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二項対立の選択脅迫と既成事実への屈服 - 現実主義の陥穽
b0087409_12521847.jpg昨日(11/11)の朝日新聞(4面オピニオン)に姜尚中と山口二郎の対談記事が載っていた。姜尚中は「大連立はある種の詐欺だ」と小沢一郎を批判し、山口二郎も「小沢さんのもとで総選挙を戦おうとしても、党内は疑心暗鬼だろうし、プッツンする人が次の首相候補と言われても国民も困ると思う。この体制で政権交代を起こすのは難しいだろう」と言っている。一方、ネットの中には相変わらずファナティックな小沢一神教の信者がいて、小沢一郎を擁護する政治宣伝の連呼を鳴り止めようとしない。彼らが繰り出す脅し文句の一つは、これは野党と野党支持者を分裂させようとする自民党の策略であり、したがって小沢一郎を批判することは反自民勢力を分断させようとする自民党の謀略に乗せられることにあり、自民党の策謀に嵌められたくなかったら小沢批判の口を慎めというものである。この台詞はどこかで聞いたような覚えがある。



b0087409_12531039.jpgアフガンに侵攻したソ連を批判するのは、米帝国主義の宣伝に乗せられる軽挙であり、米帝国主義の陰謀に踊らされたくなければ、善良で民主的な日本の市民はソ連批判の口を慎むべきである。ソ連の人権問題や強制収容所の問題を批判するのは、世界の労働者階級を分断しようとする米帝国主義の策動に嵌められているだけの利敵行為であり、米帝国主義と戦う労働者階級であれば、社会主義の祖国ソ連を信じて最後まで支持するべきである。プロパガンダというのは時代が変わってもパターンは同じだ。盲目的なソ連信者の左翼にとって、ソ連に都合の悪いことは全て米帝国主義の陰謀だった。小沢信者たちが仕掛けるプロパガンダのもう一つは、それじゃ民主党がだめなら他にどの政党に投票するのか、自民党に勝てる党はあるのか、民主党を批判して弱体化させれば自民党が選挙で勝つだけではないかという脅迫である。

b0087409_12534378.jpgこの政治宣伝の脅迫論理は、今回に限らず、民主党が選挙で二大政党制の実現を訴えて票を集めるときに常に繰り返してきた常套句で、社民党や共産党の支持者たちに対して、死票は無駄だから民主党に投票しろと迫る「よりましな選択」の論法だった。選挙で政権交代を言いながら裏で自民党と大連立を組む陰謀に走る政治を「よりましな」政治と言うのは無理があり、それを支持することが「よりましな選択」だと言うのはどう考えても無理がある。ここまで来れば、このプロパガンダ・スピーカーは、単なる小沢信者ではなく、民主党の世論工作者だと疑われてもやむを得ない。前原誠司が代表になっても同じことを言うのだろうか。「less worse を選ぶのが政治である」などと尤もらしい「現実主義」を唱えて誘導するのだが、この民主党信者の「現実主義」は、現実主義と言うよりも単なる思考停止であり、さらに言えば既成事実への屈服の薦めである。

b0087409_12542148.jpg丸山真男は、『現実主義の陥穽』の中で、日本人の言う「現実主義」が常に「既成事実への屈服」である真実を衝いた。現実がこうなっているからという論法で、その現実を変えようとする運動や思考は常に「非現実的」とか「観念的」のレッテルを貼られて排除される。いま眼前にある政治的現実が動かしようのない固定した軌道のように前提され、その前提の上で次の政治が方向づけられ合理化されて行く。しかし現実というのは、実際には日々生起生成しているものであり、変化する生きものであり、自分たちが選択によって作って行くものである。現実は、与えられた所与ではなく、与えられるものではなく、自分たちが主体的に作り出して行くものだ。既成事実と現実とは違う。政治は自分たちの力で変えることができる。自民党が圧倒的多数の国会でも、FAXや電話の攻勢で議員を動かすことはできる。集会や署名で意思を示して政策に影響を与えることはできる。

