<   2008年 03月 ( 19 )   > この月の画像一覧
奈良紀行 4 - 薬師寺   伽藍と仏像、加藤周一と和辻哲郎
b0087409_16272418.jpg小学館発行の『古寺をゆく』シリーズの第2巻が東大寺で、2002年に発行されたとき買い求めて本棚の隅に置いていた。きれいなカラー写真が多く載っていて、東大寺を目で楽しむことができる。その中に当時の別当の新藤晋海氏が寄せた文章があり、「個も全体の中でしか生かされない」ということを自覚することが大切だと説いている。「生きるということは、他の生きとし生けるものとの相関関係によって成り立っている」ということを自覚し、他者にも悟らせることが肝要だとメッセージしている。華厳の思想の本質が表現された言葉のように聞こえ、あらためて東大寺の「全体と個」への関心を思わされる。この20年、この言葉は重い意味をもって日本社会に発信され続けてきたと思うけれど、世界と日本での新自由主義の進行は、個をますます全体から切り離して、全体への関心や配慮を失うように方向づけ、利己主義こそが唯一絶対の普遍的真理だと確信させて個の行動を動機づけてきた。

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by thessalonike4 | 2008-03-16 23:30 | 奈良紀行
奈良紀行 3 - 修二会  
b0087409_164821100.jpg東大寺はバランスがいい。ユーザインタフェースが完璧にできている。旅する者にとっての東大寺の魅力は、あの広くてゆったりとした開放的な空間にある。そこはただ平面積が広いだけでなく、空間に高低差の変化があり、境内奥には二月堂舞台からの眺望と絶景がある。高い地点へ到達するのにもスロープが緩やかで、日本の寺社にありがちな長くて急勾配の階段の苦労や苦痛がない。上から奈良盆地を見下ろす眺望があると同時に、下から大きな大仏殿と大仏を見上げる景観の妙がある。世界最大の木造建築と大仏を拝む視界のサプライズと鑑賞の美がある。ビューの変化に富んでいる。広い寺社と言えば、金閣寺も銀閣寺も龍安寺も十分に広いが、景観の高低差の変化や視界の大きさの魅力は乏しい。また京都の寺社は周回路が一律に決められていて、自分で境内を自由に移動することができない。東大寺の場合は、自分で好きなコースを自由にデザインして楽しめる。境内の散策が線ではなく面で提供されている。

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by thessalonike4 | 2008-03-14 23:30 | 奈良紀行
奈良紀行 2 - 鎮護国家の仏教  
b0087409_15344826.jpg形(かたち)は京都にある。しかし、心(こころ)は奈良にある。形の美しさではなく、心を求めるのであれば、自分の心と向かい合わせる心を求めるのであれば、新幹線を降りた旅人は京都駅からそのまま出口に出るのではなく、近鉄線に乗り換えて奈良に向かう必要がある。宇治川と木津川を越えて南下しなくてはならない。往きも帰りも新幹線は満席で混雑していた。大量の観光客を東京から京都へ運んでいる。しかし、乗り換えた近鉄線は空席が多く、四両編成の特急電車の一両がほぼ空席だった。格差社会のいま、日本経済も格差経済として構造が固定して循環している。格差経済は二重経済であり、景気よく金を回す大企業や投資家や外国資本の経済と、金がなく切り詰めと資金繰りに追われる貧乏な中小企業と一般庶民の経済の二つに分かれる。新幹線と京都の混雑は「勝ち組」の富裕経済の消費を象徴しているようだ。 

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by thessalonike4 | 2008-03-13 23:30 | 奈良紀行
高僧 - あおによし奈良の都は咲く花の薫うがごとく今盛りなり
b0087409_16175962.jpg旅を終えて、この三日間を振り返りながら、奈良のことを考え浸っている。奈良は素敵なところで、どこまでも魅力に溢れていて、何度訪れても満ち足りた気分に私をさせてくれる。格差社会のいま、人がこの国の中で一つだけ旅する先を探すとすれば、奈良を選ぶのが最善の選択なのではないかと私には思われる。格差社会の中で、私たちは、茨の冠をかぶせられ、重い磔の十字架を背負わされて歩かされているイエスのようであり、ここまで酷く深く傷ついた心を癒せる旅の空間というのは、どう考えても奈良の他にはないはずだ。そこには歴史があり、古代の生き生きとした純粋な日本人の心があり、そのことを教えてくれる仏像(ほとけさま)がいる。京都の場合は、お寺に参り詣でる行為が、どうしても観光という表象に近くなり、その観光という言葉は、さらに消費という概念に接近してしまう。しかし奈良はそうはならないのだ。 

