
4/28の衆院法務委では共謀罪法案の強行採決は見送られたが、様子を窺うと、これはどうやら与党側の巧妙な駆引きで、採決を先延ばししたのは連休明けに民主党の修正案で法案を可決するための巧妙な策略のように見える。民主党に顔を立てて、法案から一般に言われているような危険性を除去したように見せかけるための政治演出だろう。与党の法案と野党の対案を立ち入って詳細に比較検討したわけではないが、民主党の修正案の要点は、民主党の
HPの記事の中で菅直人も言っているとおり、共謀罪の適用対象を「組織犯罪集団」に限定したことと、対象となる罪を政府案の「4年以上の懲役・禁固に当たる犯罪」(約620種類)から「5年超の犯罪」(約300種類)に改めたことであり、国際的な犯罪のみを対象にすること
である。一見すると、政府案とは違って、一般市民の思想信条の自由を侵害する法案の機能に大きな歯止めがかけられている印象を受けるが、果たして本当にそう言えるのだろうか。

産経新聞は「民主党が策定している修正案も適用範囲を制限することが柱で、法案の中身そのものに大きな開きはない」と
言っている。左翼系のブログは、衆院千葉補選の前後から小沢民主党熱烈支持のキャンペーンを張り、その歓呼に応えるように、雑誌「DUMONT」で名前を売った民主党左派と思しきあたりが左翼系諸ブログに接近、共謀罪法案に対する民主党の対決姿勢を宣伝している。政権交代を目指す民主党には党内の左右両派で分業体制があり、小沢一郎を中心とする右派は自民党支持の保守層から票を掠め取り、菅直人を筆頭とする左派は共産党や社民党の支持者から票をぶん奪る役割分担がある。両方で左右に食指を伸ばして票を掻き集めなくてはいけない。二大政党制の政治体制である以上、それは当然の生理であり定石である。昨年夏の衆院総選挙のときも、
江田五月は「郵便局ファンの会」が主催する「郵政民営化反対の要請行動」を議員会館前で出迎え、激励の挨拶で応えていた。

選挙の後、「郵便局ファンの会」のHPは一時閉鎖され、彼らが選挙前にどのような郵政民営化反対運動を展開していたのか、証拠となる情報は全て消去されてしまっている。ここで紹介できないのが残念だが、解散のほんの少し前、「ファンの会」主催の大規模な集会があり、江田五月が民主党代表で出席して郵政民営化断固反対の主張を訴えている写真が記事とともに掲載されていた。私は覚えている。解散直後、民主党は一転して郵政民営化賛成の立場を明確にし、各テレビ局の討論番組でキャスターと竹中平蔵に突っ込まれながら、「郵政民営化には賛成だが、政府の法案には反対」を繰り返していた。そして選挙戦後半に独自法案を出し、岡田克也や
金子勝は、「最も過激で徹底的な改革が民主党の提案だ」と自慢していた。まさか今度の民主党の共謀罪法案修正案が「最も過激で徹底的な」ものになるとは思わないが、私の予想を言えば、与党は民主党の修正案で妥協するだろう。政府にとって何も問題はない。歓迎の対案だ。

法案の目的は達せられる。三年前から四度にわたって廃案になってきたこの法案を、今回、成立に向け推進している中心にいるのは安倍晋三である。法案には具体的な政治目的がある。単に内面の自由の制限とか、個人の思想信条の束縛などといった一般的な権力動機からのものではない。これは戦争に向けた一連の法整備(個人情報保護法・盗聴法・国民保護法)の一環であり、具体的に間もなく始まる戦争が想定されている。それは
前にも述べたように北朝鮮との間の
テロ戦争であり、憲法改正を一気に断行するための
謀略テロ戦争の勃発(発動)である。9月に首相就任を予定している安倍晋三は、恐らくブッシュ政権の任期中に改憲する機会を狙っていて、憲法改正に先行する法整備の全てを済ませて戦争状態に入るつもりなのである。民主党の国会議員や民主党熱烈支持者の良識派市民には「間もなく始まる戦争」という表現は意外で不吉だろうが、もう緒戦の段階は始まっていて、眼前の北朝鮮拉致事件が
それである。

後は国内のどこかで「
北朝鮮工作員による謎のテロ」が起きるだけだ。で、この話を始めると横道に逸れるので途中で止めて、民主党の国会議員や民主党の熱烈支持者に訊きたいのだが、もし仮にそのような「テロ」が国内で発生したとき、朝鮮労働党と朝鮮総連は民主党の共謀罪修正法案で対象限定したところの「組織犯罪集団」には該当しないのか。否、何も大きなテロが発生しなくてもよい。「新しい拉致事件」でもよい。ある日誰かが失踪し、警察の捜査でそれが北朝鮮による拉致の可能性が高いとされたとき、それは当然「テロ」と認定され、日本国内で北朝鮮と関係する「協力者」に非難と取締の矛先が向けられるだろうが、そのとき日本国内に居住する北朝鮮関係者を一網打尽にする際は、この法律を適用するのが最も合理的で効率的であろう。行為の事実ではなく合意の事実が犯罪の要件となるから、逮捕しやすいし有罪にしやすい。「テロ」を謀略だとして批判する「反日主義者」も「組織的犯罪集団」の一部(スパイ)にして始末すればいい。

共謀罪法案は外国からのテロを取り締まる法律である。それが目的だ。テロ戦争を前提している。米国の場合は、敵はアルカイダのような反米イスラム過激主義組織であり、日本の場合は北朝鮮が敵になる。民主党関係者と民主党支持者は、自らが対案で制限した「組織犯罪集団」の意味を考え、目の前の北朝鮮拉致事件を見て、朝鮮労働党と朝鮮総連の存在を具体的に連想するがいい。そうすれば対案はかなり生々しく恐ろしい表象になるだろう。それとついでに、もう一つ民主党関係者と民主党支持者に訊きたいが、例えば仮定の問題として、この共謀罪法案の審議が紛糾して、例によって小泉首相の「喧嘩勝負」の虫が疼き始め、衆院解散に打って出て、「共謀罪法案に賛成か反対か国民に信を問いたい」とやったらどうなるだろうか。まさかテレビ局の生放送のスタジオで、またぞろ「
共謀罪法制には賛成だが、政府案には反対だ」と言い出すのだろうか。北朝鮮の拉致を手伝った者に何も処罰しないのかという問題も議論の争点になるだろう。
民主党はそれにはどう答えるのだろうか。警察の捜査で北朝鮮工作員と内通したと断定された者にはやはり厳罰か。共謀罪法案は対テロ戦争の政治を前提している。安倍晋三にとって民主党の修正案で可決して何も問題はない。「国際テロ」と「組織犯罪集団」とその仲間を処罰するための法律なのだから。