信用収縮は原油バブルをクラッシュさせる - 住宅・石油・中国
b0087409_15332943.jpg住宅ローンの債権を証券化して債券(金融商品)にして売る。サブプライムローンのクラッシュの問題については、ここが理解の入り口で、われわれはそこで逡巡して立ち止まる。住宅資金について銀行からの借入と返済だけの単純な循環でしか思いつかないわれわれは、その債権と債務がさらに別の金融商品に化けて市場で流通する図を容易には想像できない。が、例えばその債券を買う立場になったと考えてみて、金融会社から値上がりと高利回りを宣伝されれば、昔のNTT株のように飛びつく心理になるのだろう。住宅ローン債権を組み込んだ金融商品が売れるためには、住宅ローンの契約がどんどん増え、そこに資金が大量流入するという前提が必要なはずで、すなわち住宅購入の需要が押し上がり、さらに住宅価格が高騰して、購入者が転売しても債務を返済できるという条件があったから、その金融商品が売買できたのに違いない。



b0087409_15334220.jpg日本のバブル時代の株と土地と同じようなものに米国の住宅がなっていて、誰もが競ってローンを組んで住宅を購入し、その住宅を転売して、新しいローンを組んで高い住宅に買い換えることを続けていたということになる。それはマイホームであると同時に値上がりが期待できる魅力的な資産商品であったわけだ。住宅価格が上昇して担保価値が上がっていたから金融会社から借入れができて買い換えができた。が、高金利でローンを組んだ低所得者が返済できなくなり、焦げ付きが出始めて一気にサブプライムローン債権が不良債権になった。いわゆる米国の住宅バブルとバブル崩壊。米国の住宅バブルについては、もう五年くらい前から指摘されていたような気がする。そしてこの間ずっと、サミットやG8蔵相会議のニュースがある度に、「住宅需要を中心として個人消費が旺盛な米国経済は依然として堅調」の決まり文句が報道されてきた。

b0087409_15354897.jpg五年ほど前に見たNHK特集の番組で、米国の投資家か誰かが出てきて、「いま世界には三つのバブルがある。チャイナバブルとハウジングバブルとオイルバブルの三つだ」と言っていたのを覚えている。ITバブルが崩壊してヘッジファンドのLCTMが破綻して間もない時期だったと思うが、まだまだ銭儲けの機会はあるのだと悪びれた様子もなく語っていた。三つのバブルのうち一つが崩壊した。私はオイルバブルも崩壊するだろうと予想している。時期はいつかは分からない。田中宇の記事を読むと、先物取引で1バレル250ドルの価格もついていると書いている。異常だ。米国の住宅価格は00年から06年の間に2倍に高騰した。原油価格は4倍になっている。原油価格の高騰の理由は、ファンドの投機資金が流れ込んでいるせいで、実需を反映したものではない。バブルがはじければ確実に下がる。住宅バブルがはじけてマネーが石油に流れたために価格が上がっている部分は確かにある。

b0087409_1534674.jpgが、信用収縮は住宅バブルの崩壊で収まるものではなく、ファンドが経営を維持するためには、どこかで損益を確定させなければならない。住宅関連で膨大な不良債権を抱えれば、それを引き当てする資金を準備しなければならないはずであり、どこかで原油への投機を続行できなくなるはずだ。ファンドが原油投機で売り抜けを図ったときが石油バブル崩壊の始まりとなる。そのとき、きっと現在のサブプライムローン債権のような原油債権取引のメカニズムが一般のニュースになるのだろう。住宅と同じで価格が上がるから買う。上がり続けるから買う。が、もう上がらないと思ったら、下がる前に誰かが売り始める。今は、誰もが石油はバブルだと知りながらも、価格が上がる理由を投機以外のもので説明する。中国などの新興国の需要が旺盛で需給が逼迫しているからだとか、産油国が高値安定を求めて増産しないからだとか、そういう理由づけをする。だが、それは背景であって本質的な理由ではない。

