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by thessalonike4
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イデオロギー恐怖症を超えて - 自民党に勝利した経験から
b0087409_14323528.jpg小沢一郎が代表から離れて菅直人が代表になれば、民主党全体が左に傾いて選挙で農村の保守票が取れなくなるという危惧や懸念は、私から見るとあまりにイデオロギー神経過敏症の政治認識であり、イデオロギー恐怖症の態度に過ぎるように思われる。そこまでシンボルのイデオロギー性を重視するなら、投票行動におけるイデオロギーの介在を決定的な要素と見て対応を考えるのなら、左色の菅直人ではなくて無色透明の岡田克也を代表に据えればよかろう。岡田克也は04年の参院選を党首として戦って、小泉自民党に勝利した選挙実績を持っている。さらに言えば、左色だからと敬遠される菅直人は、03年の衆院選で党首として小泉自民党と戦い、比例の得票と議席で自民党を凌駕した実績を持っている。このときは全国の無党派層が菅民主党に流れた。選挙におけるイデオロギーの影響は年を追うごとに小さくなっていて、それが勝敗を分ける決定的な要素だとは現在では言えない。



b0087409_14325393.jpg05年の総選挙では、従来の政治構図で考えれば左側に属するはずの大都市の市民層が、雪崩を打って小泉改革を支持する一票を入れる行動に出たし、今年の参院選では、同じ彼らが年金問題と格差社会への不満から民主党に鞍替えしている。周知の話題だが、89年の「山が動いた」参院選では、社会主義政党であった土井社会党が自民党に圧勝し、参院における与野党逆転を実現している。このときの1人区では日本社会党は23勝3敗の成績を残した。89年は6月に中国で天安門事件が発生、11月にベルリンの壁崩壊が起きた激動の年で、少なくともイデオロギー的な空気の環境から言えば、左側の勢力にとって順風の季節ではなかった。私は、実はこのとき、選挙におけるマスコミの影響が決定的なものだと痛感した。よく覚えている。久米宏が、「僕もずっと選挙を見てきましたが、今度だけは絶対変わると思います」と言った。久米宏の予言したとおりになった。1人区で社会党が23勝3敗!

b0087409_14454182.jpg参院選挙の1人区は昔も今も農村県である。18年前とはいえ、農村県で社会党が自民党に圧勝したという事実は、有権者の投票行動においてイデオロギーを超える何かがあるということの証左以外の何ものでもない。その選挙で初めて社会党に投票したという保守層も多くいたはずだ。イデオロギー恐怖症の政治的配慮から、保守層の集票のために小沢一郎をシンボル利用するというプラグマティズムは、効果を期待できる半面、逆効果の可能性も十分考えられる。たとえば、従来は自民党に投票していた田舎の有権者が、小沢一郎の「政権交代」と「生活政策」に共鳴して参院選で初めて民主党に一票入れたのだが、小沢一郎の裏切りと不誠実を目の当たりにして、民主党への投票は二度としないと心に誓う場合である。イデオロギー的には小沢一郎に共感できるが、大連立の裏切り行為は許せないという保守層は少なくないのではないか。彼らは安んじて自民党への投票に回帰するだろう。基本的にどちらでもいいのだから。

b0087409_1433255.jpg効果の面を別角度から見ると、票の数こそ少ないものの、従来は共産党や社民党に投票していたのをやめて、参院選で初めて民主党に投票したという革新層もいたはずである。今度の事件が与えた彼らの傷心は大きいだろう。小沢一郎は未だに国民に大連立について説明していない。民主党議員には陳謝し、マスコミには「言葉が過ぎた」と謝ったが、国民には説明責任を果たしていない。大連立構想を断念したとも言っていない。それを小沢一郎の代わりに言ってやっているのは、母親がわりの鳩山由紀夫であり、相変わらず将軍様に対しては腫れ物に触るような扱いで、昨夜(11/13)もご機嫌とりに幹部総出でふぐ料理を食わせてやっている。共産党や社民党から民主党に票を変えた者たちの失望と怨恨は大きいだろう。次の衆院選で民主党は彼らから票をもらえるだろうか。私は鳩山ママの代弁を信用しない。小沢一郎が国民に釈明しないのは、大連立を諦めてないからだ。鳩山ママがご機嫌とりをするのもそれが恐いからだ。

