嫌なニュースばかり目にする最近の日々の中で、昨日(5/16)飛び込んできた民団と総連の和解とトップ会談の報道は、久しぶりに聞く朗報だった。このニュースを聞いて思い出したことは二つあり、一つは六年前に金大中大統領が平壌を訪問して南北首脳会談が実現したその日の夜の「ニュースステーション」の映像で、今でも忘れられない。生中継のカメラが大阪生野区にあるコリアタウンの焼肉屋の店に入り、店を経営する家族が喜びに溢れた表情で久米宏の質問に答えていた。家族の女性の一人が、「とても嬉しいです。早く南北が統一して、そして日本と仲良くしていきたいと思います」と言ったのに対して、久米宏が、「私、そういうふうに韓国の方から優しい言葉をいただくと、とても感動して嬉しくなってしまうのですが、」と応じたのが印象的だった。二人とも万感籠もっていた。思えば、私は久米宏からいろんな事を教えてもらった。啓蒙されることが多かった。よい人生の先輩だった。「ニュースステーション」の中には素晴らしい思い出が詰まっている。そして六年前は日本の報道もこうだった。わずか六年前のことなのに。違う国の話のようだ。
金大中がタラップを降り、両首脳が握手したとき、プレスセンターの韓国人記者が全員起立して拍手を送った。生野区のコリアタウンで生中継を見ていた在日の人たちもテレビの前で拍手した。それからすぐに川崎とか品川あたりで総連と民団の交流会が始まり、そのニュースがテレビで放送され、私は、もっともっと早く今回のような和解の政治が実現すると思っていた。政治が前に進むのには時間がかかる。四年前からの北朝鮮拉致問題の政治についても、私は民団にもっと毅然とした姿勢で日本の右翼と対決して欲しかった。腰が引けていた。北朝鮮拉致問題の政治で、日本の右翼に対抗する政治を作る主導権は、民団こそが握るべきだった。思い出したことの二つ目は司馬遼太郎のメッセージで、総連と民団の二つが一つになり、日本に居住している在日の人間が先に連帯と共同を実現して、そして半島の統一を促進媒介できればよいのにという主張をしていた。半島を統一させる積極的役割を在日同胞六十万が担う夢を司馬遼太郎は見ていた。在日一世に北朝鮮も韓国もない。二つに分かれている理由はイデオロギーだけだ。
その主張は、現在は四冊の中公文庫に纏められている「
日本の朝鮮文化」シリーズの中のどこかにあったはずだが、残念ながら書名とページを特定できない。上田正昭と金達寿と司馬遼太郎の三人による座談会でのシリーズである。NHKのニュースでは民団が五十万を抱え、総連が数が減って十万になっていると伝えていた。当事者には極論に聞こえるかも知れないが、朝鮮総連は早く組織を解散して民団に吸収合併されるべきだ。敗北を敗北として潔く認めて、歴史の表舞台から消えるべきだ。そうでないと、いずれ政権と右翼と米国が仕掛けてくる「
北朝鮮謀略テロ戦争」の犠牲になる。右翼団体に襲撃されて死者を出す。国際テロ組織の烙印を押されて非合法化される。身の安全のため、早く民団と韓国政府の保護下に入った方がいい。六年間停滞していた動きが加速化した背景には、盧武鉉政権の昨年からの対日外交の転換の影響が確実にあるだろう。朝日新聞の今日(5/17)の記事はこのニュースに対してきわめて冷淡で、「単なるパフォーマンス」だとする処理の姿勢を見せていた。朝日新聞の右傾化と反韓論調が目立って不愉快だ。
その朝日新聞の一面は横田滋の訪韓記事で、NHKの7時のニュースと変わりない。NHKの7時のニュースはずっと北朝鮮拉致問題にジャックされ続けている。民放のワイドショーの電波ジャックは我慢できるけれど、NHKの7時のニュースが安倍晋三の私物にされて大本営報道されるのは耐えられない。が、普通に考えれば、NHKの7時のニュースでこれだけ連日「北朝鮮拉致問題」の報道をやっているということを、韓国の国民がどう受け止めるかという影響の問題がある。彼らは、現在のNHKが嘗ての優良な公共放送ではなく、右翼に占領されたプロパガンダ基地に変転させられている真実をどれほど正確に認識していることだろうか。そこを見誤れば、韓国は再び日本に侵略を許す事態に繋がる。「拉致問題」というのは巧妙なマヌーバーなのだ。謀略の政治なのである。盧武鉉政権を孤立化させるために日本の政権と右翼が韓国のマスコミに仕掛けている罠なのだ。韓国の国民は「拉致問題」で騙されてはならない。踊らされてはいけない。「救う会」前事務局長の荒木和博が「
親日派のための弁明」の訳者である事実を知っているのか。
西岡力は、今度の横田滋の訪韓の成果を語って、三年前よりずっと韓国の関心が高くなったと喜んでいた。 三年前に拉致被害者家族がソウルのホテルで記者会見したとき、発表を仕切っていたのは荒木和博で、私はその映像に驚き、荒木和博の「勇気」に脱帽した記憶があるが、まさか韓国のマスコミは「救う会」が何かを忘れたわけではあるまい。あの頃、たしか「親日派のための弁明」の著者の金完燮は、住所がバレたら身の危険が及ぶということで、素性を隠してソウル市内を逃げ回っていた。今回、KBSまでが横田滋に付き合っているのは何故だろう。日本の政権と右翼から韓国のマスコミに大量のカネがバラ撒かれているとしか思えない。それともう一つ看て取れるのは、
朝鮮日報を始めとする韓国の新聞が、盧武鉉政権打倒に動いていて、盧武鉉大統領への不支持を国内で煽るために日本の右翼と結託している事実だ。これは前回の竹島問題の報道でも見られた。記事の中身では日本批判よりも盧武鉉批判の方にウェイトを置いている。
前の記事でも警告したが、韓国のマスコミがやっていることは、二十世紀初頭に起こった出来事と同じだ。
国を売り国を割る亡国の行為である。日本の右翼を前にして結束を崩しては絶対にいけない。再び国を割って国土を失うことになる。