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by thessalonike4
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July 4th を囃す独裁者の弾道花火 - ミサイル乱射の狂気と倒錯
b0087409_1128162.jpg昨夜はよく眠れなかった。よく眠れなかったのは昨年の9月11日の夜以来のことだが、少し感覚が異なる。去年の衆院選投票日の夜は頭がやたら興奮して、床の中で様々な言葉が浮かんできて、そして政治学の概念や表象や着想が頭の中を猛スピードで駈け回って、自問自答を次から次に繰り返して、日本の政治の今後を思い窮めて眠れなかった。昨夜はそうではなく、ただ意識が重く、精神がくたびれて、塞がれて、憂鬱な気分だけで重々しく一夜を過ごした。そういう経験が五年前に一度あって、それは米国で同時多発テロが起きた9月11日の夜である。今日が転換点だ。これから間違いなく世界が変わる。日本も変わる。自分も変わる。それは悪くなることで、社会環境が悪くなることで、自分の身辺に不幸と厄災の影が忍び寄ることだ。きっとそうなるだろうと直感した。蒸し暑い夜だった。あのときと同じ気分。そして今度の不幸の予感はもっと切実で濃厚だ。



b0087409_11283242.jpg実は偶然ながら、初めて米国の地を踏んだのも July 4th の独立記念日だった。降り立った場所はニューヨークのJFK。セントラル駅の上にある豪華な宿舎に着き、時差ボケで眠い目を擦りながら観光バスで市内を回り、目が冴えた夜になって花火の上がるイーストリバーの方へ繰り出した。見物客が河岸に大勢出ていて、警官が馬に乗って通行人を警備していたのが印象的だった。その警官の腰には巨大なピストルがぶら下がっていて、ピストルと言うよりガンと言った方が正確な大きさと形状だったが、それが恐くて花火を楽しむ余裕も無かった記憶がある。米国で驚くのは警官の体格と剥き出しの銃の物騒さで、空港に着いたときから恐怖で身が萎縮した。花火が終わり、勢いでブロードウェーの方角だったか噂に聞く遊興街をめざし、悪仲間と碁盤の目の舗道をトコトコ歩いた。歩いている間にリュックを背負った若者が二人、向こうから道を尋ねてきた。

b0087409_11281819.jpg「僕らも、今日初めて日本からUSに来たんだよ」。米国人が日本人に道を尋ねるのが不思議だったが、滞在した二日間に何度も経験して、これがNYなんだと思い知ったことが懐かしい。若者たちは独立記念日の花火を見に来た田舎のお上りさんだった。NYには歌舞伎町のような歓楽街がなく、着いたところは五反田の場末のようなシケた街で、貧相なビデオ屋が数軒あるきりで、私の若くてギラギラした好奇心と欲望を満足させてくれる場所はなかった。古い立ち飲みのバーに入り、キャッシュ・オン・デリバリーでジャックダニエルを飲み、年代もののジュークボックスでビートルズを回して時間を潰した。何でNYは夜の街がこんなに地味なんだろうと不満の感覚ばかり先に立って、犯罪の恐さとか、さっきまで怯えていた拳銃のことなどすっかり忘れていた。イエローキャブでホテルに帰る頃は、もう何週間もNYに滞在している人間のように慣れて度胸がすわっていた。

b0087409_11291573.jpgその July 4th に日本海に特製の花火を打ち上げた狂気の独裁者がいて、そのために多くの日本人がこれから長い歳月を不如意に過ごさなければならない。不幸が重くのしかかる。重村智計や伊豆見元が北朝鮮政権内部の分析を言っているが、政権の内部には分析しなければいけないほどの人間の意思はない。政治意思を持った人間は一人だけだ。正確に凝視すれば、今度のミサイル乱射は、金正日の米国へのデモンストレーションではなく、示威ではなく求愛である。偏執的なプロポーズだ。金正日は独裁を続け過ぎて、限度を超えて独善と虚勢が思考を支配し、そのためあのような意思決定を正しいと誤認してしまったのだろう。米朝二国間協議を有利にドライブするカードとしての弾道花火の打ち上げ演出。理性ではなくアウトローの思想で武断政治をするブッシュ政権に「同類」の性質を感じ取り、ネゴシエーションの波長をチューニングできると錯覚したのに違いない。

b0087409_1131831.jpg金正日は諫言を嫌い、その性向が態度として精神構造に沁み込み、それを矯正したり軌道修正できる要素がなく、暴君の恣意と倨傲が歯止めなく直接流出する。胡錦濤政権や盧武鉉政権の親身のアドバイスも、それを周囲の(奴隷的)部下の理性的諫言のように看做して、疎んじて却下拒絶する反応になるのである。胡錦濤政権や盧武鉉政権の指摘や助言を内在的に理解するのが苦痛なのだ。それを内在的に理解承認するのは自己否定(自己批判)を伴うから。同じ助言や批判を言った(奴隷的)部下の諫言に頭を下げる結果になるから。だから、それができないのである。そしてひたすら自己の私有物である北朝鮮を危機と窮迫に追い込み、戦争の瀬戸際に立たせ、戦争という手段の選択を敵側に断念させることで外交的勝利を得ようとするのである。その外交的逆転が自己実現であり、恣意と倨傲の勝利であり、理性の敗北証明なのだ。理性の側を敗北させたいのである。

b0087409_11295014.jpg独裁者の心理や運命には特に興味はないけれど、我々には鬱屈と絶望の時代が始まる。前回の記事では来年度予算の防衛費増額を予想し、米軍再編とミサイル防衛網をファイナンスする日本国民の負担増について指摘したが、他にも憂鬱の種はある。今度の事件は臨時国会の共謀罪審議にも影響を及ぼすだろう。私は、民主党が共謀罪の対象として限定している「国際犯罪組織」や「国際テロ組織」の中に北朝鮮関係団体(朝鮮総連)が含められる可能性についてずっと言及してきたが、次の審議ではむしろ逆に、積極的に北朝鮮関係組織の活動を封じ込めるために共謀罪を創設しようという動きになるのではないか。共謀罪を国会通過させる上での大義名分として「北朝鮮の脅威」は国民にアピールできる。一つの予言として置いておこう。日本の06年7月5日は米国の01年9月11日だ。戦争が始まった。戦争は長く続く。戦時下政治は長く続く。米朝交渉が妥結しても日本の「戦時」は終わらないだろう。

米国の「テロとの戦争」が終わっても、日本の「戦時体制」は変わらないだろう。北朝鮮が崩壊しても、敵を中国に変え、韓国に変え、「戦時」を続けて行くだろう。オーウェルの「1984年」的世界の始まりである。

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by thessalonike4 | 2006-07-06 23:30 | 韓国 ・ 北朝鮮 ・ 拉致
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