本と映画と政治の批評
by thessalonike4
カテゴリ
チベット暴動と北京五輪
ガソリン国会と後期高齢者医療
新自由主義と福祉国家
ワーキングプアと社会保障
山口県光市母子殺害事件
福田政権・2008年総選挙
米国大統領選挙
田中宇と世界金融経済
イージス艦衝突事故
イスラエルのガザ侵攻
岩国市長選挙
防衛省疑獄事件
大連立協議と小沢辞任
民主党 ・ 2007年参院選
安倍政権
憲法 ・ 皇室
戦争 ・ 昭和天皇 ・ 靖国問題
韓国 ・ 北朝鮮 ・ 拉致
共謀罪 ・ 教育基本法改正
村上世彰インサイダー事件
オー・マイ・カッシーニ
ネット市民社会
丸山真男
辺見庸
奈良紀行
その他

access countベキコ
since 2004.9.1


















国民への謝罪と反省のない舩渡健の会見 - 石破茂辞任の政局
b0087409_1417301.jpgたとえば東京に住む者が、難波から南海に乗って和歌山へ行ったり、近鉄に乗って生駒の方に行くということは稀である。その裏庭的な、和泉や河内の地域の一帯を、私は「ディープ大阪」と呼ぶけれど、逆に、関西に住む人とか、関東以外の地方の人が千葉や房総を訪れることは滅多にないだろう。それはバスか電車で成田へ向かうとき、あるいは成田から帰ってくるときの旅の車窓の経験でしかないはずだ。関西や地方の人が実際に千葉県に足を踏み入れるのは、一生に一度あるかないかではあるまいか。そこはまさに「ディープ東京」。表から隠れた裏庭の地であり、よそから来た人に積極的にお見せする場所ではなく、その実相は、リムジンバスから目に入る東関東自動車道の両側の景色からも容易に察することができるだろう。東京湾の近くを走っているのに海は見えず、殺風景な灰色の倉庫群と工場群が立ち並び、無機質で殺伐としたコンクリートの景観が延々と続く。



b0087409_14174118.jpg人の気配がせず、資本だけが乱暴に土地を使っている。コストの論理だけが支配する視界に苦痛な空間。幕張を過ぎて船橋を通り過ぎる辺りは、感性が外の風景を嫌がって、早く東京に辿り着きたい気分に苛まれる。だが、蘇我から右に折れて市原から木更津に向かう地帯は、実はもっと悲惨なのだ。あの辺りの国道を通ると、東京では感じない油と化学物質の臭気に顔面を包まれ、大気中に含まれる産廃の塵埃の濃度を実感し、身体が本能的に有毒性と危険性を訴えて、車を運転する大脳に「早くここから退避しろ」と命令を出す。埼玉もそうだが、千葉は東京の犠牲になっている土地だ。房総半島は産廃とゴルフ場の土地なのである。そのずっと奥に、東京に住む者にとっての房総がある。観光地として日頃お世話になっている自然豊かな房総がある。房総は、伊豆や三浦半島と同じで、それは関西の人間にとっての南紀白浜や淡路島である。家族でドライブに行き、職場で一泊旅行する手頃な観光地。

b0087409_14175066.jpg木更津を過ぎ、上総から安房に入ると、景観が一変して自然豊かな山国になる。千葉は大県で、下総・上総・安房の三国を一県に擁する。一県三国の大県は他に静岡と兵庫と島根があるだけだ。備中を広島と分割する岡山、肥前を佐賀と分割する長崎は一県三国とは呼べぬ。古代、武蔵国の東境は人跡未踏の湿地帯で、京(みやこ)から総(ふさ)の国(房総半島)への交通は三浦半島からの船便で往来するのがメインルートだった。だから半島の端の方が京に近い上総となり、京から遠い北側が下総となる。古事記でも、東(あずま)に遠征したヤマトタケルは、走水から船に乗って東京湾を横断する。首都圏の人間に観光地を提供している房総だが、実は、今の季節がちょうど房総を観光するシーズンなのである。テレビ東京がお出かけ番組で房総を紹介するのは、決まって2月の中旬で、東京に住む者にとって房総は、そこに咲く菜の花を見て、太平洋の潮の香りと明るい陽射しの中に身を置いて、一足早い春を感じ楽しむスポットなのである。

