
先週末の「ウェークアップぷらす」に出演した小沢一郎が、来夏の参院選について戦略と展望を
語っていた。最近の小沢一郎はよくテレビに出演するし、新聞にも積極的に情報を提供している。露出が多い。これは野党の戦術としては正解で、それをしなければ、この時期の記者と読者の関心は自民党総裁選の話題で塗り潰され、民主党の存在や動向が埋没させられてしまう。存在感の希薄化は支持率と期待度に影響する。この夏、小沢民主党は常にメディアにニュースとメッセージを発信し、安倍自民党の政策と路線を批判する対決姿勢を演出し、国民に政権交代の意義を訴え続けなければならない。番組の中で小沢一郎は、参院選で「野党が過半数をとる可能性が高い」と指摘、「参院選ですぐ政権というわけではないが、自公が過半数を割れば連立政権が立ちゆかなくなる。これを政権交代の第一歩にしたい」と発言した。小沢一郎は「共産党と連立政権を組む意思はないが、選挙や国会で野党が纏まって協力する事はある」とも言っていた。

話を聞きながら言外のメッセージとして確信したのは、要するに参院選で自公を過半数割れに追い込んだ後、公明党を政権から離脱させて、民公同盟の政界再編を仕掛けるという戦略意図だった。参院で自公が過半数割れを起こした場合、法案審議は立ち往生し、議場は紛糾と混乱を極める事態となる。個別法案の採決や修正をめぐって自公民の三党が複雑な合意形成の折衝に入らざるを得ず、その際は公明党の役割がきわめて大きくなる。重要法案の審議において公明党と民主党が考え方が接近し、逆に公明党と自民党の考え方が乖離する場合が多々出る。それなら一気に政権の組み換えを図ろうということで小沢一郎流の政界再編に突き進む。小沢一郎と創価学会は旧友の関係であり、互いの事情や性格をよく知り合った仲でもある。民主党の代表になったとき、小沢一郎は真っ先に信濃町に挨拶に行った。小沢一郎の計略には間違いなく民公同盟がある。それはすなわち旧新進党の復活であり、公明党にも決して悪い話ではない。

法案審議で揺さぶって公明党を自民党から引き離す。小沢一郎と創価学会はこれを阿吽の呼吸で巧妙に運ぶだろう。新しく安倍政権の中軸になった再チャレンジ議連の若い新自由主義議員たちは公明党とのパイプが全くない。創価学会と交渉できる資質や条件がない。公明党が民主党と組む決断をして下野した場合、自動的に衆議院は解散される。何故なら、参議院で否決された法案は衆議院の再議決において三分の二以上の賛成をもってしか可決されないからである。これが小沢一郎の戦略だ。そして衆院選挙で創価学会の協力を逆に得て堂々第一党になる。民公連立政権を作る。鳩山由紀夫を総理大臣に据えて自分はキングメーカーに回るだろう。恐らく鳩山由紀夫と菅直人をかわりばんこに首相に据えて裏で操る。政策と人事は小沢一郎と公明党で決める。そういう政略と構想を腹に持っているのに違いない。そしてこの目標は実現性が決して低いわけではない。参院選で野党が過半数を取れば、自ずから政局はそういう方向へ流れて行くはずだ。

小沢一郎は参院選で特に一人区での勝利に執念を燃やしており、29ある一人区で15議席以上取ると
豪語している。そして代表に就任した直後から「選挙は僕がやる」と言い切っていて、候補者選びから選挙対策の一切を他の幹部には任せず自分が統括すると宣告していた。その小沢一郎の選挙への執念の表明とも感じられるが、従来の民主党のイメージからすれば相当に左派あるいは市民派にバランスした候補者がセレクトされていて、例えば東京選挙区で候補者に
公認内定された生活者ネットの大河原雅子がそうである。女性にフォーカスして、左側から幅広く票を取れる人選を看板にするのだろう。これは格差問題に対して民主党が従来の新自由主義(改革)路線を修正した方向性を国民に提示する意味あいもある。いずれにしても、民主党の選挙準備は一見して他のどの政党よりも早く、小沢一郎の参院選に賭ける意気込みをあらわしている。無論、それでは自民党が何もしていないかと言えば決してそうではなく、単に現職候補が多いだけだ。

自民党は必ず手を打ってくる。戦略は土壇場になって初めてベールを脱ぐ。自民党の正規軍主力はマスコミであり、陣形と戦術は劇場選挙であり、と同時に今回はネットを使ってくる。その分析はいずれする。今回、言わなくてはならないことは、護憲派の左翼政党側が何の準備もしていないことである。恐らく社民党は本格的に民主党との合併に踏み切るだろう。単独で選挙をするようには見えない。議員の生き残り策として民主党への合併を模索している気配が色濃い。共産党は何もしていない。来年もまた「たしかな野党」「消費税増税反対」「憲法改正反対」のスローガンを連呼し、一桁議席を守るべく選挙戦を戦うのだろう。毎度のルーティンワークが繰り返される。左翼政党二党の現状を見、そして民主党の選挙準備を見るとき、次の参院選では左派票多数が民主党に流れ込む展開が予想される。前原誠司が代表であればそのような可能性はなかっただろうが、現在のトロイカ体制であれば、共産党に期待できない票の多くが民主党に流れて不思議はない。
私の主張は従来から同じで、早急に日本の政治に第三極を作り、創価学会と乾坤一擲の護憲同盟を組み、院内で天下三分の計を実現すべしというものである。その考え方に変わりはない。が、一年間、ネットでその可能性を模索したが、実現性については現時点でほぼ絶望的な状況にある。残念ながらロマンを現実化できる有力な人物がいない。自民党の戦略については稿を改めて述べるが、基本的には憲法改正を参院選の争点にして民主党を二つに割ってくるだろう。それが最も勝利の可能性が高い選挙戦略だから。