
今国会の会期延長が小泉首相によって断念され、教育基本法改正案と国民投票法案の継続審議扱いがほぼ確定されたと朝日新聞(6/1)は報じている。一方、共同通信の記事では、小泉首相が衆院教育基本法特別委員会に出席して、「今国会で成立は十分可能」と答弁したと書いている。私の見たところでは、共同通信の記事の小泉首相の発言はブラフで、二つの法案についての継続審議は公明党との間ですでに決定済みの事項なのだろう。公明党は内心ホッとしているに違いない。教育基本法の改正を党の悲願とし、憲法改正前の必須の経過点として位置づけていた自民党にとっては、今国会の正念場は、まさに自公合意を作ることであり、公明党と妥協して与党案を固めるところにあった。つまり浜四津敏子と取っ組んで捻じ伏せることこそが最大の課題だった。公明党は政権与党になってからの七年間、何だかんだと立ち回りをしながら、教育基本法に手をつけるのだけは躊躇逡巡してきた。

民主党との調整など子供の遊びのようなもので、何と言っても民主党の「教育基本法に関する検討会」座長の西岡武夫は、超党派の「日本会議国会議員懇談会」による「教育基本法改正促進委員会」の最高顧問様なのだ。民主党案との妥協など一秒でできる。今回は、小沢一郎が参院選を意識した政治的ポーズで反小泉・反自民党の政権交代路線を強く打ち出したために、悪法三法案に民主党の側から成立を急がせることは戦術的に手控えられた。これが
前原誠司だったらどうだっただろう。三法案はおろか、防衛省格上法案も早々と国会を通過して、サイバー法案の整備とグァム移転費用3兆円の予算化についても着々と中身を踏み固めて行っただろう。公明党は置いてけぼりを食わされていたに違いない。前原誠司を辞任に追い込んでおいてよかったよね。が、教育基本法改正案の臨時国会の可決成立はもう決定的で、日本国憲法の外堀であった内面法規がいよいよ解体工事に入る。

国会が終われば、政局の関心はポスト小泉の自民党総裁選に移る。現在、マスコミは総裁選の宣伝報道の準備に余念がなく、自民党の指図どおりに着々と夏の政治祭事を盛り上げるプログラムを組んでいる。安倍晋三が新首相になったときに、安倍内閣の支持率をピークに持って行くための三ヶ月がかりの仕込みである。が、もし仮に福田康夫が新総裁になる永田町の大番狂わせがハプンすれば、憲法改悪三法案と呼ばれる共謀罪、教育基本法改正、国民投票法案の運命にも想定外の事態が待ち構えることになる。さて、民主党リベラルの会に所属する平岡秀夫のサイトを覗いていたら、自民党総裁選に関する
記事が載っていた。実は平岡秀夫のページを見たのは、共謀罪や国民投票法案に関する民主党の対応を解析できるヒントが無いかどうか調べるためだったが、この記事は少し意外だった。平岡秀夫は共謀罪法案を審議している法務委員会のメンバーで、最近はニュースでよく顔を見る。

「例えば、自民党総裁選挙では、福田元官房長官が安倍官房長官に敗れたとしても、その票差如何によっては、自民党内の福田氏支持議員と公明党議員と民主党の一部議員との連合によって福田元官房長官を総理大臣に選ぼうという動きも考えられないことは無いように思えます。ただし、さすがにその時は、政界再編が起こるときでしょうから、そう簡単に起こることではないと思いますが・・。いずれにしても、これから、自民党総裁選挙の動向と民主党・小沢一郎代表の戦略が、どこでどう絡み合うのか、興味が持たれるところです」(5月25日)
私が当惑を覚えたのは、この日の話題が、時期的にも本当なら彼の中を埋め尽くしているはずの、そして立場上率先して国民に説明をしなければならないはずの、共謀罪法案に関する専門的な見解や法務委の審議状況ではなく、自民党総裁選問題であったからである。それと、記事の論調が、現役の国会議員のものと言うよりも、テレビの評論家風の印象なのだ。

これは読めば誰でもそう感じるのではないか。平岡秀夫に限らず、民主党の若い議員のウェブ日記はこういう感じのものが多い。国会の審議討論現場の生々しい緊張感を有権者に伝えるのではなく、テレビの評論家が報道番組で簡単にコメントして撫でるようなサーフェイスなあの感じ。上の引用部分だけを切り抜けば、そこらの市民ブログの床屋政談と同類と言うか、代議士が自ら筆をとったものだとは思えない。平岡秀夫は人材難の民主党の中でも期待のホープであり、菅直人の後釜はこの男じゃないかと思われるほどの有望議員だから、私の怪訝と落胆の感覚もそれに比例したものになってしまった。平岡秀夫には共謀罪と国民投票法案について詳しく報告と訴えをして欲しい。だが、この上の引用文から感じたことはそれだけではなかった。もう一つ感じたことがある。それは、この評論家調のさりげない総裁選論の意味についてである。この話は、あるいは単に一人で考えて出たものではないのではないか。

ズバリ言うと、これは平岡秀夫が菅直人や江田五月たちと党本部の会議室で議論しながら、その中で出てきた政局談義が、そのまま丸く切り取られて表出されたものなのではないか。そのように感じたのである。民主党左派の面々たちの、期待や願望も含めた情勢認識、政局予想が反映されているのではないか。そしてこのように動く可能性も決して皆無とは言えない。公明党は基本的に福田康夫支持だろう。小沢一郎は公明党・創価学会と太いパイプを持っている。来年の参院選に向けて万全の準備を整えつつ、同時に夏からの政局で福田政権を展望した政界再編の動きを仕掛けてもおかしくはない。で、それに関して予め基本的な数の情報を踏まえておくと、衆議院の過半数が241で、現在の自民党の議席数が293。無所属が20で欠員が1。仮に全野党が福田康夫支持で一本化した場合、臨時国会の首班指名で自民党から60名ほどの造反者が出れば、福田康夫が首相に選出される可能性がある。

無論、現実にはこのような単純な図式にはならず、前原誠司を筆頭とする改革改憲路線の新自由主義者が党を飛び出て安倍晋三とくっつくから、自民党からの造反者を100名ほどは見込んで取り込まなくてはいけない勘定になる。そうなるとまさにマグニチュード8の政界再編だが、果たしてどうだろうか。いくら小沢一郎の腕力でも、そこまでの震度で自民党内を揺さぶるのは簡単ではあるまい。よほどの
大スキャンダルが安倍晋三に飛び出さないかぎり、自民党の党内が割れるほど動揺する事態は考えにくい。平岡秀夫たちの政界再編雑談はどういう結果に話が落着したのだろう。私の現時点での予想は、ポスト小泉は波乱なしに安倍晋三に決定である。小泉純一郎はゴッドファーザーとして党内に睨みを効かせる。党人事と組閣人事も安倍晋三の独断ではなく、党人事は小泉純一郎と相談し、内閣人事はホワイトハウスと相談して決まる。竹中平蔵が副首相格の財務大臣、もしくは幹事長に就任するのではないか。