b0087409_14175951.jpg房総は、そうして首都圏に住む者に手近な春の憩いを与えている。関西や地方にお住まいの方も、一度、春の房総に足を運ばれるとよい。ブログのアクセス解析を見ていると、防衛省(mod.go.jp)や防衛大(nda.ac.jp)からのご訪問の急増に加えて、昨日は南房総市(minamiboso.chiba.jp)から多くのお客様があった。関西のように観光史跡は多くないが、来てみれば、心の美しい川津漁港の人々が生きている土地を確かめることができるだろう。その川津漁港へ、事故から8日経った昨日(2/27)、「あたご」の艦長の舩渡健が足を踏み入れて、遭難した漁師の家族に謝罪をした。その模様が昨夜のテレビのニュース番組で大きく報道された。被害者の家では、涙を流して見せ、神妙で沈痛な表情を見せていたが、その後の記者会見の様子は、ずいぶん違った口調と態度のもので、見ながら正直なところ驚かされた。失望させられた。ネットの新聞情報には、会見での舩渡艦長の一問一答が掲載されているが、テレビで見た映像では舩渡健は国民に謝罪していない。

b0087409_1418837.jpg反省をしているとも思えない。その証拠として、舩渡健は、事故原因を訊かれた質問に対して、「海上保安庁の捜査の中に入っているので」という理由で詳細な説明を拒否している。これはどういうことかと言うと、その後の裁判で起訴されたとき、起訴状の起訴事実に対して争う意思を明らかにしているということである。この事件がどういう裁判に発展するのか、私にはよく分からないが、現在、業務上危険往来の容疑で捜査されているこの事件が、親子二人の水死体が揚がった時点で業務上過失致死になるのは明らかと言える。舩渡健はその加害責任者であり、刑法に定められた罰は5年以下の懲役刑となっている。自分の側の非を全面的に認めるのであれば、この場で「海上保安庁の捜査」を理由に事故原因の説明を拒否する対応はあり得ないだろう。反省をしているのであれば、この時点で包み隔さず真実を説明して、国民からのいかなる糾弾も甘んじて受けなければならない。まして国民の生命を守る自衛官の幹部の立場であり、二人の生命を海に落とした加害責任者であれば、そうするのが当然だ。

b0087409_1418176.jpg昨日の舩渡健の態度は、(質問の中身はきわめて稚拙で粗雑だったが)国民の代弁者となって責任を追及する報道記者に対して、むしろ抗弁しようとする姿勢であり、彼の意識の中では、自衛隊を批判するマスコミは敵として捉えられ、自衛隊を積極的に擁護する弁明に努めようとする対応が窺われた。要するに、今度の「謝罪訪問」においては、念入りに海幕から本人に行動プログラムが示されていて、個人としてではなく、自衛隊の組織としての対応を舩渡健がカメラの前で演じているのである。家族の前では涙を流して許しを請う。しかし国民に向かっては非は認めず謝罪はしない。国民の前ではどれほど悪役を演じても、自衛隊の組織と右翼の世論が庇ってくれる。生活は保障される。そういう計算が頭の中にあり、海幕から言い含められているのだ。きっと裁判になったら、この艦長はイージス艦の正当性を堂々と主張するようになり、被害者家族や川津漁港の人たちを驚かすことだろう。自衛隊という閉鎖的な組織の論理で頭が固まりきっている。

b0087409_14182652.jpg社会の常識を持っていない。そのような人物に見えた。昨日の「報道ステーション」で、田岡俊次が、「海自が誇る最新鋭艦の初代艦長だから優秀な人間が抜擢されているはずだが」と言っていたが、とても優秀な頭脳や精神を持った人物には見えなかった。常に組織と上司の意向を恐れて気を遣い、組織の階級と権威だけを判断と行動の基準として、上の命令を下に垂直に下ろしているだけの、ボサッとした暗愚な中間管理官僚に見える。会見の映像を見ながら、この男が事故のときに艦長室で寝ていた理由も、船舶が輻輳する航路で部下に自動操舵させていた理由も、事故直後に救助活動に動かなかった理由も、8日間も自衛隊の組織の中に隠れて小さくなっていた理由も、すべてが顔に書いているようだった。この怯弱な男の立場になって考えれば、それなりに合理的な理由がわかる。ここまでの不祥事を起こした以上、自衛隊の組織に頼って生きて行かざるを得ないのだ。家族の今後を考えれば、海幕の指図に従って行動するしかないのだ。自衛隊に守ってもらうしか道がないのだ。

b0087409_14183688.jpg「報道ステーション」でこのニュースが流れた直後だったか、突然、生放送中のスタジオにメモが入り、「いま入ったニュースですが、自民党の幹部の発言で、石破防衛相の辞任は不可避だという指摘が出たようです」と河野明子がメモを読み上げる場面があった。この報道は今朝の東京新聞でも記事になっている。幹部が誰かは不明だが、通常、匿名で「自民党の幹部が」と言う場合は、報道では自民党の幹事長を指す。伊吹文明の発言か、そうでなければ、古賀誠か二階俊博の政局発言だろう。石破茂辞任へ党内の流れを作ろうとしているのである。それに抵抗する力の度合いを測る意味合いもある。昨日(2/27)の北側一雄の記者会見で、石破茂の責任問題が言及され、それがテレビのニュースになっていた。古賀誠と二階俊博が北側一雄と平仄を合わせている可能性は十分に考えられる。予算案の審議が次第にヤマ場を迎えつつあり、イージス艦問題を野党に人質のように取られるのは、与党の国対としては胃にできた潰瘍のような鬱陶しい存在だ。民主党の鳩山由紀夫が毎日のように揺さぶりをかけている。