b0087409_12545746.jpg二項対立の前提拘束を強調して、二者択一の固定的思考へと観念強迫するやり方は、昔も今も変わっていない。昔はこう言われたものだ。世界は資本主義と社会主義の二つの陣営に分かれていて、国家も個人もどちらかに所属するしかなく、どちらに与するかを態度決定するしかない。「よりまし」だと思う方を選べ。それしか現実には選択肢はない。完全な理想の国や社会などない。第三の道などなく、現実は二つに一つでどちらかを選べ。それがless worseの政治だ。今、現実主義を振りかざして小沢一郎と民主党への帰依を要請している者たちは、民主党の中に反小沢の動きが胎動している現実を見ていない。この動きは地下で潜行し、遠くない時期に必ず地上に噴出するだろう。それからまた、この「現実主義」者たちは、小沢一郎が民主党の政策を新自由主義から社会民主主義に転換させたと言っているのだが、この「現実」認識は果たして妥当なものだと言えるのだろうか。私には疑問がある。

b0087409_12553117.jpg前代表の前原誠司が極端な新自由主義路線を掲げていたから、そのせいで代表が小沢一郎に替わってからの民主党は政策を転換したように見えるが、果たしてそれが小沢一郎のイニシアティブによるものなのか。農家最低所得保障も含めて、最近の民主党の政策の舵を握っているのは菅直人の周辺で、昨年からの「生活第一路線」はその反映なのだろう。私は昨年ずっと小沢一郎の発言を注視していたが、テレビで発言する政策の内容は、格差是正や労働法制に関する問題は一切触れられず、「小沢ビジョン」の説明では、行政改革と集団的自衛権の話ばかりを延々とやっていた。今国会、マスコミも民主党支持者もテロ特措法と恒久法の問題にばかり注目するが、いわゆる「生活第一政策」の中で最も重要だったのは、最低賃金法と労働契約法の審議だったはずだ。民主党は参院選で最低賃金を時給千円に引き上げると訴えていて、多数を制した参院でどれほど精力的に政策実現に奮闘するかと期待したが、その中身は予想以上にお粗末なものだった。

われわれの眼前の民主党の「現実」は、連立協議の揺さぶりで党内が疑心暗鬼になっている現実であり、裏切られた国民が憤りと失望の目で眺めている現実であり、小沢一郎の指導力と政権交代の看板が地に堕ちつつある現実であり、森田実と山口二郎が代表交替を訴えている現実であり、最低賃金法審議で参考人質疑も行わないまま政府案に妥協して法案採決する現実であり、自民党との間でズルズルと安全保障の政策協議に入って行く現実である。

b0087409_13185863.jpg

《民主党は小沢代表一人に頼りつづける依存心を克服すべきだ》
- 森田実 11月10日 -

今回の“小沢騒動”のなかで、私が最も心配するのは、民主党議員の「小沢さん辞めないで」という依存心がさらに深まったのではないか、ということである。民主党には立派な人物は数々いるが、ここまで小沢代表を頼りにするのは、行き過ぎである。(中略)

民主党の議員の多く、とくに幹部の中には「小沢代表がいなくなったら民主党はやっていけなくなる。小沢代表以外に代表ができる人材はいない」などと、公然と言う人がいる。小沢代表へのゴマスリだとして割引しても、政治家の言葉としてとうてい容認できるものではない。政治家をめざして選挙で当選した以上、有権者に責任をもった言動をしなければならない。(中略)

小沢代表が辞職したらそれを素直に受理して、次の指導者を登板させるべきなのに、ほとんど全員が「小沢さん戻ってください」の大合唱を始めたことは、民主党議員自ら「私たちは無力・無能です。私たちはダメな政治家です」と言っているように私には聞こえる。(中略)小沢代表の辞任を素直に受け入れるべきなのにそれを受理せず、「慰留」の大合唱を組織した菅直人代表代行、鳩山幹事長ら執行部の罪は大きい。(中略)

いまからでも遅くはない。民主党は、真剣に出直しを健闘すべきである。12月に衆院が解散にならず、国会が閉幕したら、来年の通常国会が開かれるまでの間に、開催される党大会で代表選を行うよう、現執行部は総辞職して出直しを図るべきである。

合掌.。  謹んで故人のご冥福をお祈りします。  長妻...
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by thessalonike4 | 2007-11-12 23:30 | 大連立協議と小沢辞任
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