ドレスは似合わなかったが。
芳村真理の演出だろうか。



この頃の山口百恵はまさに歌謡界と歌番組の女王。
人気と実力で誰も他を寄せつけず、単騎無人の野を行く感があった。
天才作曲家が渾身で作った名曲ばかりが次々と女王に捧げられた。
さだまさし、谷村新司、宇崎竜童。この曲は堀内孝雄。
女王がいて歌番組が楽しかった70年代の日本。

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by thessalonike4 | 2008-04-08 23:30 | チベット暴動と北京五輪
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