東京に雪が降るのは、例年なら2月の終りから3月の初めにかけての頃である。この時期、西高東低の冬型の気圧配置が緩み、大陸から移動性の低気圧が日本列島に近づいて、その低気圧が太平洋側を西から東へ進む。そのときに東京に雪が降る。昭和11年2月26日の二・二六事件、万延元年3月3日の桜田門外の変、歴史上の政変を劇的に演出した首都の降雪は、この大陸からの移動性低気圧によって齎されたものだった。昨日の東京の雪も全く同じ気象によるものだが、例年よりも一か月も早い。東京の雪は春の訪れの前触れなのである。本当なら、今頃は天気図の列島の上に縦の線がびっしり並んで、厳しい西高東低の気圧配置の中にいなければならないはずだ。冬の季節がなくなった。西高東低の気圧配置の天気図を見なくなった。半井小絵は、気にならないのか何も言わない。倉嶋厚だったら、一言くらいは解説で触れたかも知れない。地球温暖化が影響を及ぼしている異常気象なのである。
「
陰謀」の言葉を辞書で引くと、「ひそかに計画するよくないくわだて」とある。陰謀論への警戒心があまりに過剰になり、それが思惟の潔癖症や言葉狩りの不安にまで及ぶと、権力の疑惑への関心の自主規制を招き、想像力の弾力性を奪いかねない自粛心理の弊害に陥る。そう思って、
一昨日の記事には敢えて「陰謀」の二文字を入れてみた。政治の裏側には「密かによくない企て」が行われている場合が多い。表向きは「よくない企て」など絶無のような素振りを見せながら、政治家たちは裏で策謀を練り、謀略の計画に沿って着々と行動しているのである。特に、新自由主義者の周囲には謀略の影が濃い。われわれは経験でそのことを知っている。口では国民に向かってきれいな言葉を言いながら、裏では米国資本の指示に従って動いている。山本一太が、ブログ『直滑降』で二日間に四回にわたってNHK批判の記事を書いている。内容は瑣末だが、四度に分けて上げているところに妙な執拗さが見え、ある種の示威の意思が看取できる。
あの軽薄な印象からは俄かに像が結ばないが、山本一太は自民党参院政審副会長の要職にあり、政権与党の政策に関与する幹部の一人である。与党幹部がブログでNHKの理事全員の引責辞任を要求し、一昨日(1/22)の自民党電気通信調査会でも「NHKの執行部は総退陣せよ」と
気炎を上げている。理事全員の辞任要求の口火を切ったのは自分だと、山本一太自身が得意気に記事に書いている。注意して見ると、1/22の前日の夜9:30に、あの「プロジェクト日本復活」の定例会が開かれていて、それに出席した件も記述がある。「プロジェクト日本復活」は新自由主義者の議員の結社であり、彼らの最大の天敵はNHKの報道である。普通に考えれば、この会合でNHKを叩き潰す「よくない企て」が謀議されたのではないかという推測に及ぶ。そう考えるのが自然だろう。あるいは、敢えて作戦経緯を公開して、NHKに無言の圧力をかけているとも考えられるし、また、この作戦を公開して、それに対する反撃側の出方を偵察するという戦術も考えられる。
山本一太はよくテレビに出演する。テレビで自民党と改革派(新自由主義)を宣伝する議員の筆頭格と言えるほど露出度が高い。小泉純一郎と安倍晋三の応援隊長をやって出世した。山本一太がこれほど頻繁にテレビ出演するのは、山本一太を出させるように仕向けている勢力(権力)があるからだと考えるのが当然だろう。その勢力とは、これも普通に考えれば、あの広告代理店以外に考えられない。そして、われわれがそこで常に立ち戻るのは、二年半前の郵政解散であり、郵政民営化選挙の際に目撃した諸々の出来事である。あのとき、ネットの中で、森田実が真実を語っていた。「
『不偏不党』を放棄した日本のマスコミ」と題された記事は、小泉純一郎が衆議院を解散した同じ8月8日に書かれたものである。 内容は、言わば典型的な陰謀論だが、この政治分析がネットを徘徊するわれわれに説得力を持って打ち響いた事実を否定することはできない。日本のテレビ報道は米国に乗っ取られている。それをエージェントとしてオペレーションしているアドミニが電通である。
森田実の陰謀論は、その「真実」の直截的な暴露だったが、誰もが「きっとそうに違いない」と(物的証拠の確認なしに)頷いたし、またこの二年半、その直観が「浮薄な陰謀論の類」として風化することはなく、説得力が弱まることは決してなく、逆に確信のレベルへと疑惑の濃度は高まっている。竹中平蔵は出たいときにテレビに出れる。それは電通がバックにいるからで、民放経営幹部と竹中平蔵が政治的に一体だからである。竹中平蔵にも国民は騙された。竹中平蔵と山本一太が持っている同じ能力は、きっと人を巧く騙す能力だろう。騙されている感じがしないのだ。裏の意図を見抜きにくいのだ。ユーザインタフェースが上質なのである。人を騙すセンスとスキルがある。仮に、この森田実の構図が全て真実であったとして、今回、ハゲタカと竹中平蔵は何のために「改革」の軌道再定置に動くのか。一部に、もう米国でバブル崩壊が始まったのだから、米資が日本で悪あがきをしても意味がないという声もある。だが、それは違う。米国で巨額損失を出すからこそ、それを資本補填する現金が欲しいのであり、それを日本から奪い取りたいのだ。
