10/29の証人喚問を控えて、防衛省疑惑事件も徐々に佳境を迎えつつある。朝日新聞もようやく社会面に記事が出るようになり、10/27(土)の朝刊では、やっと「(東京地検が)元専務を立件へ」の見出しが打たれた。容疑は山田洋行の宮崎元伸が米国の子会社から1億円を不正に引き出した業務上横領。これまで新聞紙面に出たものだけを拾っても、本丸である
贈賄の前に
特別背任やら
業務上横領やら
不正会計やらがあって、宮崎元伸は起訴されるときにいくつ公訴事実と罪名を並べられるかわからない。まさに防衛疑惑の総合商社。そして同じ朝日新聞の社会面には、いよいよ真打ち登場と言うか、「元専務、久間元防衛相と会食」の小見出しも踊った。同日夜のNHKの7時のニュースでは、記者が久間章生を取材して「(宮崎元伸との)会食は
大臣規範違反ではないか」と直撃質問する映像が放送された。この前日の10/25(金)から、スポーツ紙を含むマスコミが一斉に久間章生の疑惑報道を解禁した。
報道は明らかに時機を計った特捜のリークとコンダクトによるものであり、すなわち地検の捜査のスコープの中に久間章生が入っていることを意味する。こうなれば一日も早い一斉捜索が待たれるわけで、年に一度の大捕物の映像にマスコミ関係者も気もそぞろの日々だろう。市ヶ谷の
防衛省正門前、六本木の
山田洋行本社前、赤坂の
日本ミライズ本社前、新宿区の守屋武昌の自宅前、宮崎元伸の自宅前、都内数ヶ所にテレビカメラの放列ができる。そして防衛省正門から玄関への通路を、あの黒のパンツスーツの若い女検事を含む大検事団が隊列を組んでザッザッと直進する。そのカタルシスな映像がリアルタイムで全国に生中継される。一斉捜索の開始は夕刻だろう。午前中に検事総長同席の合同会議で捜査方針を最終確認、午後に裁判所から捜査令状を取り、マスコミにリークして臨時ニュースのテロップを流させる。そして黒服軍団の隊列を同時に一斉行進させる。容疑者たちが
小菅拘置所に送致される。
さて、今度の防衛省疑惑事件の一つの大きなヤマが沖縄の普天間飛行場移設に絡む辺野古の米軍基地建設の利権問題であり、先週発売された週刊文春の記事の中にもそれに触れた件がある。田中代表がメールで教えてくれた山岡俊介の「
ストレイ・ドッグ」には、実はこの疑惑の核心をズバリ衝いた衝撃記事があり、それを読んで仰天した私は、守屋武昌の証人喚問を前に、この重大情報をブログの読者に届けないわけにはいかない。辺野古基地の建設計画が、海岸部を含んだV字型のプランと滑走路を沖合いに出す洋上型のプランの二つあり、二案で対立したまま未決着である事実は広く知られている。そして政府と米軍はV字案を支持し、地元の移転賛成派住民が洋上案を支持している事実もNHKの報道で周知のものとなっている。私は無論、移転そのものに反対で、普天間の海兵隊は無条件に米本土に帰還せよの立場だが、ジュゴンの生息にとってさらに悪い影響がある沖合案をなぜ地元住民が支持するのだろうと不審に思っていた。
NHKの報道番組で見たとき、地元住民の意見として、V字案では米軍ヘリが居住地区の真上を滑空飛行するため、危険であり、騒音被害が大きいから沖合案の方がよいのだという説明になっていた。一応なるほどと頷いていたが、実はそこには利権をめぐる裏があった。「ストレイ・ドッグ」の記事によると、海岸利用のV字型では水深30mの大浦湾が工事地区に含まれ、その場合、埋立工事が技術的に高度になり、東京のゼネコンに工事を取られてしまう。沖合型の場合、水深10m以下の浅瀬の埋立であり、地元業者の技術でも工事を受注できる。この埋立工事(だけ)の総工費は3300億円と言われている。そこで、工事をゼネコンに奪われたくない地元業者が、V字型を推進する守屋武昌に対抗するべく接近したのが久間章生であり、また守屋武昌と対立した小池百合子であった。小池百合子と守屋武昌の喧嘩が表面化したとき、騒動の真っ最中に小池百合子が急きょ沖縄を訪問、その解説で普天間移設問題をめぐって両者が云々という妙なニュースがあった。
小池百合子が名護市長の島袋吉和と握手ししたとき、島袋市長が小池百合子に「ツーショットで映ってもいいんですかね」などと妙なことを言い、小池百合子がそれに「余計なことは言わんでよろしい」と高慢な態度で応じ、マスコミがここぞと小池百合子の傲岸ぶりを書きたてたが、あれは、表向きは確か「かりゆしウェア」に関する訪沖で、それを基地問題をめぐる沖縄住民の「小池支持」と「守屋批判」をマスコミに演出報道させるために小池百合子が仕組んだ政治宣伝のイベントだったはずだ。空気の読めない小池百合子にとっては逆効果の芝居となった。あのときは何のことだかよく分からず、単に小池百合子の方が沖縄住民寄りの立場を示しているらしいという感触を持っただけだったが、こうして暴露記事が出ると裏の意味がよく分かる。一説では、北海道沖縄開発庁長官だった頃から小池百合子は沖縄利権に手を染め始めていて、すなわち防衛大臣に就任して、総額1兆円と言われる莫大な普天間移転・辺野古利権を手にするべく、一気に守屋武昌斬りに出たという筋書きになる。
小池百合子が守屋武昌との暗闘に敗北したのは、V字型着工を求める米軍サイドの意向が強く働いたからだろうか。長く環境大臣をやっていながら、小池百合子は国会で、「地球温暖化でジュゴンの生息北限は辺野古ではなくなる」などとふざけた答弁していた。この守屋武昌の疑惑問題が最初に浮上したとき、小池百合子はNHKの直撃取材に答えて、「そういう事(宮崎元伸による守屋武昌へのゴルフ接待)も承知していた」と言っていた。何をどこまで知っていたのか。贈収賄疑惑を承知していたのなら、なぜ大臣として速やかに調査し告発することをしなかったのか。小池百合子に聞きたいところだ。そして囁かれているところの本人の沖縄利権疑惑は本当に潔白なのか。小池百合子は前防衛大臣として国民の前で説明する責任がある。防衛省疑惑の政治家証人喚問は、久間章生だけでなく小池百合子も必要だ。
【参考情報】
山岡俊介の 「ストレイ・ドッグ」
8・18 防衛省次官人事騒動の裏に、沖縄・普天間飛行場移転利権争い
9.1 米軍普天間飛行場移設問題――地元が沖合い修正にこだわる本当の理由
週刊文春11/1号の守屋疑惑関連記事はP.27上段を参照