FRBのジレンマと基軸通貨崩壊 - 預言者田中宇のドル黙示録
b0087409_1518365.jpg東京では木枯らしが吹いて、街はすっかり冬色の表情になった。朝の陽射しが真横から顔にあたって眩しい。新聞やテレビに予算関連のニュースが増え、人の意識や関心もマクロなパースペクティブのものへと変わりつつある。昨日のNHKのテレビを見ていると、「7時のニュース」でサブプライム問題と原油高の報道があり、「クローズアップ現代」では外資系ファンドが日本の不良債権を二束三文で買い漁って濡れ手に粟の大儲けをしている実情が映し出されていた。ゴールドマンサックス社が経営破綻した全国のゴルフ場を買い集め、現在の日本のゴルフ場の経営王になっている事実も報道された。なるほど、これで社員の冬のボーナス6700万円が出るのかと頷かされる番組だった。日本の働く貧困層の生きる希望と夢を摘み取り、その無数の嘆きと涙の雫が絞り集められ、一万円札の巨大な塊となってハゲタカの胃袋にのみこまれてゆく。 



b0087409_15181852.jpgサブプライムショックは日本の銀行の業績にも大きな影響を与えたようで、みずほFGの前田晃伸が「市場がクラッシュし、(証券化商品は)何が適正価格か分からない状況だ」と狼狽するコメントを出している。この男は、例のシステム障害のトラブルのときに利用客に大迷惑をかけ、横柄な喋り口調で最後まで責任をとらずに開き直った一件で、国民に不愉快な印象を残している。常識的な感性の欠如が瞭然で、少年期の家庭教育の不具合が顕著なこの男が、どうしてメガバンクのトップなのかと疑ったが、あれから5年経っても未だに図々しく社長を続けている。サブプライムでみずほFGは今年9月の中間期決算で700億円の損失、来年3月には1700億円の損失が出ると言う。大手8行で損失は今年中間期が1400億円、来年3月期が3400億円の予想。だが、みずほFG単独で米住宅ローン関連債券事業への投資残高が8000億円ある。

b0087409_15184374.jpg来年3月期で1700億円損失計上しても、みずほの損失計上処理はそれで打ち止めにはならないだろう。OECD本部は11/21の発表で、サブプライム関連の金融機関の損失が3000億ドル(約32兆5000億円)であると見通しを出した。この数字は、OECDが前回出したエスティメーション(最大2000億ドル損失)を50%上回っていると言う。損失見積りは徐々に膨らむ。日本の不良債権がバブル崩壊後に時間を追って膨らんで行ったように、発表数値は次第次第に大きくなる。ちなみに田中宇の記事では、サブプライム以外の全ての債券商品を含めた金融界全体の損失総額について1兆ドルの数字が上がっていた。だが、田中宇の損失見積の中にも、原油バブルの投機マネーが不良債権化する予測数字は入っていない。含まれているのは、①サブプライム、②プライム、③クレジットカード、④M&A、⑤その他デリバティブ、の5事業の不良債権である。

b0087409_15185273.jpg田中宇の記事を読むと、注目すべき世界金融経済のイシューがいくつもあり、一個一個の問題について目配りし、ある程度の知識をつけて概要を把握する必要を痛感させられる。それは知識不足への焦燥であると同時に、知識を持った後に到達できるであろう世界理解の境地への期待や衝動の感覚でもある。そのキーイシューの一つが通貨の問題で、田中宇が予言するドルの世界基軸通貨の地位の失墜崩落という問題である。これから、サブプライム破綻と原油高の問題と絡んで、ドル安の問題が世界の大きなニュースとして論じられることになるだろう。ドル安は止まらない。サブプライムの信用不安だけでこれだけ下がるのだから、原油バブルが破裂したら一体どこまで下落するのか。注目すべきはFRBの金利政策で、米国の金利策定は本当に難しいジレンマの中にあるように思われる。基調は下げで、サブプライムで起きた信用収縮に対応するため供給量を増やさなければならない。

b0087409_1519140.jpgだが、金利を下げるとドルの価値が下がりドル安になる。これまでドル高が維持されていたから、世界のマネーが(特にゼロ金利を嫌う日本の資金が)米国の金融産業に流れ込んでいた。米国債がドルで買われ、米資ファンドが発行する金融商品が買われてきた。日本の製造業が輸出で稼いだ金は、国内の円に戻して寝かせれば何の価値も生まない。あるいは国内ファンドの低利金融商品に変えても大きな利益にならない。ドルで回す。それがこれまでの当然であり常道であったが、ドル安になると世界のマネーが米国に流れる動きにブレーキがかかる。例えば、産油諸国に膨大に溜まるオイルマネーを、産油国はドルではなくユーロで運用するようになる。FRBは金利をさらに下げざるを得ないが、ドル金利を下げすぎて危険なのは、インフレ懸念があるからである。原油価格の高騰は、それを燃料や原料として使うあらゆる農産物と工業製品の原価を押し上げる。ガソリン価格を上げ、輸送費と交通費を押し上げる。

b0087409_1519117.jpgインフレに対処するためには金利は上げる方向に調節しなければならない。こうして、金利を上げなければならない理由と下げなければならない理由の二つが同時に並存し、対策をジレンマさせる二律背反の難題が深刻な危機として進行している。問題を一挙に解決する奇跡の妙策はない。住宅バブル崩壊による信用収縮と金融不安、個人消費の減速による実体経済への悪影響、原油バブル崩壊の悪夢と原油高続行によるインフレ懸念、イラク戦争出費による財政赤字の膨張とドル不安、ドル安による貿易赤字の急拡大。米国経済の舵取りに楽観的な材料は何もない。敢えて言えば、今までが異常だったのだ。米国が世界のカネを集めて気侭に回す新自由主義のマジックが出鱈目だったのだ。田中宇によれば、湾岸諸国が共通通貨を作り、原油価格を新しい湾岸共通通貨で表示するようになると言う。これは革命的な出来事であり、革命的な出来事と言うより、まさに革命そのものである。世界の現実の変化はそこまで来ている。

そんな日がこんなに早く来るとは思わなかった。けれども、何となれば、石油輸出国の世界第4位はアフマディネジャドのイラン、世界第7位はチャベスのベネズエラ。私の貧困な想像力をはるかに超えて、世界が大きく激動している。この湾岸共通通貨の動きと原油バブルのクラッシュがどのように連動するのかしないのか、十分な知識のない私にはよくわからない。が、おそらく、そうなれば、原油価格を決める取引市場は、NY(MEX)からドバイへ変わるだろう。世界は多極化し、NYはローマのような都市になるだろう。

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【ドラマ】

長谷川京子主演のNHKドラマ『海峡』がとてもいい。
やはりと言うか、調べてみたら、演出が『大地の子』の岡崎栄だった。

長谷川京子もいいけれど、相手役の真島秀和がとてもいいね。
紅白でさだまさしがこれを歌うのかな。
かささぎは韓国の国鳥。
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by thessalonike4 | 2007-11-22 23:30 | 田中宇と世界金融経済
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