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by thessalonike4 | 2008-03-12 23:30 | 奈良紀行
イスラエルと靖国神社 - 国連憲章体制と平和憲法体制の鬼胎
b0087409_12382612.jpg 3/5(水)にもイスラエル軍の一時侵攻があり、ガザで死者が出ている。ロイター通信が撮影して報道したこの写真を見ていただきたいが、犠牲になったのは生後間もない女児で、頭を撃たれて殺されている。写真で、女児の銃撃された頭部を指さしているのはガザの病院関係者で、証言では、そのときイスラエル兵の銃撃を受けて8名の負傷者が運び込まれたと語っている。イスラエル兵がこの乳児の頭に至近距離から銃弾を発射したのは間違いない。2日前から外電の記事を追いかけているが、そういう写真が多い。流れ弾に当たったとか、銃弾で血まみれになってという殺され方ではなく、子供が頭部を狙われて一発で狙撃されている。イスラエル軍がガザの子供を狙って見せしめの処刑をしているのであり、写真が報道を通じてガザの住民に告知され、彼らの憤激と憎悪をかき立てるように、意図的に子供の処刑をやっているのだ。

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by thessalonike4 | 2008-03-06 23:30 | イスラエルのガザ侵攻
第五次中東戦争と国連の欺瞞 - ガザの犠牲者も自己責任か
b0087409_12432717.jpgパレスチナ情勢は今日は朝日新聞の記事からも消えた。当然と言うべきか、昨夜のニュース番組では何も報道されることはなかった。日本語の記事では現地の詳しい情報は何もわからない。3/3のイスラエル軍の撤退は、どうやらライスの訪問に合わせた一時的なもので、イスラエル国防相のバラクも地上作戦の継続を言っている。ハマス側もロケット弾攻撃を再開しているため、イスラエルは今度の侵攻作戦の目的としたロケット弾攻撃の終息を達成できていない。田中宇の記事では、イスラエル軍の作戦計画では、ガザに本格的に侵攻して南北に細長いガザを三分割して軍事占領する予定だったと書いている。次に戦闘を再開した場合は、南のハマスに対する軍事侵攻と北のヒズボラに対する軍事作戦の同時二正面作戦になると予想されている。 

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by thessalonike4 | 2008-03-05 23:30 | イスラエルのガザ侵攻
戦争か革命か、カタストロフとリセット - イスラエルのガザ侵攻
b0087409_1203626.jpg今から5年か6年ほど前、金子勝がテレビに出て、「今の財政赤字を問題解決するには戦争か革命しかない」と頻繁に言っていた。カタストロフ的な予言的意味を含むインパクトの強い発言であり、したがって今でも多くの人の記憶に残っている言葉だろう。私は当時、この発言を聞いて、経済学者の議論として思考停止的であり、マルクス経済学の思考の悪しき伝統が態度として継承されているように映り、2年半前にブログの記事でも批判を加えている。経済学者の議論というのは、どこまでも現実に内在して政策で解法を導き出すべきだというのが私の考え方で、あの時点でも、そして現在でも、800兆円の国の借金を解消する合理的な経済政策は経済学的に提案可能だと考えている。だが、そう考える一方で、金子勝の予言に対する私の感じ方は次第に変わってきて、時間の経過とともにその説得力を重く大きく受け止めている事実を否定することができない。

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by thessalonike4 | 2008-03-04 23:30 | イスラエルのガザ侵攻
宇多田ヒカルの革命と巫女的性表象 -「政治による救済」の前夜
b0087409_11182375.jpg今からふり返って、宇多田ヒカルの恐るべき偉業の一つは、日本語の意味を変えてしまったことで、具体的に言えば、「ファーストラブ」という言葉は、宇多田ヒカルの前と後で意味が完全に変わってしまった。我々の時代、その言葉の意味は「初恋」であった。宇多田ヒカルの曲の後、その言葉の意味は「初体験」に変わった。それは実にショッキングな出来事で、宇多田ヒカルを国民的な大スターに押し上げた完成度抜群のバラードを聞きながら、我々は何度もその「革命」のマニフェストに折伏されて、時代の転換を宣言する16歳の宇多田ヒカルの前に首をうなだれていたのである。それは、「初恋」と「初体験」の間に物理的な時間差が設定されなければならないと考える性倫理の常識を暴力的に破壊する革命思想のメッセージだった。「初恋」という日本語の概念が消えたのである。これからは「ファーストラブ」しかない。 

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by thessalonike4 | 2008-03-03 23:30 | その他
Passing through ten million milestone on weekend
b0087409_2136112.jpgさすがに累計のアクセス数が1千万を超えているBLOGというのは他にあまりない。カウンターでも8桁まで用意しているものは少なかった。3年半で1千万アクセス。今の時点では少なすぎて不満と憂鬱を感じる数字だが、ブログを始めた頃はこれほど多くのアクセスを獲得できるようになるとは思わなかった。本名を出すようになるとも思わなかった。政治の議論を中心にする考えもなかった。趣味的に小さく始めて小さく畳むつもりだった。2004年の9月に開設し、『アフターダーク』や『ダ・ヴィンチ・コード』の書評を書いて一人で楽しんでいた。『ハウルの動く城』の映画評を上げた後、読みたい本がなくなって更新が止まった。そのブログの性格と方針が変わったのは2005年の途中からで、最初の契機は中国の反日デモであり、そして郵政民営化と総選挙から大きく政治に踏み込んだ。方針を変えてよかったのかどうか、今さら思い直しても元へは戻れない。

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by thessalonike4 | 2008-03-01 23:30 | その他
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