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by thessalonike4
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守屋武昌への強制捜査と政局分析 - 右手に解散、左手に連立
b0087409_1251062.jpg昨日の記事のコラムに 「気配から察すると、たぶん今週、守屋武昌の逮捕と防衛省と山田洋行への強制捜査がある」 と書いたが、今朝の朝日新聞の1面に、早速、「守屋前次官、強制捜査へ、週内にも収賄容疑で」の見出しが躍った。われながら冴えている。(自慢話で恐縮だが) まだ嗅覚は衰えていない。先週末の報道を見ていると、週明けに検察が強制捜査に動く気配が濃厚に漂っていた。特にNHKの7時のニュース。NHKの7時のニュースというのは他のニュース番組とは違う。民放のようにだらだらと(視聴率以外は何も考えずに)ニュースを流しているわけではない。国民に対する国からの告知とか予告とか啓蒙とか教育の意味と機能を持っている。悪く言えば意図的で操作的。日本国の行政や司法が次に何をやるかを示している。彼らはNHKの7時のニュースにフォーカスしていて、大事な情報は周到にタイミングを測ってそこで必ず出す。



b0087409_1243146.jpg例えば、来年度予算で省庁が新たに予算(調査費)を計上する新規事業については、夏から秋にかけて必ずNHKの7時のニュースで関連報道をやり、「今後xxxxの対策の必要があります」とキャスターに言わせる。地震対策だとか、温暖化対策だとか、交通安全対策だとか、見ているとすぐにわかる。省庁付属の研究機関や省庁と結託している大学の研究室が出てきて、専門家が官僚のかわりに代弁している。「予算(調査費)を付けさせて下さいね」と国民に向かって言っているわけだ。この類のニュースの制作と放送については、省庁からNHKに連絡が入り、そこに必ず自民党の政調部会の意向が入っているはずで、「国民生活にとって必要で有用な情報だから」という理由づけが内部でなされているはずである。この限りでNHKは明らかに政府広報なのだが、電通広報や自民党広報や右翼宣伝の局に較べれば、政府広報の方がまだ情報に信頼性があると言える。

b0087409_1244033.jpgさて、朝日新聞の1面に大きな見出しが出た以上、強制捜査は明日(11/28)か明後日(11/29)のいずれかだろう。守屋武昌は身柄を拘束される。だから、野党が求めている額賀福志郎と守屋武昌の国会証人喚問は実現が困難になる。と言うことは、額賀福志郎と久間章生への捜査は守屋武昌とは切り離される動きになり、早くても年明けに延びてしまうことを意味する。これは大方の雑誌が予想したとおりの動きで、検察は相当にスローなペースで動いている。状況の把握が難しいが、ひとつ観測するとすれば、国会で揉めている新テロ特措法の決着を検察が待っているという見方もできる。つまり、防衛庁疑獄の捜査を政局に絡めたくないという「司法の独立」の意向があるのかも知れない。無論、これは検察に過剰に甘く見た場合の話で、本当のところはわからないし、守屋武昌だけで幕引きする可能性も十分にある。本来、逮捕するべきは迅速に逮捕すべきであり、恣意的な裁量は不当で不愉快だ。

b0087409_1244999.jpgが、12月に額賀福志郎と久間章生の逮捕となると、新テロ特措法は確実に廃案になる。だから、官邸と検察の間で暗黙の前提のようなものがあり、法案審議に影響を与える捜査は控えるという方針が出ているのかも知れない。福田首相の側は、逆にその「検察の方針」を梃子に、新テロ特措法の審議を延ばせるだけ延ばして、国会会期を再延長し、額賀福志郎と久間章生の身を守る時間稼ぎをしているのかも知れない。二人が逮捕されれば、その時点で新テロ特措法は廃案となってドラマは終わる。衆院での再議決はない。「再議決に慎重な公明党の立場を考慮して」という理由を立てて再議決断念の政治を作る。二人の逮捕が1月に伸びれば、福田首相は12月の一ヶ月間を自由に使える。再議決の構えを強硬に押し出し、解散風を何度も吹かせて、「立法府の機能不全」を岸井成格と古館伊知郎にプロパガンダさせ、一ヶ月の猶予を得るのである。その間に民主党との連立協議を一歩でも前へ進めるのだ。狙いは連立協議。

b0087409_12114553.jpg新テロ特措法も解散のブラフも駒であり、福田首相にとっては連立協議体制の手段である。検察が額賀福志郎と久間章生への捜査を来春まで待ってくれれば、連立協議の政治のための環境(すなわち新テロ特措法の再議決と問責決議の緊張)は保たれる。あとは自民党広報と電通広報の世論工作の奮闘如何。だが、小沢一郎も指摘しているとおり、この福田首相が必死で演出する作為的な緊張は腰折れの様相を見せている。大阪市長選で完敗したこともあるし、豪州の選挙でハワード政権が転覆したこともある。今、解散に打って出ても確実な勝算が立たない。少なくとも現有議席数305を超える大勝は不可能である。だから解散に踏み出せない。その足元が次第に透けて見え始め、国会運営にも、予算編成にも、強気の姿勢が見えなくなっている。消費税の来年度増税は諦め、地方交付金の手当を言い、選挙になったときに格差是正を国民に訴えるアリバイ作りのような予算編成を弄くっている。「暮らしに安心」の可視化を弱々しく策している。

