
憲法改正の問題というのは、実際のところは思想信条の自由の問題なのである。太平洋戦争のような大惨劇がすぐに再現されるという話ではない。改憲されることによって現実に不幸な境遇に陥るのは、今この瞬間に改憲阻止を声高に唱えている人たちであって、憲法問題に関心のない人たちにとっては特に直接的に大きな影響はないのだ。自衛隊はすでに存在して、国際貢献の名の下に海外派兵さえ当然視されている。憲法九条の文言を変えて、自衛権と自衛軍を明記することに何の不都合があるだろうと考える人の数が多くても不思議はない。何と言っても二大政党の両方が改憲を基本政策に据えていて、護憲派は院内で一割未満の勢力でしかないのである。何で憲法で大騒ぎするのだろうと思う人間がいるのは当然で、憲法問題に関心のない人間にとっては改憲は生活に関係ないどうでもいい問題なのである。踏み込んで言えば、改憲とは改宗の問題である。事実上の異端が公式の異端となって社会的に排撃されることである。

昨夜(9/18)の日本テレビの政治特番で、粕谷賢之が安倍晋三に対して「参院選では憲法改正を前面に出して戦うのか」と質問していたが、安倍晋三は巧みに話を逸らして回答をはぐらかしていた。粕谷賢之はさらに「衆議院を解散してでも憲法改正を実現するのか」という質問を発したのだが、安倍晋三は「野党と合意の上で発議ができればいい」と答えていた。粕谷賢之の頭の中では、おそらく私と同じように、安倍晋三は改憲を参院選の争点に据えるだろうと予想していて、それを本人の口から聞き出そうとしたのだろう。安倍晋三は今の時点ではそれを宣言することはしない。ジワジワと環境を固めて行って、来年の7月にはそれを争点にして選挙に勝つように状況を運んで行く。無論、改憲以外に確実に勝てる選挙争点が見つかれば、そちらの方に争点を切り替えることもするだろう。安倍晋三にとっては選挙に勝つことが大事なのであり、負ければ権力の座から滑り落ちるのである。冷や飯組の派閥の連中はそれを待ち望んでいる。

改憲を阻止するためには具体的にどうすればよいか。具体論について述べたいが、最も大事なのは護憲派の危機感である。勝負はこの十ヶ月間で決着するという
正確な情勢認識を持つことだ。国民投票が五年先か十年先の日程にあるというような誤った認識を捨てることである。改憲阻止のマイルストーンとしては、まず10月の衆院補選がある。ここで自民党が勝つと安倍晋三の改憲攻勢に弾みがつく。予想では、神奈川は自民党の勝ちで大阪が接戦という情報になっている。提案だが、野党はすぐに党首会談を開いて、補選での共闘を宣言すればどうか。昨年の総選挙で呼びかけた
内容と同じだが、共産党は候補者を出さず、票を民主党に回すことだ。昨年の衆院選では、大阪の自民党の当選者と民主党の次点の票差は約3万票で、共産党候補の得票は2万7千票である。共産党が票を流せば十分に勝てる。神奈川16区の方は票差7万1千票に対して共産票2万1千票なので、埋め合わせとしては不十分だが、それでも勢いを作ることはできる。

選挙協力のための三党協議を持って、例えばそこで「今後五年間の発議賛同なし」を民主党に約束させればどうか。つまり改憲サスペンデッドの合意である。この基本合意を土台にして統一地方選と参院選での選挙協力に発展させる。民主党の新憲法草案は作業が難航していて、それでなくても党内で早急の調整を図るのは難しい。であれば、取り纏めのための時間を取って、改憲猶予を自民党との対立軸にするという憲法政策にすることもできる。民主党にとっては憲法改正よりも政権交代の方が重要なのだから、選挙協力を交換条件にした改憲サスペンデッドなら妥協として応じられるだろう。民主党が本当のパートナーとして考えている公明党も、本音のところは改憲慎重論であり、すなわち
民公同盟を見据えた改憲サスペンデッドは小沢民主党の政策設定としてリーズナブルなものである。民社共の選挙協力は参院選までのもので、目的は安倍自民党の勝利(改憲)を阻止するためのもので、政権交代後の小沢政権の性格を拘束するものではない。

沖縄県知事選では全野党共闘が実現した。これはグッドニュースである。東京都知事選でも野党統一候補を出すべきだ。具体的には田中康夫。田中康夫なら全野党で乗れるだろう。石原慎太郎と安倍晋三は都知事選を「憲法改正を問う参院選挙」の前哨戦に位置づけるはずで、ここで石原慎太郎に簡単に勝たせるようだと、安倍晋三とマスコミによる参院選の争点設定は動かせないものになる。全野党が結集して石原三選を阻止すべきで、民主党は政権交代の前哨戦と言って訴えればよいし、社民党と共産党は憲法を守る選挙戦だと言って戦えばよい。目的は同じでなくていい。都知事選の勝敗は参院選に大きく響く。もし民主党が石原慎太郎に対して別候補を立てて戦うのであれば、共産と社民の支持を得て、有力候補で一騎討ちに持ち込んだ方がいいに決まっている。そこで石原慎太郎の首を奪ることができれば、安倍晋三が参院選の争点に憲法改正を設定するのはきわめて難しい情勢となる。マスコミの支持を得られなくなる。自民党は争点設定に迷う。
そうなると、選挙は自ずから政権交代を問う選挙へと傾く。これまでの「改革」政策の是非が問われ、社会保障の制度設計が論議される。論戦は明らかに民主党の優位となる。風が安倍晋三に吹かなくなれば、創価学会も自民党のための集票はやめる。一人区で自民党が全滅する。マイルストーンは10月の衆院補選と来年4月の東京都知事選である。改憲サスペンデッドで合意して全野党協力体制を敷くべきだ。時間がない。早急に三党協議を。
三党協議の幹事役になるのは福島瑞穂だが、この協議を裏で根回しする策士が必要である。適任として考えられるのは、やはり山口二郎であろう。「政治改革」(=小選挙区制導入)を仕掛けた責任者として、「政治改革」失敗の罪滅ぼしとして、「政治改革」の尻拭いとして、この三党協議実現に動いてもらいたい。
国会情勢を考えると、すぐに教育基本法改正の審議があり、これは全野党共闘を組む上での大きな障害となる。この問題をどういう方向に導けばよいか難しいが、共産党と民主党の党首に知恵と飛躍が必要になる。民主党の改正案(日本国教育基本法案)では、とても与党案の対立軸にはなっていない。いっそのこと、思い切って、電光石火で三党協議に公明党を巻き込むことを考えたらどうか。公明党を自民党から引き剥がすクーデター。
西日本新聞は今回の沖縄県知事選の六野党統一候補の実現について、「ガラスの連携」と見出しを打っている。詳しくは知らないが、おそらく西日本新聞の言うとおりなのだろう。選挙戦になったとき各勢力が共同できるかどうか不安もある。が、東京方面から言わせてもらえれば、ガラスでも、セラミックでも、プラスチックでも、アクリルでも、何でもいいのである。何でもいいのだ。一本に纏まることが大事なのだ。