b0087409_15341736.jpg田中宇の「国際ニュース解説」にもあったが、サブプライムの破綻で米国の大手ファンドが損失を計上している。メリルリンチが79億ドル(約9200億円)、シティグループが65億ドル(7100億円)。モルガンスタンレーが51億ドル(5600億円)。ただし、損失計上はこれにとどまらず、シティグループの場合は、第四四半期に新たに80-110億ドルを計上する見通しだと報道されている。ゴールドマンサックスはまだ損失を計上していない。そのゴールドマンサックスだが、1年前に社員に支給した冬のボーナスの平均額が62万ドル(6800万円)という記事を見つけた。入社1年に満たない新入社員でも10万ドル(1100万円)支給されている。社員は全世界に2万6千人で、日本にも何百人かは社員がいる。一回のボーナスで6800万円。去年、少しは話題になったのかも知れないが、あらためて数字を見て驚く。これがまさに新自由主義の現実。昨年NHKのテレビで見た『ワーキングプア』の第2回目の放送を思い出す。

b0087409_15342955.jpgあのときの女性は、たしか年が40歳ほどで、かけ持ちで昼と夜の二つ仕事を持っていて、小学生の子供がいる母子家庭で、収入がどれほどだったか忘れたが、睡眠4時間で、昼休みに事務所で30分間仮眠をとって働いていた。子供が高校を卒業するまで、何とか毎日睡眠4時間で頑張りぬくしかないと言っていた。二日前(11/19)の「クローズアップ現代」でやっていたコンビニ店の従業員は、会社が人件費削減のためにわざと管理職にしていて、残業代を出さずに基本給だけで働かせ、だから給料はアルバイト時代の半額になりながら、仕事は一ヶ月の残業が169時間になっていた。朝の7時半から翌朝の7時半まで寝ずに24時間働いて、家で2時間寝て、またコンビニ店に出て来て働いていた。そういう「名ばかりの管理職」の労働実態が、コンビニや外食や紳士服量販店で一般化して広がっている。それでも辞められなかったのは、彼が就職氷河期の世代で、これまでずっとアルバイトや非正規社員を続けてきたからだった。

三十代半ばでやっと掴んだ正社員の社会的立場だったからだった。

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【ブログ政界面】

そういう日本の労働者の現実を知ってか知らずか、偉大な野党第一党の党首様は、昨日(11/20)もテレビカメラの前に出て、「今でも大連立は正しい選択だった」とあらためて明言した。大阪市長選に民主党の候補者が勝って、それを見たファナティックな小沢信者のブロガーたちが、「国民は小沢代表への支持を変えなかった」などと言ってくれるものだから、嬉しくなって信者の歓呼に応えようとしたのだろう。

「民主党が政権に加わることにより、自民党政権では絶対にできないことが実現できるとしたら、国民は喜ぶ。支援がより集まると、今もわたし自身はそう思っている」と言っている。国民は大連立を喜ぶのだそうだ。小沢一郎は老害だ。中曽根康弘ではなく、小沢一郎こそ実に老害で、思考が正常でなくなっている。周囲の忠告や諫言に耳を傾けられなくなっている。ワンマン企業の高齢経営者がこのようになる。

民主党の中でもようやく小沢一郎の開き直りに対して批判の声が上がり始め、副代表の岡田克也が、「小沢氏が『大連立は間違っていなかった』と言うなら食い違いがある。党の方針にかかわるのできちんと議論しないといけない」と正論を吐いた。私は、おそらく、岡田克也から真っ先に声が上がると思っていた。予想どおり。同じ日に、やんわりだが、鳩山由紀夫も小沢一郎の開き直りに対して牽制の一言を発している。

岡田克也の小沢批判は19日で、これは小沢一郎が16日の朝日新聞紙上で開き直りの発言をした行動に対してのものである。で、それに対して、小沢一郎がすかさず反撃の開き直りのだめ押し記者会見をした。これが20日。小沢一郎がテレビの前で大連立の開き直りを言ったのは、岡田克也の批判に対してのものである。小沢一郎は代表留任に際して大連立の撤回を認めておらず、岡田克也の批判は心外なのだ。喧嘩を売っているのである。

老害としか言いようがない。代表を替えようという声は、党内で潜伏しながら高まっていくだろう。
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by thessalonike4 | 2007-11-21 23:30 | 田中宇と世界金融経済
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