
共謀罪法案について与党が民主党の修正案を丸のみする方針を固め、国会で法案が成立する可能性が高くなった。朝日新聞は本日の衆院法務委で採決があると報じている。昨夜のテレビのニュースでこの情報を知った左翼系ブログが慌て始め、蜂の巣をつついたような騒ぎになっている。私は一ヶ月前の
5/2と三週間前の
5/12の記事で、「
自民党の本意は民主党との妥協であり、修正案での国会通過である。本気で成案するつもりなら、民主党案の丸のみで全く問題ない」と指摘したが、予言的中となった。民主党案を与党に丸のみされる危険性を言い、だからこそ民主党に批判を集中し、民主党に対案路線を完全撤回させるように働きかけることが、共謀罪を廃案に追い込む最も重要で確実な戦術だと訴えたのだが、私の主張に耳を傾けた者は
きくちゆみ以外には一人もいなかった。ブログ左翼は小沢民主党への熱烈支持を表明して、民主党が共謀罪を廃案にしてくれるものと信頼しきっていた。

左翼が民主党を監視する代わりに共謀罪廃案のために一ヶ月間精力的にやったことは、ブログを集中攻撃してネット世界から叩き出す大運動だった。「テサロニケはファシスト」、「世に倦む日日は小泉の隠れ工作員」、「STOP・THE・KOIZUMIのバナーを外せ」、「世に倦む日日のリンクを外せ」、「世に倦む日日をネットから追放しろ」、「ガマの油売りはもうすぐ破滅」、「マネジメントスキルの無い無能者」、「へたれ」。ありとあらゆる罵詈雑言が浴びせられ、憎悪にみちた誹謗中傷の痰唾が吐きつけられ、悪意の噴出と衝動を抑えられない佞愚が誹謗屋たちを扇動するべくコメント欄に群がった。「世に倦む日日」の排撃と共謀罪反対は、左翼の頭の中では共通目標としてセットになっているようで、「世に倦む日日」糾弾のボルテージを上げれば上げるほど、共謀罪廃案が実現するものと信じ込んでいるようだった。ネット右翼とも親密に手を組んで、「世に倦む日日」殲滅のキャンペーンを展開した。

ブログへの罵倒で昂奮状態になった気分をそのままスライドさせて、愚かな左翼どもが吼えていたことは、「共謀罪の流れは変わった」「ブログの力で共謀罪を阻止した」の勝利宣言だった。彼らは、自民党が民主党の修正案を丸のみする可能性を寸毫も考えなかったのだろうか。ある情報によれば、政治的抗議手段の効果測定として、「
メールはほとんど読まない。ファクスは紙として残るのでとりあえず目を通さなくてはいけなくてインパクトはある。電話は最も有効な手段」だそうだ。当たり前の話だが、であれば、共謀罪に反対する優秀な左翼の諸君は、何でこの一ヶ月間、民主党の本部や議員事務所に抗議のFAXや電話を入れようとせず、「世に倦む日日」への暴力行為に明け暮れていたのだ。たった一日でFAXや電話を入れても効果は薄いだろう。三十日間のうち、二十九日は「世に倦む日日」攻撃に費やして、残りの一日を民主党批判に費やしたわけだが、共謀罪廃案への効果はどうだったのだ。

一ヶ月間あれば、FAXの数も膨大なものになっていただろう。民主党の事務所経費に大変な影響が出ていたんじゃないのか。今回の「丸のみ」の政治は、当然の話だが、小沢一郎が了承している。小沢一郎と直接に話をつけたのは恐らくシーファー米駐日大使だろう。裏の年次報告書の取り決めの話をして、今年が共謀罪法整備のデューだという納期事実を告げて、小沢一郎の政権交代を米国が承認するためには、この法案に民主党が反対しないことが条件だと迫ったのだろう。そこまで米国に迫られれば、小沢一郎も首を横に振るには勇気が要る。日本国の主権者は日本国民だけではないのだ。二つある。日本国民と米国政府。二つから支持されないと政権につけない。民主党の立場は面倒で、自民党の新自由主義政策に反対する左派から票を集めながら、同時に米国政府の前でよき従僕たるを示さなければならない。矛盾背反する二つの顔を使い分けて演技しなければならない。苦笑を誘う。

渦中の平岡秀夫は何を考えているのだろう。細川律夫は。二人とも、今の民主党の中では最も信頼できる議員だが、最もやってはいけない政治を自らの手で行っている。民主党は法案に基本賛成して対案を出した時点で間違っていた。平岡秀夫と細川律夫を説得して言い含めたのは、菅直人と江田五月の二人だろうか。「丸のみ」の場合、菅直人は国民の前でどう説明するのだろう。民主党案が通ったから、国民の言論の自由と思想信条の自由が守られましたと言うのだろうか。欺瞞。一ヶ月間のシュプレヒコールとブログ攻撃で肉体疲労しつつ達成感に浸っていた罵倒左翼は、「丸のみ」の危機にどう対応するのだろうか。左翼の悪いところは政治に戦略性がないことだ。政治に勝つためには緻密な戦略と計画が要る。ただ喚いて騒いで、そのときそのときにバタバタすれば政治で勝てるわけではない。一番重要なのは分析だ。この政治に勝つためには、民主党を動かすことがキーだということは、少し考えれば簡単に分かるはずなのだが。
丸山真男が言っていた「キグチコヘイハシンデモラッパヲハナシマセンデシタ」を思い出す。政治は結果だ。何度も言うが、左翼は病気を根治して健康体にならない限り、政治には勝てない。そして話が少し戻るけれど、小沢一郎は、田中角栄がロッキード事件で失脚させられた詳細をつぶさに見ている。米国がどれほど恐ろしい存在かを誰よりもよく知っている。米国政府のオーソライズなしに日本の政権が何もできないことを承知している。米国の意に沿わぬ方向に政策の舵を切れば、瞬時に権力を転覆させられる真実を知っている。