週末(9/29)に
進退伺を出したまま、細野豪志は雲隠れをしていて、未だに党役職辞任の辞表を出していない。進退伺というのは判断を上司に委ねるもので、自分から辞めますという意思表示ではない。今回の細野豪志の「進退伺」は、意味としてはむしろ「開き直り」の範疇に属するもので、脛に傷を持つ身である幹部の弱腰を見透かして、「同じ前科のあるお前らに俺のクビが切れるのか」と居直りの態度を示しているのである。幹部が強気に出れない党の内部事情を承知の上で、進退の判断を幹部に委ねるという姑息で狡猾な手法を採り、時間稼ぎをして責任から逃げようとしているのだ。他の民放局はこの問題を無視しているが、テレビ朝日だけは熱心に取材していて、「スパモニ」と「スクランブル」の二つの番組で報道を続けている。テレビ朝日は視聴者に民主党の支持者が多い。だから民主党の話題に対する関心が高い。無論、電通が政治目的で意図的に仕掛けている面もある。安倍政権に補選で勝たせなくてはいけない。
ブログではこれまで小沢一郎の政策や思想について手厳しく批判を加えてきた。だが、小沢一郎の政論には美点がある。それは「どぶ板」の薦めであり、特に民主党の若手議員が襟を正して傾聴すべき哲学である。小沢一郎はどぶ板の薦めを言うとき、英国の選挙運動と戸別訪問の話を例に引くのだが、この話が非常に説得的に耳に入る。別に英国の選挙でなくても、どこでも法則は同じなのだ。選挙は営業である。握手した人の数、頭を下げた人の数、集めた名刺(名簿)の数、それで勝負が決まる。政治家は常に選挙区を回って人に話を聞いてもらわなければならず、人に自分の政策を聞いてもらうためには、一軒一軒歩き回って人の話を聞かなければならない。これは小沢一郎が田中角栄から学んだ原理と手法であり、経世会の伝統であり、そして民主党に最も欠落している要素であった。民主党の若手はどぶ板を重視しない。逆にそれを軽侮し、テレビ出演で顔を売って安易に人気を得ようとする。地道に汗をかこうとしない。
小沢一郎が党首になってよかったと思う点は、民主党からそうした軽佻浮薄な空気が消えつつあったところにあった。芸能人集団ではなく、本来の政党の姿に変わりつつあった。その面での小沢一郎の指導と貢献は素晴らしいものがあり、教育者として適格であり、菅直人では決して真似のできない指導者的資質があるように見えた。小沢一郎の重量感と安定感は、原口一博や河村たかしに象徴される
チャラチャラした軽薄なタレント政治家像とは対極のものであり、それこそが格差社会の歪の中で喘ぐ人々が民主党に期待し要求する集団属性だった。小沢一郎が民主党の農村政策に中身を入れ、一人区での勝利を宣言したとき、その言葉が我々に説得的に響いたのは、まさにそれが小沢一郎のどぶ板再評価の主張とセットになっていたからであり、すなわち思想的意味において、新自由主義によって失われたものを回復する視点を示していたからである。小沢一郎によって、民主党は都市政党と新自由主義政党の本性を揚棄しつつあった。
先の党大会で小沢一郎は
こう言っている。「
すべての国会議員・地方自治体議員が心を一つにして結束して選挙戦を戦わなければなりません。(中略) 全議員がそれぞれの地域で、それぞれのポジションで、一人ひとり責任を持ってそれぞれの役割を全力で果たしていただかなければなりません」。民主党にとって大事なことは、全党が一致結束することである。議員個々がチャラチャラと軽薄なスタンドプレーをしないことだ。一人一人が自分が党のために貢献することを考えることである。そして、この訓戒は小沢一郎の言葉だから説得的に届く。聞く者が共感して頷ける。しかるに、今回の細野豪志の不祥事は、補選を前にして全党一丸をめざす民主党の努力に深刻な一撃を与えた。
長島昭久はブログのコメント欄の閉鎖へと追い込まれた。そこには無念の心境が吐露されている。人に迷惑をかけるということはこういうことだ。本当なら、不祥事に対する世論のバッシングは、細野豪志が自分のブログで引き受けなければならないのである。
細野豪志はコメント欄を閉じ、またマスコミからも逃げ、代わりに長島昭久がバッシングの受け皿になっていた。週が明けて国会に帰ってきた細野豪志には、週末に地元で突撃取材ができなかったマスコミが寄って集る。それが商売だから仕方がない。逃げれば追いかける。追いかけて逃げた映像をテレビに出す。騒動が視聴率を稼げる間は醜聞を商品にして売る。ネタが新鮮な間に売りまくる。心配なのは、細野豪志関連で今週の週刊誌が動いて、別の醜聞が出ることだ。何もなければ問題はないが、もしも新しい問題が出てきたら、第二の永田寿康事件(偽メール事件)に発展する。春と同じように国会で何もできなくなる。本人が辞表を出さないのなら、執行部が細野豪志を解任すべきである。小沢一郎はそう鳩山由紀夫に指示を出すべきだ。見逃してはいけないし、時間を使ってはいけない。大阪の有権者とサポーターの前に断固たる姿勢を示して、党の信頼回復を素早く図るべきだ。時間を延ばすと傷が深くなる。それが偽メール事件の教訓だった。
週末のテレビ番組を見たかぎり、地元の有権者は今回の不祥事に厳しい反応を寄せていた。有権者は「NEWS23」を見るたびに不祥事を思い起こす。江田五月は小沢一郎と菅直人と鳩山由紀夫を説得せよ。辞任に応じなかった場合、党の結束を乱す不逞の輩は民主党の名簿から除名すればよい。躊躇するな。
細野豪志の場合、単なる不倫疑惑だけでなく、密会の交通手段に議員特権であるJRのフリーパスを使用した疑惑が上がっている。9月20日(水)に品川駅の新幹線ホームで目撃されたものだが、細野豪志はこの疑惑に対して十分な釈明をしていない。新幹線ではG車に並んで座っていたらしいが、二人で向かった先はどこなのか。京都ではないかという噂が出ている。ワイドショーや週刊誌が細野豪志を追いかけて聞き出そうとする問題の第一は、このJRフリーパス不正使用疑惑なのである。国民に対して納得のいく説明が必要だろう。