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村上世彰と新自由主義の思想 (2) - 証取法と健全な株式市場
b0087409_16302626.jpg村上世彰の逮捕について、政治的立場の左右から不当逮捕だとか国策捜査だという批判が上がっている。右翼の新自由主義者だけでなく、左翼の側が村上世彰に同情して特捜部長の大鶴基成を批判しているのが面白い。日頃は村上世彰や宮内義彦のような新自由主義の権化を口を酸っぱくして批判しているのに、こういう場面になると、途端に条件反射的に権力アレルギーの持病が噴出する。しかしそれならば、大鶴基成以外の一体誰が堀江貴文と村上世彰の無法と横暴を止められたのだ。証券取引法を読むとわかるけれど、本当に複雑で迷宮のような条文構造になっている。それに付帯の政令があって、個別取引の法的基準がガイドラインされているが、条文を一読しただけでは、何がインサイダー取引として違法となるのか素人には全く理解できない。万人が頭の中に描ける一般通念のような世界が簡単には構築できない。村上世彰逮捕について両論あるのは法律論的には当然であるように思われる。



b0087409_16284538.jpg印象として、証券取引法そのものが本来的に裁量前提的な法律としてできていて、原理的で普遍的な存在感がない。法律のエッジが鋭くない。法律らしくないと言った方がいいだろうか。法律と言うより、むしろマニュアルなのだ。直感だが、われわれ一般人の「法律」の観念と村上世彰が言っている「法律さえ守っていればいい」と言っているときの「法」の意味とは微妙にズレがあるように思われてならない。彼らが「法」として考えている証券取引法のルールというのはゲームのルールであって、われわれが厳粛に考える刑法の条文のような重い存在ではなく、それを破るとか犯すという概念が曖昧な、フラクタルな世界のものだ。合法違法を分ける境界が不鮮明で判然としていない。当局の裁量如何で合法になったり違法になったりする。当局が違法判断に踏み切って初めてその行為の違法性が認識され確定される。捜査と判例によって経験的に法の概念が固まって行く。証券取引法は特にそういう性格の強い法律だ。

b0087409_1629105.jpgそして証券取引法の趣旨や目的は、どうやらこの間の規制緩和と規制強化の往復で揺らぎ、法律そのもののキーメッセージが失われてしまっている。村上世彰は証券取引法は証券取引の憲法だと言ったが、まさに今の証券取引の日常そのものが違憲だらけの本末転倒した世界になっていて、それがさらに規制緩和による法改正によって、本来は間違いなく禁止され処罰されるべき行為が平然と黙認され正当視されていたのである。喩えて言うなら、村上ファンドの存在自体が憲法違反の自衛隊なのだ。村上ファンドの経営手法そのものが、まさに一般投資家への不利益の皺寄せを前提にしている。行政と司法の当局がこれまで村上ファンドを放置してきたことが間違っていたのであり、その点は上村達男の主張するとおりだろう。上村達男の言うとおり、司法(地検特捜部)ではなく行政(証券取引等監視委員会)が、リアルタイムに村上ファンドの逸脱と暴走を制止し、権力を行使して法令遵守の経営に矯正指導すべきだった。

b0087409_16285955.jpgしかし、証取法の性格とは別に、私にはもっと深い疑念があって、ニュースのキャスターが言っている「健全な株式市場」というものが実際のところ存在するものなのか、投資家が法を正しく守っていれば「健全な株式市場」が発展するのか、それを無前提に信じていいのか、最近は大いに疑問に感じている。昨年、一本調子で上昇し続けてきた日本の株価は、昨日、年初来最安値をつけ、半年前の昨年11月の水準まで落ち込んだ。原因は原油高による米経済のインフレ懸念と金利高とそれによるリセッション不安で、世界的な株安の影響を受けて東証も下がっている。米国の株価が上がれば東証も回復するだろうが、ダウが反転上昇しなければ日本の株価も上がらない。世界の株式市場は基本的に一つであり、ビッグマネーを動かしている米国のファンドは同じである。24時間休みなく世界で金を動かして稼いでいるだけだ。で、日本の株価が半年前の水準に落ちたということは、この半年間に参入した日本の個人投資家はかなり損を出しただろう。

b0087409_16292181.jpg五年前から日本でマネーを動かしている米国のファンドにとっては、この程度の下げは問題ではあるまい。上がって儲け、下げて儲ける。日本の個人投資家がぼったくられているのだ。竹中平蔵に騙されて、ゼロ金利の銀行から株式に換えて、資産運用を始めた途端に大損をさせられているのである。この世界の常識は、儲かるのは合法的にインサイダー取引ができる大手投資家だけで、個人投資家は株価全体が長期間上がらなければ最終的に儲かることはないということである。それが世間常識なのだが、そういう常識を踏まえてか踏まえずか、報道番組のキャスターや解説者たちは、素知らぬ顔で「健全な株式市場」を言い、何か大塚久雄的なホモエコノミクスが、健全な企業を育成するために健全な投資をして、適正な株式利益を取得できるという理念型的な世界が現実に存在するように、あるいはすぐ将来に到来するように言う。銀行の預金を株に換えれば、そうした市民社会的で理念型的な株式投資の世界が実現するように言う。だが、これは嘘だ。

不可能だ。幻想の世界だ。ライブドアがニッポン放送株を取得するとき、800億円をライブドアに融資したのは、同じ六本木ヒルズに事務所があるリーマンブラザーズだった。リーマンブラザーズは現在のところ何のお咎めもなしだが、この800億円は特約条項付きのMSCBでライブドア株を引き受けたものであり、リーマンブラザーズはこれを市場で売って200億円稼いだと言われている。健全な株式市場。こういう時代に「健全な株式市場」なんてあるのか。「健全な株式市場」を日本一国だけで、日本国民の力だけで実現する条件があると言えるのか。私はこの言葉は欺瞞だと思うし、本当のところは収奪のための詐術だと思う。新自由主義者による言説のトリックだ。
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by thessalonike4 | 2006-06-09 23:30 | 村上世彰インサイダー事件
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