朝日新聞の11/30(金)朝刊に「山田洋行、防衛族団体に1億円か」と見出しが打たれた
一面記事が出て、特捜の次の標的が日米平和・文化交流協会と秋山直紀に措定されたことが明らかにされた。ようやく大手マスコミで秋山直紀の疑惑報道が解禁。同じ日の午前、特捜は山田洋行本社や関係先を
捜索。この映像は夜の7時のニュースで放送され、防衛疑獄をめぐる捜査の次の焦点が、苅田港の毒ガス弾処理事業をめぐる不正と裏金問題であることが一般に告知された。映像を注意して見ていたが、この日の捜査の先頭に立って検事団小隊を率いていたのは女検事だった。小沢一郎の大連立騒動で時間を無駄にし、新テロ特措法の国会攻防や額賀福志郎の証人喚問問題で混乱が続き、政局のために捜査は大幅に遅れてしまった。特捜の現場は日程の遅れを取り戻すべく先を急いでいる感がある。来年の組織の人事異動の季節までにやれるところまでやらないと、人事が変わると捜査は中断に追い込まれる。
苅田港の毒ガス弾処理事業というのは、福岡県の苅田港の海底で2000年に見つかった毒ガス弾を処理する
国の事業で、当時の防衛庁が1期(04年)と2期(05年)を所管、3期(06年)と4期(07年)は国交省が引き継いで現在も事業を継続している。この事業に関して、山田洋行から秋山直紀の日米平和・文化交流協会に対して約1億円のカネが「事業協力費」として流れた。そういう疑惑である。新聞記事を読んだだけでは、防衛装備品の商社である山田洋行が毒ガス弾処理の事業とどういう関係があるのか、またその疑惑に日米平和・文化交流協会がどう絡むのか、若干分かりにくいところがある。実は、この件に関して民主党の平岡秀夫が11/28の衆院内閣府委員会で質問をしていて、その内容をHPで細かく
報告している。平岡秀夫らしく、多忙な中でこういう文書をサッと仕上げる。この記事を参考に併せ読むと、先週末から報道が始まった「苅田港毒ガス弾処理事業」関連の不正疑惑の問題が手に取るようによく分かる。
この苅田港の毒ガス弾処理にあたって、なぜか防衛庁は03年に「苅田港等老朽化化学兵器に関する調査等委託」という調査業務を公募して競争入札を行っている。この調査業務委託を落札したのが日米平和・文化交流協会なのである。平岡秀夫も記事の中で書いているが、こんな調査をわざわざ外部に委託する必要はなく、防衛庁の内部には化学兵器処理の専門家が大勢いて、中国での毒ガス弾処理活動などにも対応していた。平岡秀夫は防衛庁が外部委託した理由を見事に暴露しているが、それは、この処理事業全体を秋山直紀の日米平和・文化交流協会に仕切らせるためであり、秋山直紀がこの公共事業(金額で約217億円)を神戸製鋼に受注させるためだったのである。毒ガス弾の処理方式には「加熱爆破式」と「制御爆破式」の二つの方式がある。中国の遺棄化学兵器処理では「加熱爆破式」が採られている。が、「制御爆破式」の処理技術は国内では神戸製鋼だけが持つ専門技術で、したがって防衛庁が苅田港の毒ガス弾処理を「制御爆破式」でやると決めれば、自動的に神戸製鋼が単独で事業を受注できることになったのである。
防衛庁が調査委託を外注したのは、日米平和・文化交流協会(秋山直紀)に調査報告書で「制御爆破式」を提案させるためだった。つまり、最初から防衛庁と秋山直紀と神戸製鋼がグルで、三者で結託して総額217億円の利権事業をぶんどったのである。無論、そこには当然、政治家が入っているだろう。秋山直紀と相談して、事業を神戸製鋼に与えた政治家がいる。その政治家は間違いなく神戸製鋼から巨額のカネを貰っているはずだ。朝日新聞の記事には、「鉄鋼大手メーカー」としか書いてなくて、神戸製鋼という具体名はない。が、中国新聞はすでに神戸製鋼所の名前を
