
日本経済新聞、朝日新聞、読売新聞の大手新聞3社がネット事業で提携、来年初めにも共同のニュースサイト設営する。この
ニュースは9/18刊の週刊ダイヤモンドで最初に
リークされ、10/1の三社共同記者会見で正式にプレスリリースされた。この発表に先がけて、産経新聞がマイクロソフトと組んで10/1から「MSN産経ニュース」を共同運営する
発表が9/25になされた。新聞とネットをめぐって報道産業のビジネスモデルが大きく変動しつつあり、誰もがこの動きに関心を寄せざるを得ない。三社共同のポータルサイトの設営については、いろいろな観測が示されているが、その中で動機として強く感じるのはYAHOOに対する対抗である。現在、この三社の中でYAHOOにニュースを配信しているのは読売だけで、朝日と日経は流していない。10/1の記者会見の中でも、読売新聞に対してYAHOOへの配信をやめるのかという質問が出された。

ニュースを新聞で読むのではなく、ネットで読む人々が増えている。報道全体の中でのネットの比重、特にYAHOOの役割が決定的に大きくなっている。今、どのような事件が起きているかを、新聞の紙面を読んで知るのではなく、YAHOOのトップ画面で見知る人々が増えている。ネットのポータルで報道にアクセスする人々が増えているという現実は、伝統的な報道産業の大手事業者である新聞社にとっては大きな危機であり、逆に、ネットから新規参入を果たそうとする報道ベンチャーにとってはチャンスであろう。数年前からネットを媒体にした新規のニュース配信事業者、いわゆるニュースポータルが何本か立ち上がり、現在もある程度の存在感を持って運営されている。ネット利用者の一人として、ニュースポータルの動向に期待と関心を持って追っているが、管見のかぎりでは、YAHOO以外のニュースポータルで魅力的に感じるものがない。

ザッツフィールだが、YAHOOのニュースサイト、特にトップページのトピックスに表示される7点のヘッドラインは、他のポータルに較べて明らかに速報性の面で優れており、また、そのとき大多数の市民が関心を抱いている情報を的確にピックアップしていると言える。逆に言うと、他のニュースポータル、例えばエキサイトとかライブドアは、デリバリーのスピードが遅く、遅いだけでなく、ニュースのアソートメントに妙なバイアスがかかっている印象がある。バイアスがかかっていると言うより、編集を担当している人間が報道者として総体的にニュースへの関心が狭く、低く、感性が鈍く、アマチュア的でセンスが悪い印象を拭えない。もう少し言うと、YAHOO以外のニュースポータルは、YAHOOに対して挑戦者として自己を位置づけていると言うよりも、戦略的にマスの報道市場を取りに行くのではなく、YAHOOの周辺で、ニッチな情報市場を捕捉しようとしている感がしてならない。

芸能情報やIT情報、コネタ系に執着しすぎている点も気になる。大型のジャーナリストの存在感がない。そういう不満感があり、今回の大手三社のニュースポータルの動きには個人的には大いに期待をしたい。ブログ左翼は「大新聞を読むな」と大声で連呼しているが、私は全く別の感覚を持っていて、逆にブログばかり読んでいると確実に頭が痴呆になる。ブログを読み通した後で朝日新聞を一面から読むと、情報媒体として中身が充実していることを率直に感じる。その政治的スタンスや構造改革に対する誤った視角や誘導は別にして、新聞上にある記事の視界の広さや情報の多さにあらためて驚かされるし、情報の分厚さや中身の濃さでブログとは比較にならないように感じられる。新聞を読まずにブログだけ読めと言うのは、まさに文化大革命の思想と同じで、すなわちオーウェル的世界そのもので、前頭葉を薄くして人間をロボットにする悪質な扇動と同じではないかと私は思う。

YAHOOにニュースを配信している主力は、現在は毎日と産経と時事である。基本的にこれだけでも十分に報道はカバーできる。だが、情勢の変動と事業者の合従連衡の中で、産経が離れ、毎日が離れ、YAHOOのニュース供給源が細く薄くなる可能性は今後十分に考えられる。そのときYAHOOはどうするのか。恐らくそうした展開も孫正義は想定の範囲として織り込んでいるのだろうけれど、私の希望とすれば、YAHOO自身が有能な記者を発掘、育成し、新聞社やテレビ局を凌駕する大型の報道機関になることを希望する。ライブドアがPJの事業を始めたとき、(擬似的ながら)少しそうした雰囲気がネットの巷に漂った。が、PJの中で才能のある人間が登場せず、ライブドアのポータルそのものが堀江貴文の個人宣伝とライブドア社の株価操作の道具の性格を最初から持っていて、ニュースサイトも一般市民の支持や期待を集める「報道機関」の形態にはならなかった。YAHOOのライバルにもなれなかった。
さて、「MSN産経ニュース」の方だが、一見してコンセプトは悪くない。と言うより、非常にいい。新聞より早くニュースを出すとか、紙面(紙幅)の都合上新聞には出せていない情報 (例えば公判記録の全文) を漏れなく出すなどの姿勢は画期的で素晴らしい。ネットを片手間として考えず、本格的に大きな事業を立ち上げようとする意気込みを感じる。新しいチャレンジで世の中を変えようとしている。大手新聞社の競合とテクノロジーの進展の中で生き残りを賭けて挑戦を試みる企業の姿勢は評価できる。今後の動きを注目したい。