
明日(7/10)の国連安保理での北朝鮮制裁決議案の採決に注目が集まっている。焦点は中国が拒否権を行使するかどうか。7/7の非公式協議では中露を除く13か国が決議案への原則支持を表明、7/15から開催されるサミットで初の議長国となるロシアが棄権に回る公算が大きくなり、中国が窮地に追い詰められた格好になっている。報道されているとおり、素早い日米の動きだった。決議案を提出した米日英仏四か国は中国に時間の猶予を与え、7/10の武大偉の平壌訪問で成果が出せるかどうかを見て採決に踏み切る構えでいる。観測では、武大偉の訪朝で北朝鮮が六カ国協議への復帰に応じれば、その時点で決議案の帰趨も変化があると言われている。中露が要求していた議長声明のところまでは落ちなくても、制裁を伴わない非難決議案のところで妥協するのではないか。制裁決議案と非難決議案では中身が異なる。日本政府はこの二つの間で最初は動揺があった。

当初、7/6の時点で強硬な制裁決議案を打ち出していたが、7/7の夕方になって中露との妥協を図って非難決議案に修正、それが一夜明けた7/8には再び制裁決議案に戻っていた。ロシアの軟化を確認したことと、議長国のフランスが制裁決議案で了解したことが大きいだろう。こうして見ると、現時点で推測される落としどころは、北朝鮮の六カ国協議復帰とそれに免じた制裁決議案の回避、非難決議案レベルでの採決というシナリオである。が、果たしてそういう決着に動くだろうか。平壌での交渉が簡単に纏まるとは思えない。中国は交渉の難航を理由にして7/10の採決をさらに延期するように求めるのではないか。安保理がそれに応じる展開になれば、来週は世界の目が平壌に釘付けになる緊迫の事態となる。最終的に拒否権発動の可能性も十分にある。決断するのは胡錦濤ではない。中国共産党政治局常務委員会の多数決でもない。決定するのは最高実力者の江沢民である。

江沢民であれば拒否権の決断もできる。私が江沢民(あるいは唐家旋)ならばどうするだろうか。どうしても北朝鮮に対する決議案を排除することを考えた場合、米国との間で裏で取引する道もある。すなわち大胆な人民元切り上げを提案して、その対価として北朝鮮決議案の撤回、議長声明で決着させるというアクロバティックな妥協術があるだろう。中国経済にとっては若干の痛手だが、この術策が成功すれば北朝鮮をめぐる問題で日米を分断することができる。外交的に追い詰められていた中国が一転して甦って、逆に日本を窮地に追い込むことができる。日本は米国に裏切られる。人民元はいずれ切り上げねばならない。であれば国家の苦境を救う外交カードとして使えばよい。いずれにしても中国はここで決断することが必要で、北朝鮮に対する方針を明確にすることが必要だ。北朝鮮への制裁を回避させたとしても、中国自身の手でポスト金正日の北朝鮮を作ることを考えなければならない。

中国政府にアドバイスするとすれば、
黄長嘩と組むことだ。現在、米国の手の中にある黄長嘩を、中国の手の中に奪い取ることである。金正日政権倒壊後の北朝鮮の首班を黄長嘩に据えて考えることだ。で、ここから先はクリティカルな話になるが、私が江沢民なら、金正日に経済支援を提示して、詰めの協議をしたいから北京に顔を出せと呼ぶ。江沢民が直々に会うと言うのなら金正日も簡単には断れないだろう。その場で金正日に病気で倒れてもらうのである。病院に入院してもらう。面会謝絶。平壌の家族と側近に病気見舞いに来てもらい、そのまま北京に永住してもらう。その列車とクロスして黄長嘩が平壌駅に降り立つ。そういうマルクス的な「暴力の助産婦」もある。それがリスキーなら、まずは金正日の周囲に大量の
諜報員を配置して、日々の動静を正確に把握し、クーデターの可能性を探ることだ。今回、ミサイル発射を事前に察知できなかったのは、中国の北朝鮮諜報活動の失敗である。

今日の「サンデープロジェクト」で放送された高世仁のデビッド・アッシャーへのインタビューは実に面白かった。報道としてタイミングが抜群で、今回のミサイル発射事件の背景説明としてこれ以上説得的なジャーナリズムはない。アッシャーの北朝鮮プログラムに黄長嘩が関わっている可能性はないだろうかと考えた。この報道の後では、ミサイル乱射事件はもはや謎でも何でもないと感じられる。辺真一は、国連で制裁決議案が採択された場合、北朝鮮は国連を脱退するだろうと予想を述べた。金融制裁解除を求める金正日は、さらに次の瀬戸際外交の手を打たねばならず、そして幾ら手を打っても、米国は北朝鮮に戦争を仕掛ける道は選ばず、日本を「普通の国」にして北朝鮮と対峙させるよう仕向けるだけだ。北朝鮮と戦争するのは米国ではなく日本なのである。四年前の核開発疑惑のときは、「悪の枢軸」ドクトリンがあり、そしてラムズフェルドがパウエルを押しのけて豪語した「イラクとのニ正面作戦」があった。

今はそれはない。どれほど米国を挑発しても「米朝核戦争の危機」の政治は作り出せず、作り出せるのは「日朝戦争の危機」のみだ。そして米国にはニ国間協議と包括的支援の融和策もあったが、日本の中はそれはなく強硬論一辺倒である。米国は政権が変われば政策が変わる可能性もあるが、日本はこれから
安倍晋三の長期政権が始まる。北朝鮮の米国に対する挑発は、これからは日本が責任を引き受けて外交と軍事で対処する。米国は日本を支援するのみで、北朝鮮と向かい合う必要はない。日本はアーミテージの言う「フィールドでプレイするプレーヤー」に半ばなった。国連決議での経済制裁の段階が上がり、北朝鮮に対して船舶臨検や海上封鎖が行われる場合は、米軍ではなく海自が主担になるだろう。ここで国家の安全保障にとって最大の危機を迎えるのは中国で、改憲と核武装とMD戦略の日本と対峙しなければならなくなる。安倍晋三の長期政権は中国の共産主義体制の打倒を目標とする。
中国がやらなければならないことは、日本と北朝鮮との戦争を阻止することである。そのためには、日本がレジームチェンジする前に北朝鮮をレジームチェンジすることだ。何となく嫌な予感がしてならないが、北朝鮮の次の挑発(核実験もしくはミサイル発射)は8月15日に行われるのではないか。