b0087409_14334855.jpgネットの小沢信者たちは、鳩山ママ以上に小沢一郎を甘やかし、将軍様への媚び諂いをやめようとせず、政権交代のためには将軍様に土下座するのはやむを得ないと言い続けている。自民党政治を終わらせるためには小沢批判の口を慎めと言っている。私の見るところ、恥をかかされた小沢一郎には、再び政権交代を国民に訴える熱意と気力は残っていない。監視役である菅直人パパと鳩山由紀夫ママに両脇をブロックされた「政治的禁治産者」の境遇も耐えられないだろう。闇将軍になる野望を捨て、夜な夜な権謀術数を仕掛けるフリーハンドを奪われ、党役員会が管理する「民主党代表」の役を行儀正しくふるまうのは、我慢できないに違いない。次の総選挙の前には必ず一波乱ある。私は、別にそれを期待するわけでも待望するわけでもなく、小沢一郎に国民に説明責任を果たすように求め続けるだけだ。政権交代の約束を真っ向から裏切る大罪を犯しながら、国民に反省の言葉を言わないまま代表職を続けて済まされると思うのは大きな間違いだろう。

b0087409_1434493.jpgネットの中では小沢一郎批判のかわりに中曽根康弘や森喜朗への糾弾行動が喚起されている。私から見れば、森喜朗と小沢一郎は全く同質の政治家で、前近代的な古い自民党政治家の典型であり、イデオロギーも政策も政治手法も同じである。両者の違いを敢えて言えば、森喜朗の方が大人で小沢一郎が子供であり、森喜朗の方が数十倍好色であるにすぎない。中曽根康弘と小沢一郎はと言えば、イデオロギーは同じ右翼だが、中曽根康弘の方がはるかに優秀で、政治家として優れた資質を持っている。89歳の高齢で、どうしてあのように矍鑠(かくしゃく)とできるのか。「報道2001」で黒岩祐治が早口で質問を浴びせても、それに対して瞬時に明解な回答が返る。大脳のクロックスピードが驚くほど速く、大容量の記憶装置に大量のデータが詰まっている。その情報は最新のものでアップデイトされていて、シークタイムは異常に高速、バスバンド幅は広い。まさに現役。そこらの政治番組に出演する小僧政治家よりずっとキレのある政論を繰り出す。

あの89歳は男にとっては憧れの姿だ。メンズ・アンチエイジングのカリスマ。背筋は曲がらずピンとして、見事にスーツを着こなす。頭脳は明晰で、言葉に揺れはなく、関心は常に最新の情勢を追いかけ、最後まで自己の夢の実現(中曽根の場合は憲法改正)を執拗に追いかける。ウェーバー的。男はああでないといけない。

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【補 遺】

89年に土井社会党が1人区で勝ったのは、別に労組が動いて票をかき集めたわけじゃない。組織選挙で票を取ったのではない。そして、当然のことだが、有権者が社会主義を支持したわけでもない。土井たか子の護憲路線が支持されたわけでもない。消費税とリクルート事件があり、国民の自民党政治に対する怒りが爆発して、その不満と憤激の受け皿として社会党が選ばれただけだ。野党が自民党に勝つときは、シンボルが左であろうと右であろうと関係ない。民意が変わるとき、イデオロギーの左右は問題ではないのだ。そのことを理解して欲しいのだ。

一部の小沢信者は、自民党政治を終わらせるために小沢一郎を支持せよと絶叫するのだが、これは明らかに論理矛盾である。なぜなら、小沢一郎の大連立構想は自民党政治を終わらせるものではなく、自民党政治を生き延びらせるものだからだ。小学生でもわかる。代表復帰の記者会見を見てもわかるとおり、小沢一郎は大連立構想を撤回していない。小沢一郎が代表に復帰するに際して、民主党役員会は小沢一郎に何の条件も付さなかった。すなわち、大連立協議の撤回と放棄は小沢一郎の代表復帰の条件にはなっていない。小沢一郎は自由に動ける。

小沢一郎が大連立協議を断念したように言うのは虚偽であり、小沢信者による世論操作のプロパガンダである。小沢一郎は自民党との間で閣僚配分(10対6)まで合意していたのであり、その線で党を纏めて大連立を組むつもりだった。小沢一郎は大連立構想を撤回していないし、今度の過誤について総括も反省もしていない。民主党役員会も小沢一郎の行動に対して何の責任追及もしていない。国民に対する裏切りという重大な背信行為に対して責任をとっていない。だからこそ、憤慨する国民を代弁する地方新聞の全紙が、小沢一郎の責任を厳しく追及しているのである。

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by thessalonike4 | 2007-11-14 23:30 | 大連立協議と小沢辞任
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