
昨日(9/11)になってようやく小沢一郎が基本政策を発表したが、輪郭があまり明確でなく、総花的なものになっている印象を否めない。エッジがきいていない。報道機関によっては「格差是正」に注目して見出しを付けているところもあるが(
共同・ロイター・
日経)、テレビの報道では特にその点はクローズアップされなかったし(
NHK)、肝心の朝日新聞がそこに注目していない。新聞によって報道のされ方がまちまちで、「セーフティネット」という言葉を入れて性格を表現しているところ(
共同・
読売)とそうでないところ(
朝日・
毎日)がある。報道機関によって受け止め方にばらつきがあるということは、メッセージが明確でなかったということだ。広報の問題もある。キャッチコピーも多すぎる。煩雑だ。「公正な国」、「共生」、「常識の政治」「普通の国」。いろいろ盛り込みたい気持ちはわかるが、今の時点では一つか二つに絞った方が聞く側にはよく伝わる。あれもこれもと入れると、逆に何が言いたいのか分からなくなる。

昨年の衆院選で岡田克也が「マニフェストを見て下さい、ここに全部書いてます」と訴えていたが、あの光景を思い出した。一方の小泉首相は「郵政民営化」一本で、公務員と労働組合への攻撃だけだった。どの選挙でもマニフェストでは民主党の方が自民党より上の採点が出る。中身を詳しく読み込んで比較した政治評論家からはそう評価される。だが結果はあのとおりだった。昨日の政治のニュースでは、最も注目を集めたのは安倍晋三の「改憲には五年近く必要」の話で、それと谷垣禎一との消費税導入時期をめぐる論争だった。憲法改正も消費税も、すでに具体的な日程の問題になっている。国民の関心はそちらに向かわざるを得ない。ちなみに、安倍晋三によれば、「合意が早まれば前倒しもある」ということで、決して五年先まで改憲しないと公約したわけではない。自民党の総裁任期は一期二年であり、長くて二期四年、五年間も総裁の座にとどまるのは稀で、小泉首相は選挙に勝ったからそれができた。

五年後を目標にしていれば公約は実現できない。私は憲法改正の国民投票はヒラリー当選前の08年8月だと
予想していて、それは今から二年後であり、安倍晋三の任期一期中である。改憲の国民投票で勝利して総裁二期目に入るつもりなのだろう。情勢を考えてみたとき、今回の小沢一郎の「基本政策」が臨時国会の論戦でどこまで有効な武器になるだろう。安倍晋三は新内閣で施政方針演説をして、そのままの勢いで教育基本法改正論議を仕掛けてくる。マスコミが教育基本法論議を後回しにして、小沢一郎の「公正」や「共生」にスポットライトを当てて国民の関心を向かわせるとは私には思えない。週末の政治報道番組は教育問題を中心に取り扱うだろうし、ワイドショーは特に政策の中身には立ち入らず、新閣僚の顔ぶれとか表面的なところで収めて終わりだろう。補選までの一ヶ月は瞬く間に過ぎて行き、教育基本法改正案が衆院を通過する。教育基本法改正については、通常国会でも反対世論は盛り上がらなかった。

共謀罪では大騒ぎになったが、教育基本法の問題を取り上げる人間は疎らで、私は意外に思ったものである。教育基本法改正に対してこれだけ反対世論の声が小さいのなら、憲法改正のときも、きっと私はあまりの反対世論の小ささに唖然とするだろうと思ったものだ。民主党の教育基本法改正案では安倍自民党に対する対抗軸にはならない。それに異を唱える者はいないだろう。まともな論戦にはならず、テレビで自党の教育基本法改正案の「優位」を説明する民主党議員は、例によって奇怪で陳腐な詭弁の駆使に終始する。想像するだけで脱力するし、それこそ岸井成格とみのもんたの絶好の餌食になるだろう。その横には福島瑞穂が座っていて....考えただけで気が滅入る。教育基本法改正の世論調査は一体どれくらいの賛成数値になるのだろうか。結論から言って、今回の小沢一郎の「基本政策」はタイミングが遅く、付け焼刃的で、成功とは評価できない。もう少し早く出すべきだった。そして名前をつけるべきだった。

安倍晋三の政策には「再チャレンジ」の名前がついている。小沢一郎の政策ビジョンには名前がついていない。名前をつけて、性格を一言で言い表して、マスコミで報道させ人口に膾炙させるべきだった。例えば私が小沢一郎なら、対抗軸の基本政策は格差是正に集中させて、現在の格差実態が五年後にはこのように解消されると具体的な数字で示し、その政策ビジョンに「日本共生計画」の名前をつけて本を出した。国民が民主党に望んでいる対抗軸は格差解消であり、格差是正の諸政策と諸立法であり、新自由主義の政策で無秩序に破壊された労働と福祉の制度を再建することであり、分配を労働者と地方に戻すことである。その国民の期待に応える基本政策を打ち出した。これならマスコミも注目するし、対抗軸として誰もが明瞭であり、自民党支持者だって論議に関心を向ける。教育基本法改正よりもこちらを政治の争点に据えることができる。民主党の支持率も上がるだろう。そしてそれを総裁選報道がテレビを埋める前の8月下旬にやるべきだった。
小沢一郎は政治家として感性が古い。世耕弘成的なコミュニケーション戦略の意義の認識に欠けるところがある。それは以前は民主党のお株であり、自民党が弱い部分だった。7月に党のサイトをモデルチェンジしたときの担当者のセンスを私は買う。スタッフと代理店の声にもっと耳を傾けるべきだ。
それと、関連するが、記者会見の場所、特にカメラのバックグラウンドの問題がある。自民党の真似をせよとは言わないが、例のロゴパネルのボードを背景に使用するやり方が定着したと思っていたのだが、小沢一郎が変えてしまった。見ばえの問題は大事で、決してバカにしてはいけない。きっと代理店の若い担当は歯噛みしているだろう。それを代理店の上司が宥めている図が想像される。ブラインドシャッターの背景は絵にならなくてカッコ悪いよ。誰か小沢一郎を説得する人間はいないのか。