b0087409_1242047.jpg福田首相の政権運営が行き詰まっているのは事実だ。行き詰まっているのは事実だし、それを福田首相は隠していない。だが、これこそが福田首相の戦略なのである。そこが小沢一郎より一枚上手なところだと私は見る。芝居をしている。行き詰まって弱々しく行き倒れそうになる。その姿を敵である小沢一郎に見せる。誘っているのである。連立協議(大連立)に小沢一郎の方から動いて来るのを待っているのだ。殿様で帝王の小沢一郎は、「それならオレが助けてやろうか」と心を擽られるのである。福田首相は解散は考えていない。ゴールは連立のみである。小沢一郎は両手に二つ持っている。右手に解散、左手に連立。どちらでもいい。小沢一郎にとって、福田首相を追い詰めている現在の状況は、連立を組むときの条件を引き上げているという具合に見えている。小沢一郎の脳内ではそうなっている。つまり取引の価格を引き上げているわけだ。小沢信者には解散しか見えてないが、本人は連立カードを捨てていない。それは小沢一郎自身が明言した。

b0087409_1215495.jpg民主党幹部が了承する形での連立ならよいのだ。例えば、総理大臣を鳩山由紀夫、外務大臣を菅直人、財務大臣を岡田克也、防衛大臣を前原誠司、に割り振る連立政権案ならどうだろう。これでも民主党役員会は大連立を拒絶するだろうか。例の騒動のときは、二度目の党首会談に臨む小沢一郎に対して、菅直人と鳩山由紀夫が、「向こうが大連立を持ちかけてきたら、頭(首相)を取ってくればいい」と言ったと言われている。「頭をやる」と言われたらどうするのだろう。子育て支援ものむ、農家最低所得ものむ、年金制度改革も言うとおりにする、と言われたらどうするのだろう。ただし財源がないから再来年の消費税増税で頼むと言われたら民主党は断れるだろうか。経団連からすれば、現在の新自由主義の法制と政策の基本を変えない政権なら、自民党であろうが民主党であろうがどちらでもよいのだ。非正規雇用を増やし、正規雇用を減らし、賃金を低く抑え、法人税率を低い水準のまま維持し、社会保障は国民が自己負担する社会が続けば問題はないのだ。

新自由主義の目的を実現遂行するネコなら、黒いネコでも白いネコでもどちらでもいい。経団連は新自由主義の制度と政策が目的である。小沢一郎は政権奪取と闇将軍が目的である。両者の利害は簡単に一致する。

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【補 遺】

「豪州のように日本でも政権交代を実現させよう」と絶叫している者たちはよく考えて欲しいのだが、豪州には日本の経団連のようなものはない。英国にもないし、米国にもない。日本にはある。経団連は自民党の経済本部のような存在だが、逆から見れば、自民党は経団連の政治本部のような存在と言える。両者は不可分一体の車の両輪のような存在だ。

が、経団連にとっては、仮に自民党が下野して政治本部の機能を失っても、民主党がスペアになればそれで何も問題ない。経団連(財界)にとっては、民主党は自民党のスペア政党であり、選挙で政権交代が起きてもコンパチブルな政党が常に政権を握っているように、自分たちの政治本部に機能障害が起きないように、そのために二大政党制にしたのである。

中選挙区制を廃して小選挙区制にしたのはそのためだ。民主党を応援して政権交代を唱えている者たちの素朴な心情は別にして、経団連から見た日本の二大政党制や民主党というのは、そういう存在であり、そういう期待であり定義であることはほぼ間違いない。だから、日本の二大政党制は豪州の二大政党制とは異なるし、日本の民主党は豪州の労働党とは異なる。

豪州の保守連合(自由党)と労働党の二大政党制は、英国のシステムとパーツをコピーしたものと考えてよいだろう。英国の保守党と労働党は17世紀のトーリー党とホイッグ党からの歴史があり、最初からそれぞれの階層基盤と政治思想がある。日本の民主党は11年前に結成された党であり、大雑把に言って、半分が自民党系、半分が社会党系の議員で構成されて出発した。

日本の民主党の場合、そもそもの政治理念や階層利害の基盤の上に組織が組まれたのではなく、90年代初めからの「政治改革」によって二大政党制と小選挙区制の制度ができて、その制度に合わせて、制度が機能するように、制度機能を目的として、そのためにいわば人工的に作られた政党という経緯と性格がある。少なくとも英国の労働党や米国の民主党とは生い立ちが異なる。

そういう民主党や二大政党制の歴史と性格、そして経団連という存在、その他諸々の政治の背景と要素を総合的に検討した上で、「自民党政治を終わらせる」とはどういうことなのか、それはどうすればできるのかを考える必要がある。自民党政権が終わっても、経団連政治は存続してますます栄えるかも知れない。であるとすれば、それは何も変わっていないことに等しい。ここは日本だ。

われわれの対象と課題は日本の政治であり、われわれの関心はわれわれ日本人の生活である。

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by thessalonike4 | 2007-11-27 23:30 | 防衛省疑獄事件
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