政権の路線を再び「改革」に戻すことで、日本から奪い取れるだけのものを一気に奪取するのである。テレビ朝日は、毎日毎日、報道ステーションのトップニュースで株の報道を特集的に続けている。株価の下落は年金の財源にも影響するから他人事ではないとまで言い、株報道を意味づけし、視聴者の関心を喚起させている。専門家のゲストをスタジオに呼んではいるが、ゲストの解説よりも二倍も三倍も古舘伊知郎の演説の方が長い。解説者はまるで聞き役の飾り人形のようだ。古舘伊知郎が延々とまくしたて、「改革が具体的に必要だ」、「政府は何も対策していない」、「外国人投資家に改革の姿勢を見せないといけない」と咆え続けている。一方、対照的だったが、東証が752円大幅下落した1/22のTBSのNEWS23では、株のニュースは冒頭に3分ほどサラリと流しただけだった。しつこくあれこれ時間を割いて報道していない。このことを見ても、テレビ朝日の異常な一連の株報道が、政府の政策を改革路線に戻すための世論工作であり、それを裏で指図しているのが米資のエージェントの電通ではないかという憶測が働く。改革によって格差の弊害が出たなどという反省的な前提認識は露ほどもない。
本日(1/24)のニュースでは、早速、改革派議員の山本有二が、政府系ファンド設立の関連法案を議員立法で出す
動きが伝えられている。判明しているだけで50兆円規模の霞ヶ関埋蔵金を、この政府系ファンドで運用して財政再建に貢献すると言う。山本有二の言い方が面白くて、「運用を官僚ではなく、運用のプロに任せて効率を上げれば、年金給付の拡充なども可能になる」などと言っている。「運用のプロ」、つまりハゲタカに埋蔵金を渡すのである。ハゲタカの方から「埋蔵金を差し出せ」という注文が来たのだ。「お前ら、オレに内緒でヘソクリを隠していたな」と怒り心頭なのだろう。この政府系ファンド設立の話は、ブログの
前の記事でも紹介したが、新春早々の1/5に竹中平蔵が読売テレビの番組で打ち上げたものである。即刻、新自由主義議員の山本有二が動いた。山本有二の提言によれば、さらに「緊急対策では、株式の譲渡益や配当にかかる税金をゼロにする時限措置のほか、法人税減税なども求める方針」だと言う。恐るべき強欲。ここまで強請るのは日経団連ではない。ハゲタカだ。株が下落して大損をしたから、日本政府に穴埋めの現金を差し出せと言っているのである。ロバート・フェルドマンのひきつった顔が浮かぶ。
ほとんど出来レースのような「ガソリン税国会」に国民の目を引きつけさせておいて、政治の舞台では改革派(新自由主義者)の巻き返しが着々と進んでいる。①改革新党の勢力結集、②NHK潰しの謀略工作、③テレビ朝日と朝日新聞の改革キャンペーン、④景気対策を口実にしたハゲタカへの埋蔵金譲渡。この中で私が最も気になるのは②のNHK潰しの動きで、これだけは何としてもネットで反撃して阻止しなければならない。④の政府系ファンドは財務省が抵抗の構えを見せていて、どうやら衆院選前に決定することはない。埋蔵金がハゲタカにエサで与えられるのは早くて一年後だ。恐らく、その前にハゲタカは空腹で瀕死になって、東京市場から出て行くことになるだろう。NYSEが下がれば下がるほど、モーゲージの損失が膨らめば膨らむほど、ハゲタカは日本株を売らなくてはいけない。補填原資を東京で調達して企業会計のバランスを埋めないといけない。もはや東京は売るだけであって買いを入れる場ではないのだ。日本株なんか持っていても短期で上がる見込みは絶対にないのだから。特別会計の50兆円をハゲタカに渡すわけには行かない。これは社会保障の財源にする。だから、新自由主義と福祉国家の対決は、まさにカネの奪い合いなのだ。
さて、元の「陰謀問題」に戻るが、仮に森田実が指摘した構図が事実だとして、どうして朝日新聞はこれほど電通と結託して改革路線(=新自由主義路線)を邁進するのか。なぜ異常な改革キャンペーンに狂奔しているのか。どう考えても異常な朝日新聞の新自由主義路線シフトについては、やはり推論によって仮説を立てて合理的な理由を考えなくてはいけない。それはどうしても「陰謀」への疑惑の眼差しとなる。私の推理は、朝日と電通の癒着の理由は、
ANYとネット広告に絡むのではないかというもので、将来のネット報道とネット広告の利権、さらに具体的に言えば、朝日、読売、日経の三社と電通の関係のあり方に関わるのではないかと想像している。朝日と読売と日経の三社が共同でネットで報道事業を始める。紙媒体での営業収入が落ち込み、今後はネットでの報道業者として新しい事業に活路を見出し、そこでメジャーとなってネット報道を支配するプレイヤーにならないといけない。そしてそれは巨額の広告利益が見込める分野であり、当然、電通がそこに身を入れて割り込んで来る。誰が主導権を握るのか、そこがきっと問題で、朝日は他の二社との対抗上、電通と密着せざるを得ないのか、あるいは密着した方がメリットがあると踏んでいるのではないか。
前に紹介した若宮啓文と筑紫哲也の対談記事の中に、そのヒントを感じる件(くだり)があった。若宮啓文が筑紫哲也に向かって、「今、朝日は部数を減らしているが、機会があれば翼を右に広げて他紙の読者もこちらに取りたい」という意味のことを語っていた。ANYをその戦略でフォーカスしているのではないか。