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by thessalonike4
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東京地裁判決と教育基本法改正 - 信念と美学に殉じて滅べ
b0087409_11384346.jpg日の丸・君が代の強要を違憲と判断をした9/21の東京地裁の判決は常識的で妥当なものである。判決を読んだとき、すぐに「常識的で妥当」という言葉が浮かんでブログの記事に書こうと思っていたら、教育評論家の尾木直樹の朝日新聞(9/22社会面)のコメントに先を越された。常識的で妥当と思う理由は、特に日の丸・君が代の歴史的性格について正確に判断している部分で、判決文の中の次の指摘である。「我が国で日の丸、君が代は明治時代以降、第2次世界大戦終了までの間、皇国思想や軍国主義思想の精神的支柱として用いられてきたことがあることは否定し難い歴史的事実で、国旗、国歌と規定された現在においても、なお国民の間で宗教的、政治的にみて価値中立的なものと認められるものに至っていない」。この判断がよい。事実認識として正確である。こういう判断を下すとき、我々は司法の素晴らしさを実感する。当然の判決ではあるが、ここまで踏み込むには勇気が要る。



b0087409_1138564.jpg国旗、国歌は自然のうちに国民の間に定着させるというのが国旗・国歌法の制度趣旨であり、学習指導要領の国旗・国歌条項の理念と考えられる」。この判断もよい。そのとおりだ。この法律が制定されるとき、国会でもマスコミでも喧々諤々の議論があったが、そのとき制定賛成側の論者や報道キャスターが繰り返し言っていたのは、「決して強制ではないから」という一言だった。「強制ではないから」の言葉に誘導されて、世論は法律制定に賛成多数になった。これに似た世論の安心を工作する詐術の事例は他にもあるような気がする。小選挙区制を導入する政治改革関連法案が通るときも、岸井成格たちが「小選挙区制がよくなかったら、また元に戻せばいいんだから、この制度で何度か選挙をやってみて、それで悪かったら元に戻せばいい」と言って躊躇する世論の背中を後押ししていた。元になんか戻らない。戻るはずがない。「強制ではないから」の言葉で騙して法律を通し、教育現場で強制をしていたのである。

b0087409_113991.jpg今回の判決に対して、原告の女教師がNHKの7時のニュースの映像の中で「思いもよらない判決で」と正直に語っていた。私の個人的感想としては、あの二年前の園遊会の席で天皇陛下が東京都教育委員の米長邦雄に言った「強制になるということではないことが望ましい」の発言が大きく影響しているのではないかと思われる。あの一言がなかったら、今回の判決はあったかどうか。あの一言があったおかげで我々は主張の正当性を補強でき、異端から正統へと立場主張することができる。今度の判決は臨時国会の教育基本法改正論議に一石を投じることになるだろう。政府与党側にとっても「思いもよらない」判決だったはずである。だが、私が抱くもう一つの感想というか不安は、このような国民の思想信条の自由を守る(当然の)司法判決が、二度と再び出ることはないのではないかという悪い予感である。司法の良心と良識が示される最後の歴史的判決なのではないか。裁判官もそう思いながら判決したのではないか。

b0087409_11391955.jpg改正後の教育基本法は生徒に愛国心を涵養することを要請するもので、その趣旨に従えば、都教委側の主張の方に妥当性を傾けざるを得ない。教育基本法を変えるということはそういうことである。国の常識を公式に転換するということだ。さらに現憲法が新憲法に変えられたとき、自民党草案の憲法の世の中になったとき、今度のような判決を裁判所が出せるとは到底思えない。それは大日本帝国憲法の下で今回の判決を期待するのと同じ論外の権利主張のように思える。が、あと数ヶ月後に教育基本法が改正されようとしているのに、この静けさは一体何なのだろう。憲法が改正されるときも、実際にそのときになれば、きっと、このくらい静かなのに違いない。何と言っても、日教組が全く動いていない。日教組が支持している政党である民主党は、与党案よりも積極的な愛国主義の新法案で「対立軸」を示そうとしている。民主党案取り纏めの座長は西岡武夫で、西岡武夫は「教育基本法改正促進委員会」の最高顧問である。

b0087409_1139311.jpg教育基本法を死守しなければならないと考えている教師がいるのなら、なぜもっとアクティブにビジブルに動かないのか。たとえ一人でも英雄的に抵抗する姿を見せようとしないのか。ブログを立ち上げて教育基本法改正反対のセンターになろうとしないのか。通常国会のときからあまりに静穏すぎて不気味だったが、安倍政権ができて臨時国会が始まろうとしているのに何も動きがない。何度も言ってきたが、教育基本法は憲法の内面法規であり、すなわち大日本帝国憲法にとっての教育勅語と同じペアの存在であり、これを改正されることは大坂城の外濠を埋められることと等しい。だからこそ、改憲勢力は教育基本法改正を決定的な里程標として外さず位置づけてきたのであり、この手順と目標は何十年も前から変わっていないのだ。改憲勢力の方が教育基本法の意味と重要性をよく認識している。「護憲は息の長い戦い」などと嘯いて悠長に構えている者が相変わらず多いが、その情勢認識が根本的に誤っていることを一刻も早く知るべきだ。

危機感を持っている百人の教師がブログを作れば、百騎のブログ軍団ができる。経験から言って、それはネットの中の声として決して小さくはならない。外濠が埋められ、天守閣が焼け落ち、城を枕に滅びるのなら、その気があるなら、せめて幸村になって歴史に名前を刻むことを考えたらどうだ。百騎の精鋭の武者を編成して、家康の本陣まで疾駆突撃して討ち死にしたらどうだ。乾坤一擲のワンチャンスに賭けたらどうだ。意地を見せろ。生と抵抗の証を残せ。教育基本法の殉教者となれ。信念と美学に殉じて滅べ。

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by thessalonike4 | 2006-09-22 23:30 | 共謀罪 ・ 教育基本法改正
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