
山口二郎は、週刊東洋経済(
12/22)に寄せた最新の記事の中で、「民主党が政権交代を起こしたいなら、本当の政権担当能力を示さなければならない」と言っている。これは朝日新聞が頻繁に言い、朝日新聞以上に読売新聞や日経新聞が軽口を叩いて民主党を貶下するときに言い続けている常套句だが、私にはこの言葉に大きな抵抗感がある。山口二郎や朝日新聞が言う「政権担当能力」とは何なのだ。消費税増税を公約に掲げることが政権担当能力を示すことになるのか。この「政権担当能力」の言葉の意味だが、私にはそれが、現行の官僚行政に対するトランスペアレンシと自民党政治に対するコンパチビリティの意味にしか聞こえない。現行官僚行政にトランスペアレントな政策、自民党政治とコンパチブルな政策、それを民主党が掲げたときに、朝日新聞や読売新聞や日経新聞は民主党に対して「政権担当能力を示した」と評価する。

われわれ国民は、野党の政策に現行官僚行政への透過性や自民党政治との互換性などは期待していない。それは全く逆だ。官僚と自民党の権力に対して、非透過的で非互換な政策と政治を求めているのである。嘗て菅直人やウォルフレンが批判したところの「政官業の癒着構造」という言葉があったが、それが表象するシステムとストラクチャに対して、敵対的で拒絶的で破壊的な政権と政策こそを、われわれ国民は望んでいるのである。読売新聞や日経新聞が民主党の政策に対して現行官僚行政への透過性と自民党政治との互換性を求めるのは、彼ら新聞社が「政官業の癒着構造」の一部であり、利権と利害を共有する支配者側の言論機関だからである。「政権担当能力」という言葉を使って、野党の政策からラディカルな性格を抜き、与党と同じ政策に変質させることが狙いであり、野党の与党化を促進させるための世論操作の言説装置なのだ。

山口二郎の
今回の議論も含めて、朝日新聞などが民主党に「政権担当能力」を注文するときは、それは官僚へのメッセージであり、官僚に向かって、民主党の政策を自民党と同じにしますから民主党をどうかよろしくお願いしますと頭を下げているのだ。左派的なラディカルな政策は捨てさせますからご安心下さいと、官僚機構と自民党支持層に対して揉み手で媚を売っているのである。十年前の民主党を思い出すが、諫早湾干拓を糾弾し、「政官業の鉄のトライアングル体制」の打倒を唱えていた頃の菅直人は、国の予算が省庁縦割りで長年硬直して編成されている実態を衝き、政治主導で予算編成を根本から組み変えなければならないと訴えていた。われわれ国民もその菅直人の主張に同感した。あれから十年経ち、橋本龍太郎の行政改革で内閣府はできたが、各省縦割りの硬直予算は何も変わっていない。国民が期待した政治主導の予算編成変革は果たされなかった。

各省が省益を守るため予算を分捕り、分捕った予算で官僚が自分のための適当な役所仕事を作り、その事業をやらせる特殊法人を作って天下りをする。予算は官僚のために使われ、その利権にたかる企業と政治家を養い超え太らせている。「政官業の癒着構造」は何も変わってないのに、それを批判していた菅直人の民主党がトーンダウンした。一方で口では「国民の生活」を言いながら、予算や財政の政策の中身では自民党のガバナンスとのコンパチビリティのみが追求されている。官僚に対して政策のトランスペアレンシがアピールされ、現行システムの保障が説得されている。今回の消費税増税の政策方針はまさにその姿勢を象徴している。十年前も赤字国債の発行はやめて財政再建しなくてはいけないという声は強かった。だが、自民党政権は、東京湾横断道路を作り、第二東名の工事を続け、関西空港と中部国際空港と神戸空港と静岡空港を作り、九州新幹線と北陸新幹線の工事を続けた。