b0087409_14184789.jpg民主党は、イージス艦問題を国会運営の武器として利用する腹で、民主党が主張している暫定税率撤廃の攻防の駆け引きの道具として、石破防衛相の問責決議案を使おうとしている。年度末の日程が迫る中で、イージス艦問題の追及を参議院でやられたら、与党としては税制案通過の目処は立たず、ズルズルと暫定税率と道路財源で譲歩を迫られる事態になる。与党の国対が焦るのも無理はない。民主党の本音は、イージス艦問題の徹底追及などではなく、石破問責の必殺兵器をチラチラと見せて与党を脅し上げながら、予算案成立の国会日程を窮屈にさせ、暫定税率で有利な決着を図ろうというものである。伊吹文明ら自民党幹部は、ここで民主党ペースで時間を潰されるのが最も具合が悪く、すなわち、石破茂を馘首するにせよ存命させるにせよ、国会でイージス艦問題の火の手が大きくなる前に、早く始末を着けなくてはならない。国会と世論からこの問題の関心を消さないといけない。イージス艦問題でまともに国会審議などをやり、週末の政治番組で討論などされたら、与党は大事な予算案(暫定税率)で決定的に不利な状況に立たされる。

石破茂が辞任してもしなくても、どちらに転んでも民主党の国会運営には有利に働く。私は国会での関係者の証人喚問を望み、この事故の原因究明と、事故直後のイージス艦内の行動の検証と、事故後の防衛省と自衛隊による情報隠蔽工作の事実解明を求めるが、民主党には鼻からその気はなく、証人喚問は実現されず、事件は曖昧なまま時間の彼方にかき消される可能性が高い。マスコミ報道だけでなくネットの中でさえ、この問題で声を上げ、証人喚問と集中審議を求めて訴えている者は皆無に等しい。とても残念だ。
b0087409_14185872.jpg

[PR]
by thessalonike4 | 2008-02-28 23:30 | イージス艦衝突事故
<< 隠蔽工作はなぜ破綻したのか -... 昔のIndexに戻る 隠蔽工作の真犯人は石破茂 - ... >>


世に倦む日日
Google検索ランキング


下記のキーワード検索で
ブログの記事が上位に 出ます

衛藤征士郎
八重洲書房
加藤智大
八王子通り魔事件
吉川洋
神野直彦
サーカシビリ
敗北を抱きしめて
苅田港毒ガス弾
道義的責任
可能性の芸術
青山繁晴
張景子
朱建栄
田中優子
小泉崇
アテネ民主政治
二段階革命論
影の銀行システム
特別な一日
ボナパルティズム
鎮護国家
三田村雅子
小熊英二
小尻記者
古館伊知郎
本村洋
安田好弘
足立修一
人権派弁護士
反貧困フェスタ2008
舩渡健
エバンジェリズム
ワーキングプアⅢ
新自由主義
国谷裕子
大田弘子
カーボンチャンス
秋山直紀
宮崎元伸
守屋武昌
浜四津代表代行
江田五月
馬渕澄夫
末松義規
平沢勝栄
宮内義彦
田勢康弘
佐古忠彦
田岡俊次
末延吉正
横田滋
横田早紀江
蓮池薫
金子勝
関岡英之
山口二郎
村田昭治
梅原猛
秦郁彦
水野祐
渓内譲
ジョン・ダワー
ハーバート・ノーマン
B層
安晋会
護憲派
創共協定
全野党共闘
二大政党制
大連立協議
民主党の憲法提言
小泉靖国参拝
敵基地攻撃論
六カ国協議
日米構造協議
国際司法裁判所
ユネスコ憲章
平和に対する罪
昭和天皇の戦争責任
広田弘毅
日中共同声明
中曽根書簡
国民の歴史
網野史学
女系天皇
呪術の園
執拗低音
政事の構造
政治思想史
日本政治思想史研究
ダニエル・デフォー
ケネー経済表
マルクス再生産表式
価値形態
ヴェラ・ザスーリッチ
故宮
李朝文化
阿修羅像
松林図屏風
菜の花忌
アフターダーク
イエリネク
グッバイ、レーニン
ブラザーフッド
岡崎栄
悲しみのアンジー
トルシエ
仰木彬
滝鼻卓雄
山口母子殺害事件
偽メール事件
民主主義の永久革命
ネット市民社会