記事で出している。これから捜査の手は確実に神戸製鋼に伸びるだろう。神戸製鋼所の本社が家宅捜索を受けるのは時間の問題だ。さて、最初に戻って、この苅田港毒ガス処理事業で山田洋行がどういう位置関係にあり、なぜ秋山直紀の日米平和・文化交流協会に1億円の裏金を払ったかだが、朝日の記事にもあるとおり、山田洋行は、事業を受注した神戸製鋼の下請けになって、毒ガス弾を海底から引き揚げる米国人の潜水士を手配する代理店になっている。単なる潜水士の手配屋。
そんな潜水士ぐらい国内で簡単に調達できるだろうにと思うが、山田洋行は神戸製鋼の下請けになって潜水士を米国から手配し、金額は分からないがあぶく銭を儲けている。そのあぶく銭の一部が1億円の裏金として秋山直紀の手に渡っているのである。217億円の総事業費のうち山田洋行の取り分(潜水士手配請負費)は僅かのはずだが、それでも1億円の裏金をバックリベートとして秋山直紀に納めている。とすれば、神戸製鋼は一体どれほどバックリベートを秋山直紀と政治家に払っているのだろう。その実態がこれから明らかになる。防衛疑惑の捜査の第二幕は、神戸製鋼が受注した苅田港毒ガス弾処理をめぐる汚職であり、秋山直紀をめぐる利権とカネの流れが関心の中心になる。山田洋行は背後に退き、日米平和・文化交流協会が主役に躍り出る。ここまで名前が出た以上、秋山直紀の逮捕は時間の問題だ。が、そのとき、秋山直紀は何の容疑で逮捕されるのだろう。贈賄だろうか収賄だろうか。秋山直紀は公益社団法人の常勤理事の身分である。公務員ではない。
そうすると、幸子逮捕のケースと同じく、守屋武昌を主犯として「身分なき共犯」を適用するのだろうか。朝日新聞の12/1(土)の
報道では、すでに特捜部は苅田港の毒ガス弾処理事業の疑惑について、防衛省の関係担当者から事情聴取を済ませている。すなわち立件は確実で、秋山直紀の逮捕も確実だが、フィクサーの容疑の方はどうするのだろう。そこが注目だ。ロッキード事件の児玉誉士夫のときは脱税と外為法違反で起訴されている。今週、おそらく、秋山直紀の逮捕に先立って、神戸製鋼関係者からの事情聴取が報道されるだろう。秋山直紀が逮捕されるとき、同時に神戸製鋼所本社が特捜検事団の強制捜査を受ける。神戸製鋼から政治家に流れた不透明なカネの情報も出る。そのときは政治家の名前も一緒に出る。日米平和・文化交流協会に無関係な政治家ということはあり得ない。苅田港毒ガス弾処理関係で国会の安全保障委員会で質問した議員とか、自民党政調の国防部会でこの時期にこの件で立ち回った議員とか、その辺りを調べれば名前は出るだろう。政治家逮捕が近い。
さて、その平岡秀夫の絶妙のタイミングの国会質問だが、私の直感だけれども、これは外務省が平岡秀夫に質問させたものではないだろうか。少なくとも両者が水面下で連携しての質問ではないか。質問の中にも出てくるが、日米平和・文化交流協会傘下の安全保障研究所に専従職員がいないにもかかわらず、防衛庁が安全保障研究所に調査委託を受注させている問題がある。安全保障研究所が実体のない団体であり、国の事業を受注できる資格がないことを立ち入り調査で明らかにしたのは外務省だった。外務省は
省所管の財団法人である日米平和・文化交流協会に05年に立ち入り調査をして、安全保障研究所に対しても「実態が不明瞭」として改善命令を出している。時期を考えると、まさにこれは、外務省の所管団体でありながら、外務省の意向や方針を無視して、防衛庁と結託して、防衛政策(日米再編)を勝手に引き摺り回し、守屋武昌と利権を貪っている秋山直紀に対して、外務省が堪忍袋の緒が切れて一撃を加えたということだろう。それが裏だ。今度の防衛疑獄の背後には、外務省による防衛省への復讐、日米外交政策の奪還という契機がある。
そうすると、この中国新聞の記事は、平岡秀夫が自らリークしたものではあるまいか。山田洋行の次は三菱重工に飛ぶかと思ったが、火の粉は神戸製鋼の方へ飛んだ。