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by thessalonike4
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パキスタン親米政権の動揺と米国の途方 - テロとの戦いの黄昏
b0087409_15541263.jpg先週末、福田首相を迎えたワシントンは、きっと日本の問題どころではなかったはずで、ホワイトハウスの首脳たちの関心事はパキスタン情勢一色だったはずだ。おそらく米国のメディアも最近のトップニュースはパキスタン問題だろう。風雲急を告げるパキスタン情勢の行方は、新テロ特措法とも密接な関係がある重大な問題のはずだが、日本国内ではメディアがあまり高い関心を寄せようとしない。米国はネグロポンテを3日間現地に張り付かせた。本当なら、NHKは道傳愛子を現地に張り付かせて、刻一刻の情勢の変化を「7時のニュース」で詳しく報道するべきだし、昔の「ニュースステーション」であれば、駐在員からの現地報告を毎晩必ず放送していただろう。ムシャラフやブットへのインタビューは、今この瞬間に必要なニュースコンテンツであり、それが撮れれば、世界中の放送局から映像提供のオーダーが殺到するに違いない。



b0087409_15542388.jpg政治的利害が薄い日本のメディアは、一般に情勢が緊迫した国の要人が出演するのに都合がよい。また、日本のメディアは相手の立場を配慮してクリティカルな質問を控えてくれる傾向があり、話す側は自分の主張を支障なく存分に展開することができる。いま道傳愛子か長野智子がイスラマバードに飛べば、きっと86年にマニラで安藤優子がピープルズ革命を取材した時のような、ビッグなジャーナリズムをアチーブできるだろう。臆せず行け。佐々木かをりのカムバックでもいい。モザンビークの事故から15年、社長業も飽きただろう。もう一度ジャーナリズムの最前線に戻ったらどうか。今日(11/18)の朝日新聞では、ビル・エモットの評論記事が掲載されていて、米国が東部のアフガニスタン国境地帯に地上兵力を投入する可能性を指摘していた。この一帯はタリバン勢力の拠点で、何年も前からビンラディンの潜伏暗躍が噂されている地域である。

b0087409_15543414.jpgパキスタン政府の意向に関係なく、米地上軍が直接に国境地帯で作戦を展開して、米国が言うところの「テロリスト」を一掃すると言う。アフガニスタンでの地上戦の範囲延長であり、昔のニクソン政権がベトナム戦争末期に展開したカンボジア侵攻作戦を想起させる。パキスタンのアフガン国境地帯は、まさにベトナム戦争におけるホーチミン・ルートそのものの性格を持っていて、タリバン勢力が国内に出撃する基地となっている。ここを早く潰せというのが米国の世論であり、次期大統領選の最有力候補であるヒラリー・クリントンも、イラクから米軍を撤退させる代案としてパキスタンの国境地帯に集中して軍事攻撃する方が効果的であると主張していた。イラク戦争は誤りだったという認識は米国民の間で確実に多数になっているが、9・11テロへの恐怖心は依然として根強く、憂いの元を軍事的に消滅させないと枕を高くして眠れないというのは、リパブリカンもデモクラットも同じようである。

b0087409_15554091.jpg要するに、アフガンの戦局が米国にとって有利に展開していないのだ。時間をかければかけるほど、カルザイ政権は不安定になるのである。一方、パキスタン情勢は混沌としているが、ムシャラフとブットの間で権力分担交渉を調停しようと図った米国の思惑が、権力にしがみつくムシャラフの強硬路線に突っぱねられて失敗し、ブットの側も、もはやムシャラフとの協調はあり得ない選択に出てきている。普通に考えれば、非常事態宣言の解除を要請している米国の意図は、すでにムシャラフを見限ってブットを後釜の親米政権に据えるということだが、ブットの方はこれまで対立関係にあったイスラム政党とも手を組んで、独裁政権打倒の「統一国民政権」を呼びかけるに至っている。この情勢の収拾の最終判断を下すのはおそらくライス長官で、外から見ていると、ライスとムシャラフとの間で微妙な駆け引きが続いているように見える。最高裁長官解任、非常事態宣言、有力民放の放送停止。情勢は煮詰まっている。

b0087409_16441368.jpgここまで来れば、その次は武力衝突と流血。武力衝突を避けるのなら、ムシャラフか、ブットか、どちらかが消えなくてはならない。パキスタンの政治体制は大きく変わる予感がする。アフガン戦争からイラク戦争までの6年間、イスラエルによる度々のパレスチナ攻撃やレバノン侵攻の間、世界中で最も過激で大規模な反米デモが起きていたのはパキスタンだった。イスラム圏全体の中で最も民衆の対米憎悪が強かったのがパキスタンであり、私の印象からすれば、よくここまで親米国家として長持ちできたとさえ感じられる。パキスタンの政治を激動させている最大の力はイスラム民衆の反米感情であり、シャリフ帰国・再追放の混乱も、ブット帰国とその後の混乱も、親米政権を維持するための民衆への妥協とその失敗の現象形態であるに過ぎない。ムシャラフを廃して新政権が立ったとき、彼らが果たして領域内での米地上軍の作戦敢行を容認するだろうか。「テロとの戦い」は、来年にかけて大きく様相を一変させるだろう。戦争の継続は不可能になる。

米国は「不安定な弧」全域からの撤退を真面目に考える年になるに違いない。

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【編集後記】

たしかモザンビークの災難では、左足にゲリラ軍の銃撃を受けて重傷だったと思うが、その直前までの現地レポートの勇姿は素晴らしかった。政府軍側のトラックに立ち乗って戦場の町を行進取材する映像も見たような気がする。迫真の戦場ジャーナリスト。日本の女であそこまでやった人はいない。あれからすぐにイーウーマンの起業と成功という話になるけれど、彼我のイメージのギャップは小さくないね。それでもまだ48歳。戻って来ないかな。渡辺みなみも。お菓子ばっかり作ってないで。
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by thessalonike4 | 2007-11-19 23:30 | 田中宇と世界金融経済
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