構造改革の小泉政権は、「小さな政府」と言いながら、橋本政権当時以上に大型公共工事を予算化して赤字国債を増発し、財政赤字を深刻化させたが、新聞はそれを全く批判しなかった。2000年以降は、聖域化した防衛費が嘗ての公共事業以上に膨張して財政赤字に拍車をかけた。新自由主義の政府と言うのは、本当は「小さな政府」でも何でもない。財政赤字を増やして、国民の負担を重くし、社会保障を削るところに政策の目的がある。社会保障制度を破壊することこそが新自由主義者の目的であり、財政再建や財源難は単なる口実なのだ。本当に財政再建する気なら、ミサイル防衛や米軍再編の予算から削らなくてはならない。無駄な支出を削り、特別会計を棚卸しし、天下り特殊法人を整理し、予算の硬直編成をリセットすれば、そこでどれだけの財源が捻出できるのか、それを社会保障と地方交付税に手当できるのか。その試算をやらなくてはいけない。われわれが民主党に求める真の政権担当能力とはそういう能力だ。

特別会計の棚卸しと整理は、今夏の参院選で新党日本の田中康夫が提起していた。そして、自民党の方が動き始めて、例の霞ヶ関の埋蔵金と言われる財政融資特会や外国為替特会が出てきた。新聞や官僚は、いかにもこれを一時的で偶然的な財源のように言うが、情報は捏造されている可能性が高く、各省全体でどれほど巨大な裏帳簿が隠匿されているか分からない。国の予算は一般会計と特別会計の二重会計になっていて、特別会計は二重帳簿の状態になっている。官僚と政権の中枢しか財務の実態を知らない。その一般会計でさえ硬直編成で、この硬直を破れば、例えば自衛隊の装備調達費を半減するだけで、そこで毎年1兆円のカネが捻出できる。やらなければならないのは、①硬直編成の見直し、②特別会計の棚卸し、③天下りの禁止と特殊法人の整理、であり、①や③は十年前から言われながら官僚の抵抗で着手して来なかった政策だった。小泉・竹中は官僚の抵抗勢力と戦うポーズを見せたが、それは虚偽であり演出だった。

本当に①-③をやれば、支出の大幅な削減が実現されるはずだ。「財政赤字」や「財政再建」の中身や観念は、現在とはずいぶん違ったものになるだろう。少なくとも、消費税を来年上げなければ社会保障制度が崩壊するなどという官僚の脅迫に惑わされなくてもすむような財政認識が得られるに違いない。やらなければならないのはそういうことで、自民党政権に反対して政権交代を呼びかける政治学者が言わなければならないのはそういうことだ。自民党政権に反対する政治学者が、官僚の言うままを頭から信じて、官僚の言う「赤字財政」と「財政再建」を鵜呑みにして、「社会保障財源確保のための消費税増税」を言ってどうするのか。民主党の指南役であるはずの山口二郎の財政論と税制論が、ここまで官僚権力の政策言説とトランスペアレントであることに驚き呆れる。②の特別会計の剰余金について、山口二郎は財務官僚の言うままを信じて一時的で偶然的なものと見ているが、私はそうは見ない。構造的で定常的なものだ。歳入として予算化できるものだ。
菅直人も「政官業の癒着構造」への対決姿勢を失ったが、山口二郎は朝日新聞と結託したのか消費税増税を(この時期に)擁護している。私から見れば、山口二郎も朝日新聞も「政官業の癒着構造」の一部だ。この山口二郎の12/17の記事は、藤井裕久の12/25の「税制改革大綱」とタイミングを合わせている。民主党支持者に消費税増税の覚悟を迫る政治だ。
【夕刊ブログ政界芸能面】
姫井由美子の自伝本「姫の告白」を本屋で立ち読み。
大学時代のことで何か情報がないか気になって探したが、何も書いてなかった。
初キスをした話と、クルマ好きの彼に影響された話だけ。
二部に入ったのも、最初から司法書士受験が目的で、ほとんど専門学校同然の感じ。
優秀な人なのに、大学で学問をした形跡は記されていない。
少し残念。
彼女の高校は進学校で、当時、県下で四本の指(A・S・D・H)に入っていた。
で、今日のオチだが、山口二郎と姫井由美子は同じ出身高校。
どうやら同級生だね。
【年を越せない貧困者たちのための電話相談のニュース】
昨日のNHKの7時のニュースの中に湯浅誠が出ていた。この男は買いだね。本村洋(31歳)に続く「世に倦む日日」期待の星の第2弾。明日の日本を背負って立つ男。経歴を見ると、1969年東京生まれ、東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学とある。何だ、政治学の研究者じゃないか。専門は何だろう。この38歳は買いだ。ルックスも、どことなく若い頃の丸山真男に似た雰囲気がある。インテリジェントな風貌がいい。気に入った。2千株買わせてもらう。
