
安倍晋三が07年度の税制改正で6千億円の法人税減税を
発表した。企業が利益から控除できる減価償却限度額を現行の設備購入価格95%から100%に拡大する税制変更によって実現する仕組だが、企業にとってはまさに天佑で、経営上の恩恵は計り知れないものがある。
一般会計の中の6千億円は巨額で、国債を発行して財源にするのでなければ、社会保障や文教予算の枠から相当金額を削り取って来なければならない。恐るべき新自由主義政策の発表であり、それを新内閣発足の支持率が出る前に公表して憚らない安倍晋三の自信に驚愕するが、こうした政策に対して企業に対するバラマキだと批判する声はマスコミからは上がらない。マスコミがバラマキだと
批判するのは民主党の「農家所得補償制度」に対してである。企業に対する特別手当はバラマキだとは言わず、弱者である農家に対する支援給付はバラマキだと言う。国民もすっかり新自由主義のイデオロギーに洗脳された。それにしても、自民党は米国の共和党や英国の保守党と同じになった。

党三役や新閣僚の顔ぶれを予想する報道を聞くと気が滅入るが、基本的に小泉政権の発足以来、この国の政権中枢にいるメンバーというのは変わっていない。同じ人間がいつも出てくる。森政権のときからそうで、中川秀直や中川昭一はずっと政権の中にいる。経済思想は親米新自由主義、政治思想は親米右翼国家主義。国民を不幸にする格差拡大の新軍国主義路線が続いている。竹中平蔵が権力から離れて、少し変化があるかと思ったが、その矢先の6千億円法人税減税政策だった。唖然とさせられる。竹中平蔵でもここまで踏み切れたかどうか。財務省の中で抵抗した人間はいなかったのだろうか。6千億円の一部は確かにIT投資に回るだろうが、ほとんどは内部留保の積み増しになるだけで、経済の循環には回らない。モノの投資ではなく、M&Aの資金になる。買収を防止するための資金対策になり、買収を仕掛けるための資金対策になる。王子製紙と日本製紙の騒動やアオキとコナカとフタタの一件を見ていると、好景気で蓄積された資本がどう回転機能しているかがよくわかる。

産業の循環の方向には回らない。設備投資や技術開発や人材育成による経営事業拡大の方向には行かず、M&Aの防衛や攻勢のために膨大な資本が使われている。それを経営の中にインプリメントせざるを得なくなっている。雇用を正規から非正規に変え、給与や厚生年金の負担を削減して捻出した利益を、企業はM&A対策の自己資本に繰り入れているのである。日本企業の企業会計の論理と構造が変わっている。従来のような薄い利益で事業を維持拡大する方式ではなくなった。経済システムの性格がそのように変わり、そのシステムを前提にした政権と政府ができていて、世論に支持されて磐石の体制になっている。昨日の「サンデープロジェクト」では、小沢一郎がまた出演していたが、前と同じく「官僚から権限と予算を奪って地方に回す」話をしていた。同じ話を四度ほど聞いた。
金子勝が「霞ヶ関支配打破ではなくて格差是正を前面に出せ」と私と
同じ事を言っていたが、小沢一郎は相変わらず「自民党は官僚主導だから悪い」を繰り返していた。霞ヶ関の官僚を悪者にして自民党批判する手法。

説得力がない。響いて来ない。しかしそれ以上によくなかったのは臨時国会対策の
話で、聞きながら唖然としてしまった。田原総一朗が今国会で与野党の対決が予想される五本の重要法案(①教育基本法改正法案、②テロ対策特措法延長、③共謀罪創設、④防衛庁「省」昇格法案、⑤国民投票法案)を示して、この中で自民党と妥協できるのはどれかと聞いたところ、防衛庁「省」昇格法案と国民投票法案の二本については自民党と合意できると言ったのである。21日(木)の
報道では、民主、共産、社民、国新の野党四党が国対委員長会談を行って、教育基本法政府法案、共謀罪創設の組織犯罪処罰法改正案と並んで、憲法改正手続きを定める国民投票法の与党案についても、野党が結束して反対する方針を確認したばかりである。小沢一郎はこの国体委員長会談での野党合意を三日後のテレビであっさり反故にした。この国対委員長会談は何だったのだろう。小沢一郎の言によれば、「これは手続法だから別に合意したっていい」という説明だったが、小沢一郎は自分が言っている言葉の意味がわかっていたのだろうか。

それに少し見ただけでも、枝野幸男が仕切って進めている民主党の国民投票法案と自民党の国民投票法案は
中身がかなり違う。二つを足して二で割るのは至難の業で、民主党の国民投票法案のハードルそのものが、言わば民主党の憲法改正への「牛歩戦術」と言うか、党内調整のための時間稼ぎを担保する物理的障壁の趣があった。まさか小沢一郎は今国会で国民投票法を成立させるつもりなのだろうか。この発言は護憲派には相当に
ショッキングなニュースのはずで、10月の補選に影響が出るのは間違いないと思われる。民主党を勝たせるべく投票を考えていた護憲派は二の足を踏むだろう。小沢一郎は保守票に手を突っ込むべく配慮をしたのかも知れないが、
改憲サスペンデッドで野党共闘を考えていた私にとっては、この発言は裏切りである。小沢一郎は何を考えているのか分からない。ひょっとしたら、安倍晋三の改憲戦略に先手を打って、参院選で憲法改正が争点になってもいいように、その争点で選挙しても勝てるように、改憲の争点化を封じるために、予め民主党の党内を改憲で纏める腹かも知れない。そうなると改憲は避けられなくなる。
参院選前に自民党と民主党で改憲の合意ができるということになる。その場合は、民主党は選挙に勝つかも知れないが、自民党同様、改憲を選挙公約(政権公約)に据えたわけだから、政権を取ったら改憲(九条改正)を断行しなければならなくなる。安倍晋三の代わりに小沢一郎が改憲の執刀をする。